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第10章 新婚旅行は海がいい

愛おしい人の"背中"が好き

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 「……………セオドア殿」



 「…………?はい?」 



 ジメジメと女々しく悩む俺に、クリスティド国王陛下は声をかけてくださった。俺はクリスティド国王陛下を見る。


 国王陛下は、テラスの手すりに両手を起きながら星を見つつ話す。



 「……………私が相応しいか相応しくないかはわからないが、アミィール嬢とそういう事にはならないさ。

 私は___彼女を娘のように思っているのだ」



 「……………娘?」 



 クリスティド国王陛下はそう言いながら目を細める。



 「君が生まれるもっと前に____私は、アルティア様をお慕いしていた。それはもう熱烈にな。君がアミィール嬢にするように、自分には相応しくない、けれども笑いかけてくれる、自問自答して、些細な事に浮かれてた」



 「……………ッ」




 クリスティド国王陛下の言葉には熱が籠っている。昔の事だ、と言っているがこの言葉は…………未だに愛していないと言えない言葉。やはり、クリスティド国王陛下はアミィール様と結ばれるべき___「でも、それと同時にラフェエルも好きだ」…………?


 セオドアは下を向くのをやめて、再びクリスティドを見た。美しい国王陛下は遠くを見るように話し続ける。



 「ラフェエルは死ぬ運命にあった。………あの性格だから、死を受け入れていて、何度も私は悩んだよ。それぐらいラフェエルを友として好いていた。

 その友を愛する人が見つめあっていて___その時、気づいたんだ。



 俺は、愛する人__アルティア様の背中が好きなんだ、と」



 「…………背中?」


 「そう。…………私に背を向け、ラフェエルを見つめているアルティア様が好きだったんだ。だから未だにお慕いしている。だって彼女は今もラフェエルと見つめあっているだろう?…………そして愛し合った結果、アミィール嬢が生まれた。


 死ぬしか道がなかった1番の友と神という地位を捨てても1番の友を愛そうとする想いを寄せる彼女が____運命に抗った結果なんだ。



 その証に____私は、邪な思いなど持てない」




 「_____ッ」



 そういった時のクリスティド国王陛下は……………月に照らされて、金髪がきらきらと光ってて………優しい笑顔が輝いていた。諦めとも吹っ切れたとも取れる顔。クリスティド国王陛下は『君が邪だと言う訳では無いよ』と優しく言ってから、笑みを称えて言った。



 「私が結婚しないのは、未だにアルティア様の背中をお慕いしているから。この気持ちでアミィール嬢はおろか、ほかの女性と関係を持つなど不誠実だろう?


 それに、…………私達仲間が運命と苦しい、苦い思いをして戦って得た"私達が世界を救った証"であるアミィール嬢には、誰よりも幸せになって欲しいと全員が思っている。


 だからね、君にはとても感謝しているんだ」



 「え…………?」




 話の内容がよく分かっていない俺を、やっとクリスティド国王陛下は見てくれた。青い瞳を細めて、優しく俺の頭を撫でる。



 「_____アミィール嬢は、私たちの希望で守るべき子供。その希望が君を見て本当に幸せそうに笑っているんだ。………自分の宿命に苦しんでいる彼女が、君の前でだけ解放されて、"普通の少女"になる。


 それは、君がアミィール嬢を心の底から愛していて、アミィール嬢も君を心の底から愛しているから。



 だから君には…………自信を持って欲しい。私たちの"幸せの証"を笑顔に出来るのは世界で君一人なんだ」











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