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第10章 新婚旅行は海がいい
隣国の国王キャラ
しおりを挟むセオドアは暗い廊下を静かに、人差し指に火魔法を灯して廊下を歩いていた。
俺とアミィール様がシースクウェア王城で居ることを許されたのは与えられた部屋と玉座の間、そして人気のないテラスだけだ。
本来ならそのテラスに行くにもアミィール様の転移魔法でなくてはならないのだが、あいにくアミィール様は寝ていらっしゃる。だから静かに歩くことしか出来ないのだ。
許されないことをしているのはわかっているけれど……………アミィール様と同じベッド、いや、同じ部屋に居たら俺の息子が暴れ出す。寝ているアミィール様に欲望をぶつけてしまう。それはだめだ。
「はあ…………………」
俺はどうしてこう性欲が強いんだ…………?18歳だぞ?まだ未成年なのに子供ができたらどうするんだ…………いや、貴族の成人は確かに16歳だけど…………18歳の未来ある次期皇帝のアミィール様を母親にしてしまうのは…………いや、そりゃあそうなったとしても間違いなく幸せだ。絶対アミィール様の美貌を、才能を引き継ぐだろう。歴代サクリファイス皇帝一族は紅銀の髪と紅い瞳を持って生まれる。
アミィール様は瞳こそ元龍神であらせられるアルティア皇妃様の黄金の瞳だけれど………………
とはいえ、龍神のことは未だに詳しくは知らないのだが。もう結婚して1年になると言うのに身内の事、妻の事を知らない俺って……………「………だよな………」………?
不意に、廊下の突き当たりから話し声が聞こえた。まずい、バレたら怒られてしまう。
そう思いセオドアは隠れる。案の定男が2人、暗い廊下を歩いていた。男達は会話をしている。
「クリスティド国王陛下はもう40歳であらせられるのに御子どころか王妃すらいないのはどういうことだ?」
「そうですね、けれど、クリスティド国王陛下は兄であらせられるティーダ様の御子・イレウス様を次の国王と推薦しておられます」
「仮にそうだとしても、一国の国王であらせられるクリスティド国王陛下の御子が継ぐべきだろう…………」
「………………」
なんというか、とりあえず廊下でする話ではないな、と思った。こんなの不敬過ぎるじゃないか。………でも、話の内容は少しだけ理解出来た。
クリスティド国王陛下は美しいだけではなく、優秀な御方だと聞いている。俺の義父でサクリファイス大帝国皇帝であらせられるラフェエル皇帝は人間不信だけれど、クリスティド国王陛下とは仲がいい。ラフェエル皇帝様が能力のない人間を好きになることはないのは周知の事実だ。
…………まあ、俺は凡人で能力はないけれど。でも一応"治癒血"を持つ人間だから温情を頂いている。
それはともかく、クリスティド国王陛下は国民からの支持も厚いと聞いているし、あのお人柄である。女などいくらでも寄ってくるだろう…………あ。
ふと、思い出す。
乙女ゲーム『理想郷の王冠』の"隣国国王"という肩書きの攻略対象キャラ、クリスティド・スフレ・アド・シースクウェアなのだ。
彼のストーリーはこうだ。ヒロインの母親に想いを寄せていて、結婚をせずに一途に愛し続けていた。だが、同時に父親とも親友であり苦しんでいた所に、母親に似たヒロインが慰め、向き合い___自分の王妃にすると宣言し、ハッピーエンドを迎えるのだ。
十中八九、『理想郷の王冠』のヒロインはアミィール様。…………そのアミィール様と俺が結婚したから____クリスティド国王陛下の物語、人生は滅茶苦茶になってしまったのだ。
…………………そう考えると、胸が痛くなる。
俺はクリスティドが好きだった。中々ヒロインを好きだと言わず、終盤までヒロインの母親を愛し続けていた一途な想いに心を奪われた。
でも、現実は。
俺は、アミィール様を誰にも渡したくなくて。
クリスティドが想いを寄せるヒロインの母親・アルティア皇妃様はラフェエル皇帝をなんだかんだ一途に愛していて。
……………報われなさすぎる。やっぱり、俺が結婚したのは間違「セオドア殿?」___!
突然、名前を呼ばれた。
振り返ると____クリスティド国王陛下が簡易な服装で立っていた。
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