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第10章 新婚旅行は海がいい
※この世界に水着はありません
しおりを挟むセオドアは目を輝かせた。
目の前には_____エメラルドグリーンの綺麗な海。水中が透けて見えるほどの綺麗な、とても綺麗な海に、自分の歳も忘れて心を踊らせる。
今世で初めて見た海はとても美しいもの。おまけにここはクリスティド国王陛下のご配慮で貸してくださったプライベートビーチなのだ。とても贅沢である。これを見るために皇配になった訳では無いけれど、それでも皇配でなければこのような素敵な場所には来れなかったと思うとやっぱり凄いことである。
それに、楽しみなことはまだある。
セオドアは自分の姿を見る。
上半身裸で、藍色のボクサー型パンツの水着。この世界でこのような物はない。新婚旅行をしたい、と言った後に同じ転生者であるアルティア皇妃様とフラン様が俺の為に作ってくれたのだ。この世界に水着という風習は無いし、泳ぐことを半ば諦めていたからこの気遣いが嬉しかった。
そして。
実はアミィール様の分の水着もあるのだ。それはまだ俺は見ていない。けれど、だからこそ楽しみというもの。見るのが楽しみ過ぎてすぐに着替えて先に海に来たのだ。そして綺麗な海を見ながら考える。
アミィール様はどのような水着を着ても似合うだろうな。スクール水着のようなものだろうか、ワンピース型も捨てがたい、しかしビキニ姿も見たい……………全部の形を着てくれればいいのに、どれかひとつしか見れないというのはこんなにももどかしくなるものなのだろうか……………
水着姿どころか身体の隅々までもう見ているというのにそんなことを思うセオドア。その背に『セオ様』と愛おしい御方の声がした。勿論、呼ばれたセオドアは嬉嬉として振り返る。
「_____ッ」
しかし、その楽しそうな顔はアミィールを見るなり赤く染まり驚いた顔になった。アミィール様の水着は____黒のスクール水着のような水着、なのだが、胸元から秘部の手前まで大胆に裂け目があり、それをシンプルな群青色のゴムが肌を邪魔しないように細く編み込まれ、腰元にはヒラヒラのワンピースの様なフリルがついている物だった。
「………………ッ」
乙女的観点からも男的観点からも可愛くて色っぽい水着に言葉を無くす。これはもうアルティア皇妃様とフラン様の前世の知識と俺への嬉しい気遣いをふんだんに詰め込んだもので。
そんな過激な水着を平然と着こなすアミィール様の堂々とした気持ちと着こなせるほどのスタイルの良さが際立っている。
「セオ様?どうなさいました?………やはり、わたくしにはこのような可愛い衣類は似合わないでしょうか……………それに、このように肌を沢山露出するのは女としてはしたないですか…………?」
「なっ、そんなことない!」
セオドアはアミィールの自信なさげな顔に、少し大きな声で否定して優しく抱き寄せる。本心だ。似合わないとかはしたないとか思うわけがない。
「あ、あまりに美しく水着を着こなすものだから…………言葉を失ってしまったんだ」
「!……ふふ、お世辞でも嬉しいです」
「お世辞なわけがない、事実だ」
アミィールは顔を赤らめながらも紡がれた愛おしい男の言葉に破顔する。セオドアはそれを見るとさらに強く抱き締めた。
……………よかった、ここがプライベートビーチで。アミィール様のこのようなお姿を他の男に見せたくない。俺だけしか見てはダメだ。レイを連れてこなくて心の底から良かったと思う。
「____セオ様の胸板が閨以外でも拝見出来るなんて、夢見たい。クリスティド国王陛下のプライベートビーチでよかったです。
誰にも見せたくないですもの」
そうとても嬉しそうに言うアミィール様に再び胸が熱くなった。同じ事を考えているんだ、俺達は。それだけなのにこんなにも嬉しくなるんだから俺は単純すぎる。
「私も同じ事を思ったよ。………このお姿は私の前以外ではして欲しくない。他の男に見せたくないな」
「わたくしはセオ様の前以外でこのような格好は致しませんわ。……………此処は今、わたくし達だけの世界です」
そう言って、アミィール様は俺に唇を重ねた。たった2人の世界で綺麗な海をバックに俺達は深くて甘いキスをした。
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