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第10章 新婚旅行は海がいい

新婚旅行へ出発!

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 「アミィ、セオドア。
  転移魔法を使うことを許可する。
 あと、アミィは必ずセオドアを守れ。
 龍化は絶対するな。
 海に行く以外はクリスティドの城に居るように。

 それから………………」



 「………………」



 「……………………」




 新婚旅行当日、俺達夫婦は並んでラフェエル皇帝様に注意事項を聞かされている。もう既に1時間は話している。つまりは1時間分の注意があるのだ。


 そう考えると………改めて俺達夫婦には制約が多いんだな、と実感する。


 アミィール様はサクリファイス大帝国の皇女にして半龍神。

 俺はサクリファイス大帝国の皇女の皇配にして治癒血の持ち主。



 …………でも、それだけでなく、ラフェエル皇帝様は根底が優しく、心配性だからというのもある。アミィール様はともかく俺にもそれを少なからず向けてくれるのは純粋に嬉しい。



 俺は嬉しさで頬を緩ませているのだが、アミィール様はげんなりとした顔をしている。



 「お父様、話が長いですわ。わたくし達は理不尽な皇帝様のせいで2日しか休みがありません。手短に済ませるという心構えはないのでしょうか」


 「あ、アミィール様…………」


 「………………2日もやったんだ、念入りな説明が必要だろう?そうだな、あと5時間ほど追加で話してやろう」


 「意地悪しないの!」


 悪い笑みを浮かべるラフェエル皇帝様の頭を叩いたのはアルティア皇妃様だ。皇帝様にこんなことをできるのはユートピアでこの人しかいないだろう。


 そんな強い皇妃様は俺とアミィール様の頭を撫でながら優しく言う。



 「短い時間だけど、楽しんできて。お土産待ってるからね!クリスティドにもよろしく言っといて!

 ほら、ラフェーがなんか言う前に行っちゃいな!」


 「はい。……………セオ様、失礼します」


 「わっ」


 アルティア皇妃様の言葉を受けて、アミィール様は自然と俺を姫抱きする。もうすっかり慣れてしまった俺は悲しくも反射的に細い首に手を巻き付ける。男のプライドはもうすっかり捨ててしまった。



 それでも顔は赤くなってしまうセオドアを愛おしげに見てから、アミィールは2人に笑いかけた。    



 「では、行ってまいります。


 _____転移魔法」





 アミィールとセオドアはその一言でその場から消えたのだった。 


 残ったアルティアは空を見上げながらぽつり、本音をこぼす。



 「………………私も行きたかったなあ、新婚旅行。私達の時は国直しで大変だったし」


 「…………………アル」



 「ん?…………ッ」




 ラフェエルは自分の方を見たアルティアに唇を重ねる。触れるだけのキスをして、目を細めた。



 「……………アミィに国を任せたら、何処へでもいけるさ」


 「!…………ふふ、そだね」




 _____皇帝夫婦は今日も仲良しです。 







 *  *  *




 「すごい………………!」



 セオドアはアミィールに抱かれながら、感嘆の声を上げた。


 目の前には____シースクウェアの国境・結界壁。


 青と水色のグラデーションの門を囲むように青く揺れ、波打つ結界。キラキラと輝く白い光が砂のように散らばっている。見ようによっては星空にも見える。幻想的だ。




 綺麗すぎてただでさえ低い語彙力が地に落ちる。けれど。


 セオドアはちら、とアミィールを見て不安げに言う。



 「………………ラフェエル皇帝様は、海とシースクウェア王城以外には行ってはならないと…………」 


 「そんなことも行ってましたね。………けれど、これはわたくし達の新婚旅行ですよ?

 ____この綺麗な結界壁を、セオ様にも見て欲しかったんです」



 「……………ッ」



 アミィール様は俺を降ろしてから結界壁の前に立って、悪戯っぽく笑った。そのお姿は___結界壁と相俟って、綺麗で。アミィール様の美しさと絶妙に合ってて不覚にもときめく。


 急に胸を抑え始めるセオドアに、アミィールは駆け寄る。



 「どうなさいました?胸が痛いのですか…………?」


 「いや………………アミィが、その、綺麗すぎて…………見蕩れてしまったのだ」


 「………!」



 珍しくセオドア様がストレートに言葉を述べてくれた。それだけでも嬉しいのに、わたくしに見蕩れたと述べるセオドア様に、わたくしの胸も高鳴った。



 もう1年になると言うのに___この御方はわたくしの心を掻き乱しますね。


 アミィールはほんのり顔を赤くしながら、いつものようにセオドアの両頬を両手で包んで唇を重ねた。


 「………ん、アミィ、綺麗」


 「…………セオ様も、綺麗ですよ」


 キスの合間にそんな会話をして、顔を合わせて笑った。











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