142 / 469
第10章 新婚旅行は海がいい
憧れのハネムーン
しおりを挟む「わ、私は…………………」
「……………」
「………………」
何か上手いことを言おうとするけれど、2人の眼光が鋭すぎて言葉が詰まる。………最近、俺も色んな仕事をしているから度胸が身についたと思ったけれど気のせいでした、調子に乗りました、誰か助けてください……………
「あ、っと………「2人とも~、私の可愛い息子をいじめないでよ」……アルティア皇妃様!?」
アルティア皇妃様は後ろから抱き着いてきた。それだけで2人からの殺気がこちらに向く。状況悪化の天才なのかな?アルティア皇妃様?
「……………お母様、離れなければここからナイフを投げます」
「……………セオドア、お前は死ぬ覚悟ができているんだろうな?」
2人とも、そのナイフは食べ物を切るための道具であって人に向けるものじゃないです。そして必殺仕事人みたいな顔をしないでください、このイケメンと美女の親子は冷徹極めるから凡人には本当に生きた心地がしなくなるので…………
同じように殺意を向けられているというのに縮こまるセオドアを抱きしめて笑うアルティアは、口を開いた。
「娘夫婦はいつも仕事ばかりだしバカンスぐらい行かせてあげるのは親の役目じゃない?ラフェエル。
アミィールも行きたいって言うけど長く国を空けられると私の仕事も増えちゃうから2日で妥協しなさい。
ほら解決!それより今日はチーズケーキよ~!」
そう言って1人席に戻ってチーズケーキを頬張り満面の笑みを浮かべるアルティアを厳しい目付きで睨んだサクリファイス皇族家族でした。
* * *
「うう…………………」
セオドアは1人、自室のソファに身体を預けていた。
本当にアルティア皇妃様って滅茶苦茶だよな、最初こそ傾国の美女だとドギマギしていたけれど、一年以上居るとトラブルメーカーな部分しか目にいかない。良くも悪くも何かのきっかけになる人である。
とはいえ。
「………………新婚旅行、行けるんだ」
セオドアはぽつり、そういう。
正直とても嬉しい。だって、諦めていたから。国務を行うのは誉高い。アミィール様とも毎日会える。好きな事も存分に出来て毎日幸せだ。
けれど、乙女な俺はこの言葉にときめかないわけがなかった。考えてなかったけど、無意識下に新婚旅行に行きたかったんだな、と実感する。
でも、与えられたのはたったの2日。2日で何が出来る?いや、でもそれ以上国を空けたら俺もアミィール様も仕事が出来ない。これは仕方ないことなのだ。でも。
「……………新婚旅行なら、少し遠出したかったな、それこそ、ハワイみたいに海が綺麗な場所に行って、2人で楽しく………」
「海ですか?」
「わっ!」
不意に愛おしい人の声が聞こえて、ソファから立ち上がった。見ると___お風呂上がりのアミィール様が。
アミィール様は自室もあるが、お風呂や食事、甘い時間などは俺の部屋に来て行う。曰く『自由な時間は片時も離れたくないから』だそうだ。可愛すぎないか?そしてかっこいいだろう。俺の奥さんだ。
「?どうなさいました?」
「……………あ、いや、なんでも…………」
得意気になっていた気持ちはアミィール様のお顔が至近距離に来た所で引き締められた。本当に美し過ぎる………見れば見るほど俺が旦那でいいのか、なんて考えてしまう。もう少しで結婚して1年になるのに変われてない俺…………ヘタレすぎる………
顔を赤らめながら自己嫌悪に陥るセオドアに首を傾げつつ『海ですか………』と考える。
「海でしたら、シースクウェア大国ですね。あそこの海はとても綺麗なので」
「シースクウェア大国…………!」
アミィール様のお言葉に思わず反応した。
"海と水と生きる国"・シースクウェア大国。サクリファイス大帝国よりは小さいしヴァリアース大国より緑が豊かな訳では無い。その通り名通り、海が綺麗な国だと聞いている。このユートピアで食べれる魚は殆どシースクウェア大国産だ。勿論これら全ての情報は文献で得たもので、行ったことは無い。
でも。
「……………行ってみたいな」
きっと、海は勿論、珊瑚や真珠なども綺麗なのだろう。乙女男子としては見たいし、男としてはそれを使った何かを愛する人にあげたい。
天井を見上げながら、愛おしい御方が緑の瞳を細めている。そんな顔を見たら、叶えたいと思うのは普通でしょう?
だから。
「____行きましょう、シースクウェア大国へ」
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!


異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる