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第9章 慌ただしい日常

お茶会決定事項

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 「…………よし、なら決まりね、私が各貴婦人たちを呼ぶ!んで、会場はここ!いい?」


 「良くないです!」


 「勿論おっけーです!先輩の城でやるお茶会なんて素敵!私、聖女の仕事を投げてでも来ます!」


 「聖女の仕事を放棄しないでください!」


 「わたくしも女王など忘れて、その日は久しぶりにメガネをかけて、貴婦人のように振る舞わなければですね」


 「女王陛下!だめですよ!」




 一人一人に突っ込むが、やっぱり大人達に俺の声は届かない。この人達の耳は飾りなのか…………?


 そんな不敬にも近い考えを持って未だに顔を赤くし、涙を流すとても可愛い女装したセオドアに、3人の視線が集まる。やっと通じたか!?


 「…………先輩、これ、永久保存したいんですけど、カメラとかありますかね?」


 「残念ながらこの世界にはカメラはないのよ……………写メならどうかしら?」


 「ああ、アルティア様とフラン様が言っていた精緻な肖像画ですか!わたくし、とても興味深いですわ、シャメってどんなのかしら………………」



 「……………………」



 写メはもう死語である。日本人だというのは知っているけれど、俺の生きていた時代よりも一昔も二昔も昔から来た転生者なんだな、と思いながら…………やっぱり恥ずかしさで泣いたセオドアでした。







 *  *  *




 「はあ……………………………」




 セオドアは自室のキッチンでお菓子を山のように作っていた。既にキッチンの周りにはスコーンやマカロン、パンケーキに飴玉など、色も装飾も可愛いたくさんのお菓子が文字通り山積みだ。彼は極度のストレスや悩みを感じるとお菓子を無限に作るという奇行に走るのだ。


 それを知っていて、なおかつ昼間の出来事も知り尽くしている執事はくつくつ、と喉を鳴らしながら笑う。


 「よかったじゃねえか、可愛いドレス着れて。似合ってたぜ?」


 「うるさいな……………嗚呼、俺は穢れてしまった………皇配としても男としてもダメダメだ……………おまけにお茶会も参加でまた女装だぞ?もう俺、あの人達に近づきたくない…………」



 グズグズと泣くセオドアは女装しなくても乙女である。今作っているブラウニーはセオドアの涙入りだ。あの歳を感じさせない美しい重要人に囲まれて浮かれるどころか泣いている主人はやっぱり変わっている。




 「アミィール様もお美しいが、あの場にいた全員美女だったよな。身分がなかったら俺は口説いてた」



 「そんなこと思う前に主人の俺を守れよ…………………」



 「あら?セオ様、こんなにお菓子を作ってどうなさいました?」


 「____ッ!」


 突然の美しい声と共に腰に細く白い、よく馴染んだ腕が巻かれる。セオドアは思わず持っていたブラウニーを片手で潰してしまった。耳にかかった吐息に顔を赤らめながら振り返ると___いつの間にか紅銀の髪、黄金色の瞳の美しい我が妻、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスのお姿があった。


 「あ、アミィ!?いつの間に…………!?」


 「ただいま帰りました。ノックをしたのですが言葉が帰ってこなくて、はしたなく勝手に入っちゃいました」


 そう言ってぺろ、と舌を出して笑うアミィール。セオドアは顔を赤くしながらレイを見る。レイは笑いを堪えている。気づいてたな………!



 「レイ様、本日の仕事はここまでで、お下がりくださいませ」


 「ええ。ありがたき幸せ。

 ではセオドア様、…………お二人の時間をお楽しみください」


 レイは爽やかな笑みでそう言ってさっさと出ていってしまった。本当に、性悪な執事である。………と、というか、胸が背中に当たっているし、肩にはアミィール様のお美しい顔があるし、もう心臓が持たない…………!



 セオドアは生娘のように顔をかあ、と赤らめた。










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