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第7章 主人公と皇女の結婚式前

結婚式直前 #皇女編

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 「つ、疲れた………………………」




 セオドアは一人、浴槽に浸かりながらだらけていた。

 各国の重要人と怒涛の出会い。『理想郷の王冠』攻略対象キャラ登場イベント。そして_____"自由"への宣誓。



 色々ありすぎて、分からないことも多すぎて、頭のキャパは完全にオーバーしている。脳が疲れすぎて思考が回らない。お風呂に上がったらお菓子……………いや、夜食べたら太るな。



 とにかく、だ。

 俺は______本当に、アミィール様と結婚する事を各国の重要人に向かって言えたのだ。


 乙女な俺にしては大した進歩じゃないか?ヘタレでビビリな俺は、進化したんだ。


 全部、アミィール様と出会ったお陰だ。
 アミィール様に手を引かれ、ここまで"男"を上げられた。



 そりゃあ、まだまだ未熟だし、アミィール様の隣にいて見劣りしない!とは断言出来ないけれど…………それでも、着実に前に進めている。


 ______1年前の、アミィール様と出会う前の俺。俺は今、すごく幸せだぞ。うじうじ、おどおどしていないでもっと早くアミィール様に近づけ。そうすれば変われるから。




 なんて、馬鹿みたいなことを考えるくらい、男気溢れるアミィール様に惚れている。

 そして。


 その惚れた人と、明後日には結婚しているんだ。


 ……………そりゃあ、ほかの攻略対象キャラが居るから乱入イベントがあるかも………なんて、思うけれど。



 でも、アミィール様は俺を選んでくれる。そう確信さえしている。



 「_______アミィール様に、会いたいな」



 「ならとっとと風呂から出てクソして寝ろ」



 「うおっ!」



 不意に声を掛けられて飛ぶように立った。なんかデジャヴ。ヴァリアースを出た時は兄上に声を掛けられたけど、今日は執事のレイだった。



 レイは片手にタオルを持ちながら、扉に寄りかかっていた。セオドアは恨めしそうにレイを睨む。




 「お、驚かすなよな」


 「お前が寝ないと俺は寝れないの知ってるだろうが。何長湯してんだよ」



 「……………俺、主人なんだけど」


 「その前に友だろ」


 「ふ、…………まあな」



 セオドアはそう言って静かに笑ってそのまま湯船から出る。レイからタオルを受け取り、身体を拭きながら話をする。



 「なあ、俺の身体、太ってないか?」


 「あん?」


 「だって、ほら、………アミィール様との、初夜で、………太ってるとか言われたらさ」



 モニョモニョと自信無さげに話すセオドアに、レイは呆れる。

 こいつは馬鹿か?どっからどう見ても細すぎるだろ。一年前と比べたら多少大きくなったし、もやしでは無くなったけど正直女物のドレスも着れそうな勢いである。どこまで女子なんだこいつ?


 器も男の尊厳もデカいのに心だけは小心者だな。



 とはいえ、これを言ったらまたセオドアは泣き出すから言わない。幼い頃から共に過ごしてきたからそれぐらいわかっている。




 「……………大丈夫なんじゃねえか?お前が太ったってアミィール様は愛してくれんだろ」


 「テキトーなこと言うなよな!そ、それに、…………アミィール様がそう言ったとしても、俺は………………なんというか、アミィール様をお守りできる男らしい身体で居たいんだからさ」



 セオドアは服を着ながら、顔を赤らめている。


 考え方は未だ女子だが、アミィール様を好きになってからは男らしい一面が出てきたな。とはいえ反応は女子のソレだが。



 「まー、幸せになれんだろ。大丈夫大丈夫」

 「またお前はそうやって軽く言って、…………」



 ブツブツというセオドアを、友として優しく見守るレイは『お前なら絶対幸せになれるさ』と心の底から思っていたとさ。

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