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第6章 お披露目祭り

愛に溺れる

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 本当に、幸せなお披露目会だったのに滅茶苦茶だ。
 アミィールは涙を流しながら思う。



 確かに、太陽神や妖精神の契約印を持てるものなど希少だ。神からの加護なのだから、悪いものでは無い。エリアス女王陛下も森の妖精神に愛されているのに珍しいことだ。


 太陽神に至ってはお母様に無理矢理服従させられているが正式に契約印を貰っている人間などいない。だから加護を貰えるのは誉高い。



 けど。




 わたくしが、セオドア様以外の御方とキスをしたこと。


 セオドア様が、わたくし以外の御方とキスをさせられたこと。




 どちらも嫌だ。



 お互いを愛し合うと仮にも誓った傍からこうしてわたくしやセオドア様以外に触れられるなど……………




 そう思っていると、ふわり、とセオドア様が抱きしめてくださった。そして、とても優しい声で言う。



 「…………………アミィも私も、自分からしたわけではない。私達は、私達の意思でキスをしている。

 同じキスでも意味は違う。私からキスするのは____貴方だけと、決めているんだ」




 「…………………ッ」




 そう言って、子供をあやす様にわたくしを慰めてくれている。……………わたくしがお支えしなければいけないのに、情けない。



 でも、この大きな掌、温かな温もり、先程のキス_____それだけで全てどうでもよくなるのだから、セオドア様の魔力は凄い。




 「……………ねえ、セオ様」



 「なんだい?」



 「わたくしがキスしたので、次はセオ様がわたくしにしてくださらない?

 甘い、甘い蜂蜜みたいなキスを」



 「ッ」




 そう言うとすぐに紅くなる顔。

 ………………かっこいいことを言っても、こういう所は全く変わらない。 


 どちらのセオドア様も素敵。


 嗚呼、本当に、…………わたくしは今日も貴方に溺れています。




 セオドアは顔を赤らめながらも、それでも唇を重ねた。









 *  *  * 






 「エンダー、このデザインはどうだい?」



 「いいですね、…………というか、何枚作るつもりです?」 




 セオドアが嬉々とした顔でアミィールの専属侍女・エンダーに聞く。エンダーは答えながらも呆れて部屋を見渡した。


 部屋には_____たくさんの、様々なデザインの白い美しいドレスが足の踏み場もないくらい広がっている。




 ……………ヴァリアース大国にてお披露目会を終わらせサクリファイス大帝国に帰ってきてから、セオドアはひたすらドレスを作っていた。



 理由は1つ。


 アミィールが結婚式で着るドレスを自分の手で作りたいと思ったからだ。




 結婚式まで____あと1ヶ月という所まで来た。そして、それは同時に初めてアミィール様が転校してきた日なのだ。


 つまり、俺達が関わっていなくともちゃんと出会った日なのだ。



 よく覚えている。ギャルゲー『理想郷の宝石』で、アミィール様はモブの筈なのに転校してきて驚いたから忘れてなかった。その時はこんなに仲睦まじくなるとは思っていなかったけれど。



 でも実際そんなアミィール様と結婚式まで開くのだ。しかも出会った日に!ならばなにかしたいと思うだろう?


 ハンカチは前にあげたしリボンもあげた。お菓子は3日に1回プレゼントしてるし花だってあげた。プレゼントを街で買う方法もあるけどチートスキル"治癒血"があるから外には出れない。



 この世にプレゼントにドレスをあげられる男なんて俺ぐらいだ。…………重いかもしれないけれど、受け取って欲しい。



 「だから私は作り続けるのだ!」



 「………………レイ様、貴方のご主人は少しおかしいですよ」


 「わかっている。あいつは乙女病なんだ。近づかなければ害はない…………はず」





 猛烈な勢いでお手製ミシンを動かすセオドアを冷めた目で見ていたエンダーとレイでした。












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