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第6章 お披露目祭り
皇妃は婿も娘も大好き
しおりを挟む「ひゃ~!相変わらず国境壁は凄かったねえ!」
「…………………そうですね」
「……………………」
馬車の旅、25日目。
アルティア皇妃様はそれはもう上機嫌でニコニコしているけれど、アミィール様のお顔はそれはもう不機嫌そのもので。
勿論、人に当たったりなどはしない。俺には優しく笑みも向けてくれる。だがしかしアルティア皇妃様には射殺すような目で睨みつけている。正直ここまで不機嫌なアミィール様を見たことがない。
しかし流石のアルティア皇妃様。そんなこと気にしないと言わんばかりに『よっこいしょ』と言って自分の家のように椅子に寝そべる。
「…………………お母様、セオドア様の前でそのような格好しないでくださいまし。胸が見えていて不快です」
「あらやだ、セオドアくん、私の胸を見てるの?」
「み、見てないですよ!」
アミィール様はじと、と俺を見る。完全に飛び火である。アルティア皇妃様はニコニコしているし絶対遊ばれている……………。
アルティア皇妃様はとってもフレンドリーで楽しい方だ。ただ、とても意地が悪い。最初に出会った時はアミィール様に似てると思ったが、それは見た目だけで、アミィール様の性格はどちらかというとラフェエル皇帝様似だ。
勿論、似ているところはある。些細な事で目を輝かせたり、ほんの少しの、当たり前のような気遣いで喜んだり、俺のことを笑わせようとしてくれたり……………
でも、冷静な考え方だとか独占欲の強さとか………根底にあるのはまんまラフェエル皇帝様だ。
流石親子というか…………俺も、父上と母上に会いたくなった。
馬車の外は見慣れた自然が溢れる大地が広がっている。もうヴァリアース大国の領地内だ。全く変わってなくてほっとする。
早く会いたい。話がしたいな。
そんなことを思っている俺の手に、アミィール様の細く白い手が乗る。見ると、アミィール様は優しく微笑んでいた。
「もうすぐ、ですよ」
「…………うん」
……………やっぱり、アミィール様は心が読めるのかもしれない。俺がセンチメンタルになっていたりするとこうして優しく声をかけてくれる。最初こそ俺は男だぞ!と思っていたけれど、男子力では圧倒的に敵わないのがこの1年で身に染みてわかっている。それが、アミィール様なのだ。
でも______
* * *
2人のイチャイチャを、アルティアはニヤニヤとしながら見ていた。
ほほーん…………?この私の前でイチャイチャするなんていい度胸じゃない。………にしても、お似合いね~。アミィールはラフェエルに似て美人になったし、セオドアくんはギャルゲー運営が女性票欲しさに作り出したと言っても過言ではない程の美男子だよ?
でも見た目だけじゃなくて、転生した魂は実は女の子なんじゃないか?と思うほどの心の優しい男の子。アミィールは女版のラフェエルだから男勝りが過ぎるし、いい塩梅じゃない?
元々私とラフェエルだって恋愛婚だし、セオドアくんが好きなんだ、連れて帰りたいんだ、と聞いた時は『よっしゃ!恋愛フラグ!』と浮かれていたからセオドアくんをすんなり受け入れられた。
けど、こうして一緒にいると不思議なもので我が子のように可愛い。というか純粋に前世から乙女系男子×男前系女子のカップリングは大好物なんで、ほんと、推し!幸せになれ!ってヲタク心が疼く。
…………と、話は脱線したけど、私もラフェエルもなんだかんだこの子が好きなのだ。この子の優しい気持ちは、私達家族には無いもの。大事にしたい。
「と!いうことで!」
「!」
そこまで考えて、立ち上がった。そして聖の鳥の幻獣・ヴァルを呼び出す。セオドアくんは口をぱくぱくしてるし、アミィールは呆れたような顔をしてるけど関係ない。
「…………お母様、何をなさっているんですか?」
「ちょっと半日ほどエリアスと談笑しよーかなって。久しぶりのヴァリアースだし?過去の仲間と会ってくる~!
若い子は若い子で仲良くね~!」
それだけ言い残してヴァルに跨った。
_____少しはアオハル楽しませなきゃね。
そんなお節介おばさんと化したアルティアは空高く飛んだのだった。
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