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第5章 主人公の隠された能力

皇女と主人公は以心伝心

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 「……………………………」





 アミィールは、自室で空を見ていた。
 ………………わたくしは、セオドア様と結婚出来る。嬉しい、嬉しいの…………だけど、怖い。


 セオドア様が変わってしまわれるのではないか。


 傷つけられてしまうのではないか。


 ……………………心の優しいセオドア様が、セオドア様じゃなくなるのが、途方もなく怖い。



 身体が、震えた。


 わたくしは、龍神の血を受け継いでいる。

 それを理由に、何度も攫われかけたことがある。その度に両親、両親の仲間達、妖精神、精霊達が守ってくれた。


 わたくしは弱いままでは居られなかった。……………弱ければ、攫われてしまう。殺されてしまう。



 そうなったら_____わたくしが生まれた時、喜んでくれたお父様、お母様、フラン様、ダーインスレイヴ、ガロ、リーブ、クリスティド国王陛下、エリアス女王陛下、妖精神、精霊、国民達、従者達、…………………皆様が悲しまれる。




 それはダメだ。嫌だ。



 そう思って、生きてきた。
 だから穢れた血が憎くて、嫌だった。


 そんな気持ちに、愛おしい人がなってしまったら?____怖い。



 わたくし、怖い。セオドア様に会いたい。



 セオドア様______




 そう思った時、コンコン、とノック音が響いた。…………?エンダーかしら?


 頑張って震えを抑えて『どうぞ』と言った。扉が開くと___愛おしい御方。



 「……………セオ様…………」



 「アミィ……………ッ!」



 「きゃっ」



 セオドア様は、わたくしを見るなり、抱きしめてくれた。震えていた身体にじんわりと染み渡るように体温が伝わっていく。息が荒くて、耳が擽ったい。



 けれど、どうして?セオドア様はわたくしの部屋にいらっしゃったことがないのに……………「ごめん」………?



 セオドアは、ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。



 「アミィの気持ちも考えず、浮かれて、…………1番大切な事を忘れていた。……アミィを傷つけないという約束を………誓いを……破った。


 ごめん、ごめん……………」




 セオドア様は、沢山謝ってくださった。わたくしの顔に、セオドア様の涙が落ちる。



 ___嗚呼、わたくしの知っているセオドア様だ。


 わたくしが恋焦がれ、深く愛している、優しくて内向的で…………か弱い御方。



 わたくしは、馬鹿だ。


 セオドア様を疑うなんて_____馬鹿すぎる。



 「………………………セオ様、謝らないでくださいまし」



 アミィールは背伸びをして、セオドアの涙を舐めとった。けど、代わりに自分が涙を流していた。それでも、笑顔で言う。




 「_____セオ様は、サクリファイス大帝国の者になるのです。簡単に謝らないでください。


 わたくしは___どんなセオ様でも、愛し続けますから………………」




 そう言って、セオ様の頬に両手を置く。
 群青色の髪、エメラルドのような綺麗な緑色の瞳、子犬のようなお顔。


 _____愛おしい。



 アミィールは、唇を重ねた。
 セオドアはそれを受けて、アミィールを抱き締める。きつく、それでも優しく。




 紅銀の長い、サラサラとした髪、いつも俺の顔を映し出してくれる黄金色の瞳、……………全部全部、俺の大好きな人。




 俺は、もう失敗しない。
 ____もう、この美しくて男気があって強くて…………それでも、"女"であるこの人を離さない。




 俺は_____どんなに強い力を持っても、この人だけを愛し続ける。




 ______この人を守ろう。




 2人は甘く、塩っぱく、酸っぱいキスをしながら____同じ事を考えたのだった。












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