69 / 469
第5章 主人公の隠された能力
触発されちゃうお年頃
しおりを挟む「まあ、皇帝様の皇妃様への愛は凄いと有名な話だがな。大帝国の皇帝なのに、皇妃様以外の側室は持たないし、皇妃様を戦場に連れていかなければ会いたすぎて早く終わらせる、なんて専らの噂だ」
「うん、凄くわかる。皇帝様はとても愛情深い。それでいてなんでも出来るんだから凄いよ。私はとても感動した」
レイの言葉に饒舌になるセオドア。
…………数日前の怯えが嘘のようだな。そこまで皇帝がいい人だったか。
セオドアの人の見る目は優れている。
本人は自覚していないが、オーファン家では新しい使用人を雇う時必ずセオドアを呼ぶほどだ。そしてそれは見事に当たる。………なんのスキルもないと言っていたけど、十分すぎるスキルだよなあ………
そんな主人は未だにうっとりとしている。乙女が目覚めているのは容易にわかった。
これは何を言っても聞かないな、と思っている時、コンコン、と軽快なノック音が聞こえた。この時間に部屋に来る人間など一人しかいない。
それはセオドアもわかっていて、嬉々とした顔で『どうぞ』と言った。
「セオ様、お疲れ様です」
「アミィも、お疲れ様」
そう言ってお互いの頬にキスし合う2人。レイは『お前達も十分甘いよ』と心で呟いてそ、と外に出た。
…………俺も婚約者が欲しいな…………メイドに声かけてみよ。
そう思ったレイでした。
* * *
「セオ様、本当に大丈夫ですか?」
アミィールは心配そうにセオドアに問う。勿論、アミィールの耳にもアルティア皇妃のお手伝いをしていることが入っているのだ。
自分を心配してくれるアミィール様の優しさに更に頬を緩めた。
「ああ。ラフェエル皇帝もアルティア皇妃もお優しくて…………未だにラフェエル皇帝は話しかけてはくれないけれど、感情の起伏はわかるようになったんだ。ラフェエル皇帝は甘さ控えめのマカロンやモナカを好むだろう?」
「えっ、よくわかりましたね。皇帝は自分から美味しいと言わないのに…………」
「うん、美味しい時は眉間にシワが寄るんだ。逆にあまり好みではないと耳朶に触れる。他にも、シースクウェアのコーヒーが口に合うらしい」
セオドア様は嬉嬉としてそう語る。…………自分に刃を向けた相手をここまで許せるものなのでしょうか…………
とはいえ、あんな父親でも大切で。好きな人に褒められて悪い気はしない。………それどころか、とても嬉しい。
本当に素敵な御方、傍にいればいるほど夢中になっちゃう。………でも。
「わっ」
アミィールはセオドアを抱き寄せる。そして、鼻がくっつくくらい近づいてむくれた顔をした。
「……………皇帝の話ばかりされると、わたくしは嫉妬します。セオ様は皇帝の婚約者ですか?」
「ッ、そ、そういうわけでは____ッ」
言い終わる前に、唇を重ねた。
いくら尊敬している父親でも、いくら強い母親でも、セオドア様はわたくしの婚約者なのです。
いつものように強引にキスするアミィール様。…………実は、皇帝様夫婦のイチャつきを見てると俺もアミィール様に触れたいなぁって思うんだ。だから、毎日のキスが更に幸福感を与える。達成感に近いのかもしれない。
そんなことを思いながら、皇帝夫婦がするよりも甘く、深く唇を重ねる。………足りない。もっと。
あのお二人のように堂々と愛し合えればいいのに。触れたい時に触れ、愛し合いたい時に愛し合い、言いたいことは全部言う。
すっかり、俺の理想の夫婦像になっていた。
____アミィール様と、そうなりたいな。
「っ、あ、……セオ様、ッ」
「?…………あ! 」
我に返ると、俺はアミィール様の服を脱がせていた。豊満な胸がチラついていて慌ててアミィール様の服を直す。
「も、申し訳ありません!」
「い、いいえ、その………辞めてしまわれるのですか? 」
「うう…………ッ」
頼むからそんな色っぽい顔で誘惑しないでくれ…………………
セオドアは顔を真っ赤にして下を向いた。アミィールはそれを見てくすくすと笑う。
_____皇帝夫婦のことを考えると、更に理性が効かなくなることを覚えたセオドアでした。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる