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第5章 主人公の隠された能力
考え、動く
しおりを挟む「!?………!?」
ダーインスレイヴに黙れと言われた直後、俺達はとんでもなく高い所に居た。た、たか…………
カタカタと震えるセオドアを他所に、ダーインスレイヴは声を出した。
「よっ、アルティア」
「はあい、ダーインスレイヴ」
「………あ、アルティア皇妃様………お、お見苦しいところを…………」
そこには、アルティア皇妃がいらっしゃった。こんな高いところだと言うのに平然と横になっている。降りて礼を尽くさなければならないが、足場がないのが怖くて降ろして、とは言えない。
しかしアルティア皇妃は礼などに興味が無いようで『そのままでいいよ』と笑ってくれた。
「珍しい組み合わせね。なにかのパーチー?」
「まあ、パーティより面白いことがあってな。
セオドアがラフェエルに好かれたいんだと」
「すっ…………」
その言い方では誤謬が生まれるじゃないか!まるでラフェエル皇帝に恋焦がれてるみたいに思われたくない、アミィール様にもアルティア様にも不敬だ!
顔を真っ赤にしてぱくぱくと口を動かす可愛い娘婿に2人は和む。そして、にこにこしたアルティアは口を開いた。
「なにそれ、とっても面白いじゃない。やれば?」
「お前なあ………ラフェエルの性格を1番に知っているだろう?ラフェエルの周りをうろちょろなんてしてみろ、五月蝿いとか言って殺されるぞ」
「ええ!?」
「そうね、口より行動に出るタイプだからね」
口より先に殺しにかかるって…………もう次元が違いすぎて頭がクラクラしてきた。こんな高いところに居るせいだと思いたい……………
「頭クラクラさせてる場合じゃないだろ、俺はきっかけをやったんだ、どうするかはお前が決めろ」
「私が、どうしたいか…………」
アミィール様も言っていた。一人一人が考え、動く。それがサクリファイス大帝国の人間だ、と。自分もその一員になろうとしているんだ。………モジモジしているだけではだめだ。
セオドアはそう考え、意を決してアルティア皇妃を見た。
「どうか、…………その高貴なお知恵を、お貸しください」
「……………ふふ、よく言えました。
いいわ、その勇気に免じて聞いてあげる。大船に乗った気でいなさい」
アルティア皇妃はそう言って身軽に起き上がって俺の頭を撫でた。アミィール様とは違って、少し乱暴だけど………手の温かさは一緒だった。
* * *
「……………………………………」
ラフェエルはとてつもなく不機嫌な顔をして玉座の間で書類を睨んでいる。それは、書類の内容で、ではない。
隣にいる____馬の骨のせいだ。
「………………………」
セオドアは、ラフェエルの隣に座っている。そして、その隣にはにこにこしたアルティア。
どうしてこうなった…………?
そう疑問に思っているのは俺だけではなく、皇帝様はアルティア皇妃を睨んだ。
「………………おい、アル」
「なんでしょう?」
「……………なんでこの虫がいる?」
「彼は___わたくしの公務の"お手伝い"をしてもらっているのです」
ラフェエルの冷たい言葉にアルティアはにこやかに答える。その間に挟まれているセオドアは菩薩顔である。
お手伝い、というのは口実だ。
アルティア皇妃は基本ラフェエル皇帝と共に仕事をしている。だから、お手伝いとして傍にいれば自然と皇帝様とお近づきに…………って、そんなバナナ。
おっと、思考回路が馬鹿になっている。
最初は無茶苦茶だと思ったさ。けど、アルティア皇妃様曰く『私の傍にいればラフェエルはアンタに危害を加えることは無い、仮に加えようとしても私がいればなんとかなるなる』…………という軽い理由である。
正直生きた心地はしない。………けど、これ以上に近づける方法もないわけで。
とはいえ。
「ここはゴミ置き場じゃないぞ」
「ゴミではなく私のお手伝いです、ねえセオドアくん、紅茶淹れてくれる?」
「は、はい!」
セオドアは立ち上がり、用意されたティーポットを手に持った。
ラフェエル皇帝の隣から逃げられたのは嬉しい。けど、アルティア皇妃様強すぎないか?あんなに威圧されてるのにニコニコしていられるって……………夫婦って凄いな、俺もアミィール様と…………いやいや、まだ早い!
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