上 下
59 / 469
第4章『理想郷の王冠』と『理想郷の宝石』

使いっ走り系太陽神

しおりを挟む




 「セオドアくん!」


 「……………?」



 机に突っ伏そうとしているのをアルティア皇妃の声が止めた。アルティア皇妃はにっこりと笑って言う。 



 「要は太陽神がアミィールのことを好きでなければ安心するんでしょ?」


 「いや、そういうわけでは…………」


 「じゃあ太陽神に聞いてみましょう」


 「え、あの」



 そういうことじゃない、というのはどうやら伝わらないらしい。というか、太陽神に聞いてみるって?


 セオドアが首を傾げているのを見つつ、アルティアはパチン、と指を鳴らした。


 「!」



 すると、お菓子を作った時に見たような黒渦が空に現れた。なにをしようとしているんだ…………?

 アルティアは戸惑いを隠せないでいるセオドアを放って、呟いた。




 「____来なさい、ドゥルグレ」


『ぐあっ!』



 「ええ!?」



 アルティア皇妃が呟いたら、黒渦からオレンジの刈り上げ、ピアスが沢山着いた福耳、金色の瞳、そして………4本の腕の、『理想郷の王冠』に出てきた攻略対象キャラ、太陽神・ドゥルグレが現れた。


 ドゥルグレは俺の1番推していたキャラである。嬉しくないわけはないけど、この太陽神もアミィール様を『くそ女ぁ!てめえこの呼び方やめろって言ってんだろ!』



 軽く感動さえ覚えているセオドアの思考をドゥルグレの怒鳴り声がかき消した。ドゥルグレは怒り狂っている。



『というかいい加減呪いを解け!お前の手足になった覚えはねえぞ!』


 「あら、いいじゃない。嫌よ嫌よ、って奴でしょう?」



『嫌よ嫌よじゃなくて本当に嫌なんだよ!』


 ギャンギャン吠えてるー…………キャラ崩壊待ったナシ、超絶俺様キャラなのに明らかにアルティア皇妃の方が主人って感じがする。


 そんなご主人様なアルティア皇妃は太陽神・ドゥルグレに聞く。



 「ねえ、アンタって私の娘は好き?」


『あん?好きなわけねえだろ、お前とあのくそ生意気な人間の子だぞ?あー、気色悪い。あれ好きになるくらいなら死んだ方がマシだわ』


 「アンタ、後で半殺しね。…………ね、分かったでしょ?セオドアくん」



 「あ、……………はい」



 突然話を振られて変な声が出た。は、恥ずかしい………!


 いつものように顔を赤くするセオドアをドゥルグレは見て『ほお』と声を上げて近づいた。




『珍しい魂してるじゃねえか、小僧』


 「え?」


『クソ女の魂はどす黒くてきったねーけど、この男は真逆だな、ここまで綺麗な魂は珍しい』



 「なっ、………」



 ドゥルグレが!大好きだったドゥルグレが!顔を近づけてきてる!いや、アミィール様の時のようにドキドキはしないけど!アイドルに生で会った気分!



 耳まで真っ赤にして目を閉じるセオドア。その様子にくつくつ、とドゥルグレは喉を鳴らして笑う。



『可愛いじゃねえか、俺ァ男もイケ__「人の息子を口説くなくそ神」__っぎ!!!!』



 セオドアに触れようとするドゥルグレの頭をアルティアは思いっきり叩いた。


 今男もイケるとか言われた気がするけど嘘だよな?これは乙女ゲームでBLゲームじゃないよな?なんで毎度貞操の危機を感じているんだ俺?…………



 さりげなく距離を取るセオドアを見守ってから、アルティアはしっしっ、とドゥルグレにした。



 「もういいわ、帰ってちょうだい。引き続きこのひまわり畑を維持してね」



『だからなんで俺は呼ばれたんだよ!………ちっ、じゃあな、小僧!お前ならいつでも呼んでいいからなっ!』



 そう言ってドゥルグレはふっ、と消えた。アルティア皇妃は何事も無かったと言わんばかりににっこり笑う。



 「____このとおり、太陽神は大丈夫よ。アミィールを好きにならないから」



 「は、はい」




 …………もしかしたらアミィール様よりチートなのはこの母親なのかもしれない、と思ったセオドアでした。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】女嫌いの公爵様は、お飾りの妻を最初から溺愛している

miniko
恋愛
「君を愛する事は無い」 女嫌いの公爵様は、お見合いの席で、私にそう言った。 普通ならばドン引きする場面だが、絶対に叶う事の無い初恋に囚われたままの私にとって、それは逆に好都合だったのだ。 ・・・・・・その時点では。 だけど、彼は何故か意外なほどに優しくて・・・・・・。 好きだからこそ、すれ違ってしまう。 恋愛偏差値低めな二人のじれじれラブコメディ。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

処理中です...