【完結】異世界転生でギャルゲーの主人公になったけど攻略対象外キャラにここまで熱烈に溺愛されるなんて聞いてない!

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第4章『理想郷の王冠』と『理想郷の宝石』

泣き虫主人公

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 「ぐずっ…………………」




 夜、ボロボロの姿のセオドアは暗い部屋の中、1人、泣いていた。
 まず、ガロはとっても強かった。俺が下手くそだというのを差し引いてもその強さは一際輝いており、手も足も出なかった。
 そしてそのあと、軽く学力テストをした。授業で習ったところや父親に叩き込まれた知識は存分に活かせたが、サクリファイス大帝国の歴史は殆ど解けなかった。


 とても情けない。自分は今まで何をやってきたのだ。主人公であると浮かれて勉学を怠っていたのだ…………アミィール様をお支えするどころか俺を選んで恥をかかせることばっかり……





 ※

 ____セオドアはこうグズグズ泣いているが、実際の所ガロが少し本気を出すくらいには強いし、テストもほぼ満点だったのを彼は全く知らないのである! ▽



 ※



 ………………そんな俺よりも、ガロの方がアミィール様に相応しいではないか。

 アミィール様は十中八九、乙女ゲーム『理想郷の王冠』のヒロインだ。乙女ゲーム『理想郷の王冠』は圧倒的に女子の支持があったのも、ヒロインの姿がちゃんと映されることはなく、感情移入しやすくなっていたから。でも、そのせいで確信に足る証拠はない。



 けど、ガロが居るとなると、そういうことなのだろう。
 思い出せ、思い出せ、…………他の乙女ゲームのように、誰のルートか分かるような仕組みがあるはずだ。リボンの色だとか、髪飾りだとか……………………



 そう思うものの、アミィール様は普段男装している。首筋のリボンは黒で統一されていて、黒のイメージカラーは俺の知る限りいない。髪飾りだってつけていないストレートヘアだ。




 どうしようもなく不安になる。
『理想郷の宝石』と『理想郷の王冠』が繋がっている世界で主人公同士が結ばれる………………そんなあべこべなことが本当に実現するのか?いや、それよりも……………俺ではなく、他のルートに軌道変更したら…………俺は…………アミィール様と離れなければならないのか?





 嫌だ。


 そんなの、嫌だ。


 アミィール様を愛しているんだ。


 笑顔で背中を押すなんて出来ないくらい、深く愛しているんだ。




 身体が震える。涙が止まらない。自分の女々しさに嫌気が差す。………………1人は、寂しい。




 「…………!」




 そう思った時、ノック音がした。俺は慌てて涙をふいて砂埃を払った。だめだ、アミィール様の婚約者である俺が泣いているなど、他の者に見られてはアミィール様に幻滅される。



 「ど、どうぞ」



 「失礼します」




 そう言って入ってきたのは____アミィール様だった。男装ではなく、夜着の姿である。目のやりどころに困った。豊満な胸が、ちらちらと視界に入ったから。



 目をそらすセオドアを他所に、アミィールはコツコツと靴を鳴らして近づいた。



 「セオ様、夜分に訪問して申し訳ございません。どうしても様子がおかしいように思えて…………」


 「…………そんなこと、ない」



 本心だった。会いに行きたいぐらい孤独だった。………けど、上手く言葉が出ない。顔も見れない。見たら、泣いてしまいそうで。

 じわりと涙を滲ませるセオドアの様子を見て、アミィールは優しく、いつも通り頬を持ち、自分の方を向かせた。


 「………嘘、下手すぎますよ、セオ様」



 「……………!」



 「そんなに鼻声で、涙を零しそうなお顔……………何も無いわけないじゃない。なにがあったのです?

 ガロになにかされたのですか?」



 「……………ッ」



 優しい、とても優しい尋問にとうとう涙が零れた。みっともない泣き顔など見せてはならないのに、涙はとめどなく溢れる。



 「ガロ様はなにもしておりません。私の為にご指導してくださりました。……………私が不甲斐なさすぎて……………自分に嫌気がさしていただけ____ッん」




 アミィール様は、言い終わる前に口付けをした。溢れる俺の涙を指で拭いながら。キスさえも優しくて、そのまま身を委ねた。








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