28 / 38
【23時間目】魔王様、沼池大掃除のお時間です‼︎
しおりを挟む四月初旬の風は気持ち良いものだと僕はこの世界にきて初めて知った。
この物語の初め───つまりはプロローグにまで遡る話ではあるが、あのアオハルを感じる語り、僕が書いたわけではないってみなさん知ってましたか?
『いちいち確認すんのもめんどくせぇよボケがっ!』って思う人は初めの番外編を読んでくれたら嬉しいんですけど、聖良いわくあの時に僕がそのプロローグにツッコミを入れる予定だった(らしい)んですって。
いや知らないよ。
そんな打ち合わせ聞いてないし知りもしないし多分Si◯iも知らないよ。でもゾルタ◯スゼイアンなら知ってるかもね?あ、今『うっわすげぇ懐かしい』って思ったでしょ。僕もそう思った。結局ゾルタ◯スゼイアンうんぬんの都市伝説?の真偽はどうなったのかね。
閑話休題。
あのプロローグの話に戻るんだけどあれ後から読み返してみたら割と僕もそう思ってた事に気づいたんだよね。まあなにせ書いたのが聖良だし、やっぱ付き合い長いと変なとこフィーリングが合っちゃって、つまり何が言いたいかって言うと────
「くっそ風にあたりてぇ……!!」
僕はここ───私立黒瀬川学園の───裏手の緑が深々と茂った森にある沼に来ていた。
んで、ここで何してるかと言うと(前話を見てくれた人なら分かるとは思う)大掃除をしに来ていたワケなのだ。
え?沼の掃除?沼の掃除ってなんだよ。
『緊急SOS!池の◯ぜんぶ抜く大作戦』みたいなことすんの?って思う方がいらっしゃるとは思います。
が!それが!それがね!この沼大して深くないんですわ。
どれぐらい深くないかと言うとおそらく沼の最深部であろう中央に行っても腰が埋もれるぐらいしかないワケで……。
とどのつまり!
大して深くないせいでここの掃除担当の教員が「おめぇら沼に浸かってゴミ拾えや」と『走れメ◯ス』に出てくる邪智暴虐なあの王よりも酷い命令を出したのであった。
そんでそんな圧政を敷かれた僕らは仲良く肥溜めに等しい沼で延々と続くであろうゴミ拾いに注力しているのである。
「我が盟友!!良いもの拾ったぞ……!!」
そんな絶対王政に辟易している僕とは打って変わってこの少女───種田 冬火さんはゴミ拾いと聞くやいなや嬉々として沼に特攻していった、ある意味勇者である女の子である。
まあ多分初めてできた友達と初めて行う学校行事に浮き足立っているのであろう。
僕は空気の読める人間なのでそんな無粋なことは絶対に言わないが。
「わっ…何拾ったの種田さんこれ?」
「ん~~分からん!我が盟友はなんだと思う?」
「え、なに拾ったの冬ちゃん」と共に作業をしていた奈賀井さんまで(正直この人は速攻でサボると思ったけど予想に反してちゃんと素直にゴミ拾いをしていた。今日は雪でも降るんじゃねぇかなと思うけどみんなはどう思う?)もこっちに寄ってきた。
奈賀井さんとともに種田さんからブツを受け取るとしっかりと両の手を使い、そのブツの正体を暴いていく。
この独特のざらりとした触感、適度に重さを感じるこの質量、そして片栗粉のような粘度と硬さ、これは───間違いない。
「種田さん………こ、これは………!!」
「こ、これは……なんだ!?」
「ただの泥じゃん、これ」
いや正体言わんといて!!
せっかく種田さんが「これなんだろう!う~~んわからないからお父さんに聞いてみよう!」と意気込む夏休みの小学生みたいな顔で持ってきたのに!!
あ、ほら!種田さんしょげちゃったじゃん!!
てかちみっこだから泥が胸のあたりまでついてるけどそこまで言ったらもう身動き出来なくない!?あ、そうか!ちょっとテンション上がっちゃって冒険気分で深いとこ行ったんだ!!危ないからやめてほしいね!うん!!
「もしもし……そこの方たちサボらずに仕事をしてください」
容赦なく、そして躊躇なく種田さんが持ち込んだ泥を粉砕する奈賀井さんの横から「ぬっ」と頭が出てきた。
「あ、すみません。ちょっと友達が珍しいものを拾ったって言うもんで少し……」
僕は反射的に謝るとそれが正解の選択肢だと確信する。
なぜなら僕らを注意してきた相手は二葉亭 逸華と大掃除前のミーティングで僕らホオズキ組沼地担当班に名乗った───私立黒瀬川学園生徒会会計・書記の人だったからだ。
本来、生徒会主導であるために掃除には参加しなくて良い(生徒会のメンバーは見回りと状況確認と相互連絡が仕事だと水原さんが言っていた)はずなのだがこの人はここの担当教員の笑えないブラックな指令に僕らと共に腹を立て、「私も掃除、参加します!!」と意気込んで僕らと一緒に泥にまみれた人なのだ。
まあ言うならば───すんごい良い人であるのだ。
そんな人を失望させる訳にはいかないのである程度僕らも真面目にやっていたのだったが───
「あ、ねえねえ友達くん。私も良いの拾ったわ。ふふっ。見てよ」
意気消沈する種田さんを尻目に今度は奈賀井さんが僕に拾い物の鑑定をしてほしいとブツを差し出してきた。
またも僕は両の手を用いて─────いや、待ってこれ。
「いやこれ泥やなくてドクロやないかぁ~~~い!!って、いや言うてる場合ちゃいますよ!!なんで!?なんで人骨!?ちょ、誰か船越英◯郎呼んできてぇーーー!!」
「待って躑躅森くん!これただの人骨じゃありませんよ……!」
二葉亭会計・書記がかけている丸眼鏡の奥が光る。
え、こいつは……まさかリアルな事件が勃発していたのか……!?
表の顔は名門進学校と通っているが裏ではよなよな人さらいをしている、とか……!?
「この、骨は……ですね。"北京原人"の骨、ですね……!」
「……は?」
「急に言われても分かりませんよね……。北京原人とは中国の北京市房山県周口店竜骨山の森林で発見された化石人類で、1921年にスウェーデンの地質学者ユハン・アンデショーンとオットー・ズダンスキーの発見を嚆矢として…」
「Wiki◯ediaやめてーーーーーっ!!って、いやいや北京原人がなんたるものかが分からないんじゃなくてなんで北京原人の人骨が日本にあるんすか!!てか北京原人の骨って紛失してましたよね!?あ、そういう!?紛失した先はこの学園の裏手の沼地でした!って言うことですか!?って、んな訳あるか~~い!!」
いやそんな「……?」みたいな顔でこっち見られても困りますよ!!
あれもしかしてこの人もそういうボケかましてくる人なのかな?ファーストインプレッション的にはすごい真面目で勤勉で正直な人かと思ってたけどこれあれだわ、天然がそれらの要素差し置いて先走ってるやつだわ。
んで、勤勉さが祟って会話してると余計なうんちく挟んでくる人だわ。あー、いるよね。会話してるとうんちくと会話サンドウィッチの"言いたいだけ"の人。うん、多分そういうタイプだこれ!!
「我が盟友……っ!今度は今度はちゃんとしたモノ拾ったぞ………!これ、悪鬼の生贄にされたため生まれつき身体が……」
「それは泥じゃなくて"どろろ"やーーーーーー!!!!」
☆心が叫びたがってるんだ。──────
───────────────────────
【登場人物紹介】
●躑躅森 逢魔
魔王の息子で主人公。
さくら子の奸計によって沼地の大掃除のチームリーダーを任されるハメに……とは実は嘘でさくら子もまさか沼地の掃除をさせられるとは思ってもなかったのでそう通達された時に平謝りされたもんだから逢魔も断れなかっただけである。
……優しさは時に罪であるのだ!
●種田 冬火
1人目の能力持ち厨二コミュ障ぼっち少女。
この作品が始まった初めて2番目に自己紹介蘭を任されたので緊張している(大嘘)。
今回の話はちょっとぼっち特有の哀愁が漂っている。みんな優しくて良かったね。
●奈賀井 風花
3人目の能力持ち奇想天外奇々怪界魑魅魍魎少女。
彼女の性格上掃除などはサボるだろうと逢魔は予想していたが彼女の性格を鑑みるならば実はサボりこそしないのだ。
詳しい事はこの先、明かされるだろう────!!
●二葉亭 逸華
私立黒瀬川学園生徒会会計・書記。
おそらくどっかの外国のハーフであるため髪は金、目は碧眼、おまけに丸眼鏡というこれまでかというほど性癖がぶっこまれたキャラ。
まあここまでいけばこのキャラがなんなのか想像に難くないだろう……!
●船越英◯郎さん
通称"崖っぷちの名探偵"。
ありとあらゆる出来事は彼に言わせてみれば全て事件なのである。
最近は某小さい名探偵と某相棒といつも一緒な名探偵とデスマッチするらしい(大嘘)。
はいそこ、バイ◯グラとか言わない。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる