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【9時間目】魔王様、ストーカーのお時間です‼︎
しおりを挟む「ちょ、あんたたちほんと、なんなのよ一体!?ちょ、やめて!スカート引っ張らないで!」
「落ち着いてください水原 さくら子。私たちはただのストーカーなので」
「なおさら慌てるわよ!!」
のっけから酷い絵面ですみません。どうも逢魔です。
なんで聖良と種田さんが水原さんに引っ付いているかと言うと─────
「ストーカーつったってそれでどう転べば友達になれるのよ?」
恐らく誰もが疑問に思うであろうことを僕が聖良にたずねると聖良は相変わらず天を指さしたまま答えた。
「ほら、"敵を知り己を知れば百戦危うからず"と言うじゃないですか。それですよ、それ」
「いや意味知ってて言ってないだろ。例え知ってたとしてもストーカーする時点で僕らの負けだよ」
聖良がやれやれとため息をついてやっと天を指さすその右手を下ろすと今度はその右手を僕の方へ差し向けた。
「偉大なる先人、孔子の考えが分からない人ですね……」
「この言葉は孫子の謀攻だぞ!我が盟友 聖良よ」
種田さんの思わぬ指摘に聖良が押し黙る。
やっぱ間違えてんじゃねえか。てか6話目で種田さんにしてやった事やり返しされてんじゃないよ。
「……まあ、とにかくストーカー案は事案になる可能性があるので却下な」
「いや私もストーカー案には賛成だぞ盟友」
今度は僕にとって思わぬところから賛成が出る。
そういえばいつまで僕んちに居るんですかねこのちみっ子は。ストーカー行為働いた後にストーカー案に賛成するとかもうギャグだろこれ。
「種田さん?一応理由聞いてもいいかな?」
「そんなの面白いからに決まってるではないか!分かってないな我が盟友よ!」
「是非やりましょう!」
ストーカー行為を面白いと捉えてしまう種田さんは一生分かりたくないな。
てか聖良は味方増えた途端に元気になるんじゃないよ………
────と、言うわけなのである。
無論、このフリーダム少女二人を止められる力が僕にあるはずもなく、今まさになす術なく僕は目の前の惨劇を見守るほか方法がないのだ。
「ごめんね水原さん。今日一日だけこの子達の相手してやってくれないかな?」
僕にはもはやこの天災を止められないばかりか、こうして水原さんにお願いをするしかないのだ。
許せ!水原さん!君のことは忘れないよ!
僕は心中そう思うとその場を放置し北へ北へと行進したのだった──────
「ちょちょちょ待ちなさいよっ!あんた居なくなったらツッコミ役減るじゃない!前々から早くツッコミ役引退したいって思ってからって早速人任せにすんじゃないわよ!」
いやこの人【登場人物紹介】の僕の欄ちゃんと読んでるーーーーー!?!?
こうして水原 さくら子さん(と僕)の(不)愉快な1日が始まった。
以下、ダイジェストでどうぞ!─────
国語の授業─────
種田さんと聖良による執拗な手紙回し攻撃にあう。なお種田さんと聖良は先生にはバレず水原さんだけはやけに紙だらけになった机を発見され怒られるハメに。
なお質問内容は昨日の献立のことや、家の裏手に蟻の巣があるかなどの質問だったらしい。
「ただの嫌がらせじゃない!やめなさいよ!てか質問するならもっとマシな質問しなさいよ!」
体育の着替え─────
不幸にも聖良と種田さんと水原さんは同じクラスであるので着替えはもちろん、同じ更衣室で行われるのであった。
ここでも種田さんと聖良のストークという名の嫌がらせ────目測や触診によるスリーサイズ当てが行われた(聖良談)。
「う~~~ん、見るからに貧相だとは思ったけど中々だぞ……」
「だいたい上から68–54–77といったところですね」
「うっさいわね!私はこれから伸びるのよ!ていうか種田さんも私と対して体型変わらないじゃないのよ!!」
水原家宅(今ここ)──────
ここではまさにストーカーの本領発揮というところか、種田さんと聖良はあらかじめ家の図面を闇ルートで入手、完璧な角度、完璧な位置、そして完璧な入浴タイムを狙い風呂が覗ける場所に三脚を立て、カメラをセットし待機した。
「普通に犯罪じゃないの。警察に通報するわよ」
「これは覗きではありませんよ、水原 さくら子。貴方はバードウォッチングする人々が犯罪者だとおっしゃるのですか?」
「私を野鳥扱いするのにも腹立つけどあんたたちのは"watch"じゃなくて"peep"じゃないの」
「身体は"poor"だぞ……」
「殺すわよ」
「はぁ」と水原さんは大きくため息をつくとそのまま風呂場の窓際まで近寄り(聖良たちはだいたい窓から1mの位置に陣取っている。え?僕はどこに居るかって?もちろん覗くわけにはいかないから聖良たちの見張りを水原さん家の前でやってるんだよ……)窓を開けると「まだ夕方は冷える時期だから中に入ってちょうだい」と一言だけ言うとそのまま風呂を上がっていった。
正式に水原さんから家に上がる許可が降りたので聖良と種田さんは我が物顔で(僕を置いて)水原さん家へ上がっていった。
「ってちょいちょ~~い!僕を放置すなーーーー!」
「盟友 外で一人で何やってたんだ?もしかして覗きか?通報か?」
「あんたもされる側よ」
水原さんは律儀にお盆にあったかいお茶が入った茶碗を5つ持ってくると僕らの前へ差し出した。
「ところでそのお隣の半裸のやけにぼんきゅっぼんなグラマラス体型が腹立つ女性はどなた?」
「ふ、ふおおおおおお!!!さくら子ちゃんが入れたお茶……身体が火照っちゃうわ!!」
見ると僕の隣に半裸(パンティにブラだけの)の金髪碧眼美女の知らない人が座っていた。
……前半だけならすごい喜ばしい事なんだけど知らない人って付くだけで一気に怖くなるよね。
「この方は……知り得ませんね。多分、野良の変態でしょう」
「なんで普通にうちにいんのよ。通報するわ」
ファンファンファン。
お馴染みのサイレント共に知らない変質者が連れていかれると水原さんはお茶を一口飲み、「さてと」と言って話を切り出した。
「話があんでしょ」
思ってもみなかった言葉が水原さんの口から飛び出したので僕は思わず「えっ」とまるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せてしまった。
僕が戸惑いを隠そうと言葉を探しているうちに聖良が勝手に話を進める。
「さすが、我が組委員と言ったところですね。ご明察の通り、私たちは水原 さくら子に用件が、それはもう重要な用件があって今日一日中ストーカーしていたのです」
「その用件がなんであれストーカーの下りは必要だったのかしらね………」
聖良は「ふぅ」と息をつくと続けた。
「実は私たちと友達になってほしいのです」
「……………………」
僕たちの間に静寂が訪れる。
聖良と僕との間に流れるあの、静寂ではないからか僕の心臓は少しばかり速まった。
「…………それだけ?」
水原さんが沈黙を破りたずねる。
それに聖良はただ「ええ」とだけ言うと首を縦に振った。
この少しの──時間で言えばたった数十秒の間がまるでサッカーのPK戦のように感じる。
その数十秒が終わる時、水原さんは口を開いた。
☆水原 さくら子の返答はいかに!?───────
───────────────────────
【登場人物紹介】
●躑躅森 逢魔
魔王の息子で主人公。
ついにかねてからの夢であった新たなツッコミ役の登場に独白も少し興奮気味。
やったね逢魔ちゃん!ツッコミ役が増えるよ!
●躑躅森 聖良
逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。
当初はボケが居なかったために仕方なくボケ役に徹してもらっていたが段々とボケ役が板に付いてきたのでこれからボケに転向していくかもしれない。
●種田 冬火
厨二病ぼっちコミュ障ちみっ子。
で、あったが今までの応対を見るに内弁慶だと言うことが判明。どこまでいってもダメな子のにおいが辺りに漂う。
●水原 さくら子
二人目の能力持ち少女。
早速カオスな登場人物(主に聖良と冬火)に色々嫌がらせをされてるかわいそうな子。
ちなみに貧相だと馬鹿にされて怒ってるけど現実も貧相でこれからも貧相らしい。
泣くな。貧乳はステータスだ。
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