96 / 131
大内輝弘の乱
鬼に会えば鬼を斬り 仏に会えば仏を斬る
しおりを挟む
その後しばらく杉軍を柵や堀を上手く使い、防戦していた。
だが遂に敵将杉元相が動き出す。
ゆっくりと後方から迫り来る杉元相とその精鋭部隊。
ゆっくりと迫るのは夜でしかも悪天候で周囲が見渡しにくいからである。
ゆっくりと敵に近付いて襲撃をすると敵も驚き、混乱して場合によれば壊滅的被害も受ける。
だが、この戦法は優に気付かれていた。
悪天候のなか、陣から出て戦況を見ていると遠くから変な違和感を感じた。
何かが潜んでいる。何者かが戦場に現れる…そんな予感がした。
優はこの違和感をすぐに杉元相の進軍だと思った。
優は直ぐ様に陣に戻り、小次郎に策を授ける。
「お兄ちゃん!敵が進軍を開始したよ!あたし達に気付かれないようにゆっくりとだけどね。」
「ゆっくりと?てかお前はよく気付いたな…。」
戦場のみんなが気付かないのに優だけが気付いていることを気にする小次郎であったがすぐに優の直感と感じた。
「あ、何となく気付いているでしょ?勘だよ。まぁ1つの賭けだね。これがハズレたら戦況は不利になるだろうね。」
優の作戦の考えは直感…博打的な采配だ。
だが戦とは博打的な要素が沢山あり、一つ間違えると地獄である。
だが、小次郎達には見えない「何か」が優に見えているのも事実である。
小次郎達は優の直感・博打的な采配に自らの命を賭けて出陣する。
小次郎は重い鎧兜を着て馬に乗り、足軽達に大きな声をあげる。
「これより我ら修羅になるっ!鬼に遭えば鬼を斬り、仏に遭えば仏を斬る!狙うは杉元相の首だぁぁぁっっー!」
そう言い放ち、小次郎の部隊は防戦をしている宗信やケン坊の場から離れ、敵が潜んでいると思われる林に走っていく。
その頃、杉元相の軍は林に潜んでいた。
悪天候の中、林に隠れながら大内軍の背後を突くつもりなのだ。
夜でしかも雨が降っている為、相手にも気付かれにくいし何より大内軍は杉軍の第一陣と第二陣と交戦中の為この状況下で杉元相の行動を読む余裕が無いと思い進軍していた。
「恐らく今頃大内輝弘は我らの軍が歯応え無いと思っているだろうな。」
杉元相は馬に騎乗して隣にいる副将と話をしていた。
「はっ…確かに大内輝弘ならそう思うでしょう。」
「確かお前は大内輝弘に仕えていた時期があったよな?お前の目から見ても大内輝弘は愚図だったか?」
杉元相は少し浮かれているのか顔がニヤニヤしていた。
「大内輝弘は味方が優勢であるときは積極的に動くお調子者です。劣勢だと怖くてまともに頭が動かなくなる様なヘタレで、とても大内義隆様の意志を継ぐの無理かと…。ただ容姿だけは大内家の血筋なのか男前でカッコ良いです。」
「男前でカッコいい」という言葉に少し羨ましそうな顔をする杉元相。
「ふんっ…いくら男前でも武将らしく堂々と戦わねば良い顔が勿体無い…。奴は良い顔かも知れんが良い男では無いな」
そう杉元相が笑い飛ばすと周りの兵士も笑う。
実はこれ、今から大内軍の背後に周りこみ攻めるのだが、大内の名に怯んでいるのか、やけに緊張している兵士が多く、その和らげるために言った杉元相の心遣いである。
杉元相は数々の戦いを経験した勇将なだけあって兵士の心理面を気遣っている。
そして、兵士も杉元相がそんな大将だというのを分かっている。
杉元相とその兵士は大内家臣時代からの兵が多く、彼らは固い絆で結ばれた軍団で鉄の絆と言われた部隊である。
だが、そんな部隊に動揺が広がった。
前から何やら激しい音がするのである。
「何なんだ…この音は?」
しばらくすると大きな鎧兜を着た馬上槍をした武将と後ろから付いてきている足軽が現れる。
「…ッ!?まさかあの鎧兜は義隆様ッ!?」
杉元相が思った様な事を杉軍の兵士も思った。
思うだけならまだしも杉軍の兵士は立ち止まり唖然としていた。
体格といい立ち振舞いといい、どこからどう見ても大内義隆ソックリなのである。
足軽達は「大内義隆様が生きていたっ?」と思い杉軍は次第にざわざわし、動揺が全面に出た。
ヤバい…このままでは壊滅しまう。
そう思った杉元相は鎧兜を着た武者に目掛けて弓矢を放つ。
そして鎧兜を着た小次郎に杉元相が射た矢が飛んで来る。
だが小次郎の馬術が下手なせいで馬が暴れており、上手いこと矢はハズレた。
「ちょっ…!この馬暴れすぎだろ…っ!馬上槍してんだから落馬してしまうだろうが…。」
そうは言うがさっきの矢は馬が暴れたお陰で避けることが出来たのである。
馬が暴れていなかったら小次郎の馬術では避けることが出来ず射抜かれていただろう。
弓矢を外した杉元相は再び弓矢を持つ。
「後ろの足軽が来る前にこの鎧武者を射ぬけ!」
そう全兵に言うが小次郎の馬が異常なまでの暴れ馬だった為、兵は怯んでいる。
暴れ馬に乗っている小次郎も意外と良い感じに槍を振るえている。
「元相様は…アレはもしかして…。」
「ああ…馬乗暴れという奴だな。気性の荒い馬を上手く扱い、その馬に上で槍を振るう。最強の馬上槍よ…。」
馬乗暴れという武術は実際には存在しないが、稀に馬を上手く扱う槍の名手が馬上で暴れるかの如くの槍さばきをすることが有り、杉元相はそれを『馬乗暴れ』と言った。
だが小次郎の馬上槍の仕方も知らない素人で、ただ適当に槍を振っているだけである。
それが馬の暴れっぷりのお陰で敵兵を薙ぎ払えているのである。
そしてこの戦法の凄さに小次郎は欲を出した。
本来なら足軽が来るまで適当に馬乗暴れをして敵を蹴散らせば良いだけなのだが、敵将杉元相も討ち取ろうと思った。
「行ける…!イケる…!この勢い…流れに沿って敵将を討つっ…!」
小次郎は暴れる馬を上手く扱い杉元相を馬乗暴れの餌食にさせに行く。
だが遂に敵将杉元相が動き出す。
ゆっくりと後方から迫り来る杉元相とその精鋭部隊。
ゆっくりと迫るのは夜でしかも悪天候で周囲が見渡しにくいからである。
ゆっくりと敵に近付いて襲撃をすると敵も驚き、混乱して場合によれば壊滅的被害も受ける。
だが、この戦法は優に気付かれていた。
悪天候のなか、陣から出て戦況を見ていると遠くから変な違和感を感じた。
何かが潜んでいる。何者かが戦場に現れる…そんな予感がした。
優はこの違和感をすぐに杉元相の進軍だと思った。
優は直ぐ様に陣に戻り、小次郎に策を授ける。
「お兄ちゃん!敵が進軍を開始したよ!あたし達に気付かれないようにゆっくりとだけどね。」
「ゆっくりと?てかお前はよく気付いたな…。」
戦場のみんなが気付かないのに優だけが気付いていることを気にする小次郎であったがすぐに優の直感と感じた。
「あ、何となく気付いているでしょ?勘だよ。まぁ1つの賭けだね。これがハズレたら戦況は不利になるだろうね。」
優の作戦の考えは直感…博打的な采配だ。
だが戦とは博打的な要素が沢山あり、一つ間違えると地獄である。
だが、小次郎達には見えない「何か」が優に見えているのも事実である。
小次郎達は優の直感・博打的な采配に自らの命を賭けて出陣する。
小次郎は重い鎧兜を着て馬に乗り、足軽達に大きな声をあげる。
「これより我ら修羅になるっ!鬼に遭えば鬼を斬り、仏に遭えば仏を斬る!狙うは杉元相の首だぁぁぁっっー!」
そう言い放ち、小次郎の部隊は防戦をしている宗信やケン坊の場から離れ、敵が潜んでいると思われる林に走っていく。
その頃、杉元相の軍は林に潜んでいた。
悪天候の中、林に隠れながら大内軍の背後を突くつもりなのだ。
夜でしかも雨が降っている為、相手にも気付かれにくいし何より大内軍は杉軍の第一陣と第二陣と交戦中の為この状況下で杉元相の行動を読む余裕が無いと思い進軍していた。
「恐らく今頃大内輝弘は我らの軍が歯応え無いと思っているだろうな。」
杉元相は馬に騎乗して隣にいる副将と話をしていた。
「はっ…確かに大内輝弘ならそう思うでしょう。」
「確かお前は大内輝弘に仕えていた時期があったよな?お前の目から見ても大内輝弘は愚図だったか?」
杉元相は少し浮かれているのか顔がニヤニヤしていた。
「大内輝弘は味方が優勢であるときは積極的に動くお調子者です。劣勢だと怖くてまともに頭が動かなくなる様なヘタレで、とても大内義隆様の意志を継ぐの無理かと…。ただ容姿だけは大内家の血筋なのか男前でカッコ良いです。」
「男前でカッコいい」という言葉に少し羨ましそうな顔をする杉元相。
「ふんっ…いくら男前でも武将らしく堂々と戦わねば良い顔が勿体無い…。奴は良い顔かも知れんが良い男では無いな」
そう杉元相が笑い飛ばすと周りの兵士も笑う。
実はこれ、今から大内軍の背後に周りこみ攻めるのだが、大内の名に怯んでいるのか、やけに緊張している兵士が多く、その和らげるために言った杉元相の心遣いである。
杉元相は数々の戦いを経験した勇将なだけあって兵士の心理面を気遣っている。
そして、兵士も杉元相がそんな大将だというのを分かっている。
杉元相とその兵士は大内家臣時代からの兵が多く、彼らは固い絆で結ばれた軍団で鉄の絆と言われた部隊である。
だが、そんな部隊に動揺が広がった。
前から何やら激しい音がするのである。
「何なんだ…この音は?」
しばらくすると大きな鎧兜を着た馬上槍をした武将と後ろから付いてきている足軽が現れる。
「…ッ!?まさかあの鎧兜は義隆様ッ!?」
杉元相が思った様な事を杉軍の兵士も思った。
思うだけならまだしも杉軍の兵士は立ち止まり唖然としていた。
体格といい立ち振舞いといい、どこからどう見ても大内義隆ソックリなのである。
足軽達は「大内義隆様が生きていたっ?」と思い杉軍は次第にざわざわし、動揺が全面に出た。
ヤバい…このままでは壊滅しまう。
そう思った杉元相は鎧兜を着た武者に目掛けて弓矢を放つ。
そして鎧兜を着た小次郎に杉元相が射た矢が飛んで来る。
だが小次郎の馬術が下手なせいで馬が暴れており、上手いこと矢はハズレた。
「ちょっ…!この馬暴れすぎだろ…っ!馬上槍してんだから落馬してしまうだろうが…。」
そうは言うがさっきの矢は馬が暴れたお陰で避けることが出来たのである。
馬が暴れていなかったら小次郎の馬術では避けることが出来ず射抜かれていただろう。
弓矢を外した杉元相は再び弓矢を持つ。
「後ろの足軽が来る前にこの鎧武者を射ぬけ!」
そう全兵に言うが小次郎の馬が異常なまでの暴れ馬だった為、兵は怯んでいる。
暴れ馬に乗っている小次郎も意外と良い感じに槍を振るえている。
「元相様は…アレはもしかして…。」
「ああ…馬乗暴れという奴だな。気性の荒い馬を上手く扱い、その馬に上で槍を振るう。最強の馬上槍よ…。」
馬乗暴れという武術は実際には存在しないが、稀に馬を上手く扱う槍の名手が馬上で暴れるかの如くの槍さばきをすることが有り、杉元相はそれを『馬乗暴れ』と言った。
だが小次郎の馬上槍の仕方も知らない素人で、ただ適当に槍を振っているだけである。
それが馬の暴れっぷりのお陰で敵兵を薙ぎ払えているのである。
そしてこの戦法の凄さに小次郎は欲を出した。
本来なら足軽が来るまで適当に馬乗暴れをして敵を蹴散らせば良いだけなのだが、敵将杉元相も討ち取ろうと思った。
「行ける…!イケる…!この勢い…流れに沿って敵将を討つっ…!」
小次郎は暴れる馬を上手く扱い杉元相を馬乗暴れの餌食にさせに行く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる