シカノスケ

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大内輝弘の乱

軍師とは

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大雨の中、一目散に山の頂上を目指して進軍する杉元相の軍は大雨を味方に付けて、進軍がバレない様に音を立てず、しかし迅速に山をかけ上がる。


基本的に戦いとは上を取った方が有利である。


だが、この大雨で視界が悪く、敵の進軍が分かりにくい為、小次郎達はやや不利である。




しかし小次郎達は視界が悪くても杉元相の動きが分かっていた。


直感で動く勇将タイプの武将は知略を用いずに勢いで敵陣を崩す戦いが多い。


そういう武将には罠や策を打ち崩す得体の知れない不気味さがある。


なら真正面から戦いをする。

これは優の考えた戦い方である。


知将には知略で勝負し、勇将には勇ましく戦う。






「優の言った通り、真正面から攻めてきたな…。」


小次郎は優の鋭さに感服した。

1度も会ったこと無い武将なのに戦歴だけで真正面から来ると感じ取ったのだ。




もし敵の動きを読むことに失敗したら悪天候の中、敵は別の道から山の頂上に行き、小次郎達は間違いなく全滅していたであろう。


自らの命を賭けた文字通りの『命賭けの大博打』であった。



まずは敵の動きを読むことに成功した小次郎達は次に進軍してくる杉元相を相手に戦うのだが、まずは攻めて来る杉軍を予め作っておいた柵や堀を使い防戦する。



これはいうなら時間稼ぎである。


杉元相は部隊を三つ分けて布陣しており、恐らく大将は一番後ろの第三陣にいる。

敵の第一陣の部隊と第二陣の部隊を柵と堀で進軍させにくくさせて弓矢を放って戦うのだ。


そして最後に動く第三陣に奇襲を掛けるのだ。



しかしこれはあくまでもこちらの思うように動いた場合はだ。


もし何かあっても小次郎は優に策を授けてもらい戦うのだ。







この時、小次郎はふと思った。

軍師とは心強いと。


戦国時代に合戦巧者と呼ばれた武将は数多くいるが策を考える事だけに特化した軍師というのは実は物凄く少ない。





戦国時代には15人軍師がいると言われている。

今川義元の軍師である太原雪斎

武田信玄の軍師山本勘助

上杉謙信の軍師宇佐美定満

大友宗麟の軍師角隅石宗

豊臣秀吉の軍師竹中半兵衛と黒田官兵衛

筒井順慶・石田三成の軍師島左近

伊達政宗の軍師片倉景綱

上杉景勝の軍師直江兼続

島津忠良の軍師岩切善信

島津義久の軍師川田義郎

北条氏康の軍師多目元忠

龍造寺隆信の軍師鍋島直茂

津軽為信の軍師沼田祐光

宇喜多秀家の軍師明石全登





戦国に知将・策士と呼ばれる将は沢山いるが『軍師』と世間から認識されているのはたったのこれだけである。


なぜ『軍師』と呼ばれる者がこんなに少ないかと言うと恐らく『信頼』の問題である。


『軍師』と呼ばれるものは軍事行動の最高責任者とも言われる者である。

あくまで『軍事』は大名の家臣だが兵は『軍師』を信頼して戦うのだ。


その『軍師』が信頼出来ない人間だったら、『軍師』によって大名家が滅ぼされるであろう。




先に上げた武将はいずれも大名の忠実な家臣で野心を持たず、主に忠義を尽くしたから『軍師』と言われたのである。











さて、杉元相の第一陣は早くも目の前の堀にまでやって来た。



そして第一陣に続いて第二陣も攻めてきた。



柵や堀が有る為、ある程度戦えるが敵の士気が高いから怯まずに攻めてくる。



だが、そんな敵に恐れずに秋上宗信は前線に立ち、弓矢を射つ。


「皆さん、手前の敵を狙ってください!遠くにいる敵は私が射ぬきます。」


宗信は足軽達に指示を出した。


弓の精度が低い足軽達に近くの敵を狙わせ、弓の名手である宗信は遠くから来る敵の部隊長を狙う。



そしてケン坊は前線で槍を振るう。


ケン坊には兵を統率する能力が無く、槍足軽として敵兵を討ち取っている。



敵の第三陣が来るまでしばらく小次郎は戦う事はない為、椅子に座り少し休憩をしていた。


「ムネリンとケン坊くん凄い活躍だよねー。」


いきなり優が現れ、一瞬「ビクッ」とした。


「まあ宗信が弓の達人なのは前から知っているが、ケン坊があそこまで槍を使えるとは思わなかったよ。」


そう、ケン坊はお調子者でテンション高いし、変態で女好き…どこをどう見てもただの下品な足軽にしか見ないのにこの槍働き。

人は見た目じゃ分からないとはこの事である。



「何言ってんの?ケン坊くんは普段から武芸しているじゃん。」


それは知っている。だが、奴の動きは戦い慣れている人の動きだ。



恐らく農民だから毛利に徴兵されて合戦に何度か出たのであろう。


だが、これほどの槍働きの者を大将が放っておくだろうか。


多分…ケン坊は何かがあって毛利に仕えなかったんだ…。





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