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大内輝弘の乱
毛利の勇将
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茶臼山付近は雨雲に包まれ次第に雨が降ってきた。
そして、この茶臼山に兵を進めている立派な髭を生やしている中年の武将がいた。
毛利軍の杉元相である。
杉元相は周防の名族杉氏の一門で元は大内義隆の家臣であった。
つまり大内家の遺臣なのだが、今は毛利に臣従しており、今回の大内輝弘の乱には加担するつもりは無いのである。
そして杉元相は毛利家中での発言力を強めるべく、今回の反乱を鎮圧するつもりである。
そして杉元相の元に吉川元春から書状が届いた。
その内容は『三日後に茶臼山に我らと共に突撃して大内軍を壊滅する』という内容であった。
杉元相はこの書状に書いてある通りに動いても吉川元春の手柄にしかならないと思い独断で500の兵を率いて大内輝弘軍がいる茶臼山に進軍していた。
吉川元春の命令を無視して行動する杉元相に兵は困惑している。
「元相様、この天候の中で茶臼山に攻撃をしても返り討ちに遭うだけと思いますが…!」
実は兵は杉元相を信用していない。
そもそも杉元相は大内義隆の配下の頃は勇将と言われていたが毛利元就の配下になってからはあまり武功を立てていないのである。
たまに武功を立てても吉川元春や小早川隆景、他の譜代の毛利家臣に比べると見劣りするのである。
杉元相のこの軍事違反は兵達に信用される為に必要な違反なのである。
吉川元春の命令無しでも自分の力だけで敵を壊滅出来るぞ…というのを兵に見せつけたいのである。
しかし、その行動こそが兵が困惑し、部下から信頼されないところと本人は気付いていなかった。
「みんな怯むな!吉川や小早川が居なくても我ら杉軍で倒すのだ!」
杉元相は必死に味方を鼓舞し、雨が強まる中進軍をする。
そして杉元相が茶臼山に進軍をしている頃、小次郎達は茶臼山の大内軍の陣に着いていた。
大内軍を見る限り連戦連敗のせいで士気が下がっており兵の数も300くらいであった。
取り敢えず明日香が大内の兵から大内輝弘に取り次いでもらった為、簡単に大内輝弘に面会が叶った。
大内輝弘はすぐに小次郎達の元に現れた。
「明日香殿・・・戦場までわざわざご苦労様です。」
背は小次郎と同じくらいで170センチ前後で戦国時代の男にしては大柄だ。
顔は整っており、いわゆるイケメンである。
「久しぶりだね輝弘くん。」
意外にも明日香は輝弘に対してため口であった。
「尼子は大内を受け入れるつもりだから出雲に行こうよ。」
「いや…でも尼子は仇敵だし、我が家臣もそれに付き従うか分かりません。」
自信の無い表情で大内輝弘は周りを見る。
大内輝弘を見た小次郎・宗信・ケン坊は悟った。
『こいつでは大将は務まらない』と。
「おい!大内輝弘とやら。家臣がどうだろうとお前さえ生きてりゃ大内は再起出来るんだ。明日香のいう通りに出雲に来い。」
このときの小次郎は自信の無い輝弘を見ているとイライラしていた。
それに対し輝弘は少し小次郎にビックリしたが、その後に『うん。そうだな。』と言って全軍に出雲行きを伝えた。
出雲行きが決まって兵は少し驚いたが、その後に不安の声が上がった。
『出雲に向かう道中には杉元相の軍がいる』と不安の声を出した。
大内の兵に聞いたところ杉元相は元大内家臣ながら今回の反乱の誘いに乗らず、飛躍を遂げる毛利の元で出世をする為、周防で連戦連敗の大内輝弘の追撃部隊長となったらしい。
そして、背後には九州から撤退した吉川元春の軍が迫っていることも聞いた。
普通に考えたら絶望の状況である。
大内輝弘も絶対絶命と思っており自害を考えていたという。
しかし、優と宗信だけは何とかなると考えていた。
「なるほどねー。杉って人はどうしても武功を立てたいんなら今日すぐにでも攻めてくるね。」
「吉川軍も距離からしてまだまだ先ですし、杉軍だけならこの山に誘き寄せて殲滅出来ますね。」
軍議をしていて前向きな考えをしたのはこの二人だけであった。
「杉って人が今日攻めてくるのは1日も早く反乱を鎮圧したいから。それと輝弘さんを生け捕りにしたいからだよ。自害だと自分で討ち取ったという感じもしないし、毛利家中も納得しないだろうしね。」
優の言うとおり毛利家中は納得しないだろう。
毛利家は大内旧臣の台頭を恐れているのかあまり評価をしていない。
毛利元就は少年時代は家中を井上一族に支配されて城を追い出されていた過去がある。
そういった苦い過去の経験から信用できない者には評価をしないのだ。
そして毛利家に昔から仕えている譜代家臣に褒美をやり、毛利家の家臣団の絆を築いてきた。
「そしてこの茶臼山は見通しが良い山です。天候の悪い今日でも東の方は見通しが良いです。山の割には木が少なくゲリラ戦はしにくいですが、簡素な砦を作って軽く罠を仕掛けるだけで敵の動きを鈍くさせれます。そこを奇襲するのです。」
山から下を見下ろす際に邪魔な木が少なく、下から来る敵兵を見付けやすい為、地の利では有利。
だが、一気に勝負を決めないと長期戦になると背後から来る吉川軍に囲まれる為、宗信は奇襲を提案した。
大内輝弘はこの策を受け入れ、早速罠を作ることにした。
そして、この茶臼山に兵を進めている立派な髭を生やしている中年の武将がいた。
毛利軍の杉元相である。
杉元相は周防の名族杉氏の一門で元は大内義隆の家臣であった。
つまり大内家の遺臣なのだが、今は毛利に臣従しており、今回の大内輝弘の乱には加担するつもりは無いのである。
そして杉元相は毛利家中での発言力を強めるべく、今回の反乱を鎮圧するつもりである。
そして杉元相の元に吉川元春から書状が届いた。
その内容は『三日後に茶臼山に我らと共に突撃して大内軍を壊滅する』という内容であった。
杉元相はこの書状に書いてある通りに動いても吉川元春の手柄にしかならないと思い独断で500の兵を率いて大内輝弘軍がいる茶臼山に進軍していた。
吉川元春の命令を無視して行動する杉元相に兵は困惑している。
「元相様、この天候の中で茶臼山に攻撃をしても返り討ちに遭うだけと思いますが…!」
実は兵は杉元相を信用していない。
そもそも杉元相は大内義隆の配下の頃は勇将と言われていたが毛利元就の配下になってからはあまり武功を立てていないのである。
たまに武功を立てても吉川元春や小早川隆景、他の譜代の毛利家臣に比べると見劣りするのである。
杉元相のこの軍事違反は兵達に信用される為に必要な違反なのである。
吉川元春の命令無しでも自分の力だけで敵を壊滅出来るぞ…というのを兵に見せつけたいのである。
しかし、その行動こそが兵が困惑し、部下から信頼されないところと本人は気付いていなかった。
「みんな怯むな!吉川や小早川が居なくても我ら杉軍で倒すのだ!」
杉元相は必死に味方を鼓舞し、雨が強まる中進軍をする。
そして杉元相が茶臼山に進軍をしている頃、小次郎達は茶臼山の大内軍の陣に着いていた。
大内軍を見る限り連戦連敗のせいで士気が下がっており兵の数も300くらいであった。
取り敢えず明日香が大内の兵から大内輝弘に取り次いでもらった為、簡単に大内輝弘に面会が叶った。
大内輝弘はすぐに小次郎達の元に現れた。
「明日香殿・・・戦場までわざわざご苦労様です。」
背は小次郎と同じくらいで170センチ前後で戦国時代の男にしては大柄だ。
顔は整っており、いわゆるイケメンである。
「久しぶりだね輝弘くん。」
意外にも明日香は輝弘に対してため口であった。
「尼子は大内を受け入れるつもりだから出雲に行こうよ。」
「いや…でも尼子は仇敵だし、我が家臣もそれに付き従うか分かりません。」
自信の無い表情で大内輝弘は周りを見る。
大内輝弘を見た小次郎・宗信・ケン坊は悟った。
『こいつでは大将は務まらない』と。
「おい!大内輝弘とやら。家臣がどうだろうとお前さえ生きてりゃ大内は再起出来るんだ。明日香のいう通りに出雲に来い。」
このときの小次郎は自信の無い輝弘を見ているとイライラしていた。
それに対し輝弘は少し小次郎にビックリしたが、その後に『うん。そうだな。』と言って全軍に出雲行きを伝えた。
出雲行きが決まって兵は少し驚いたが、その後に不安の声が上がった。
『出雲に向かう道中には杉元相の軍がいる』と不安の声を出した。
大内の兵に聞いたところ杉元相は元大内家臣ながら今回の反乱の誘いに乗らず、飛躍を遂げる毛利の元で出世をする為、周防で連戦連敗の大内輝弘の追撃部隊長となったらしい。
そして、背後には九州から撤退した吉川元春の軍が迫っていることも聞いた。
普通に考えたら絶望の状況である。
大内輝弘も絶対絶命と思っており自害を考えていたという。
しかし、優と宗信だけは何とかなると考えていた。
「なるほどねー。杉って人はどうしても武功を立てたいんなら今日すぐにでも攻めてくるね。」
「吉川軍も距離からしてまだまだ先ですし、杉軍だけならこの山に誘き寄せて殲滅出来ますね。」
軍議をしていて前向きな考えをしたのはこの二人だけであった。
「杉って人が今日攻めてくるのは1日も早く反乱を鎮圧したいから。それと輝弘さんを生け捕りにしたいからだよ。自害だと自分で討ち取ったという感じもしないし、毛利家中も納得しないだろうしね。」
優の言うとおり毛利家中は納得しないだろう。
毛利家は大内旧臣の台頭を恐れているのかあまり評価をしていない。
毛利元就は少年時代は家中を井上一族に支配されて城を追い出されていた過去がある。
そういった苦い過去の経験から信用できない者には評価をしないのだ。
そして毛利家に昔から仕えている譜代家臣に褒美をやり、毛利家の家臣団の絆を築いてきた。
「そしてこの茶臼山は見通しが良い山です。天候の悪い今日でも東の方は見通しが良いです。山の割には木が少なくゲリラ戦はしにくいですが、簡素な砦を作って軽く罠を仕掛けるだけで敵の動きを鈍くさせれます。そこを奇襲するのです。」
山から下を見下ろす際に邪魔な木が少なく、下から来る敵兵を見付けやすい為、地の利では有利。
だが、一気に勝負を決めないと長期戦になると背後から来る吉川軍に囲まれる為、宗信は奇襲を提案した。
大内輝弘はこの策を受け入れ、早速罠を作ることにした。
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