シカノスケ

大内輝弘の乱

商人の娘

そして、いつの間にか時間は過ぎて夕食の時間になった。


小次郎達は食事をする部屋へと連れて来られた。

その部屋には食事が既に用意されており、すぐに食事ができる状態であった。


５人は皆それぞれの席に座り食事を始める。


｢ところで明日関所を通る時どうするんだ？｣


小次郎が食事を取りながら聞く。

｢えっ！？関所って普通に通るんじゃないんですか？｣

普通じゃない奴が普通に通るなんて言っているが、自分が変だとは思わないのだろうか？


｢お前が普通じゃないから通れないだろ。刀はまだしも弓は関所の奴らに誤魔化すのがキツいだろ。それに巫女の服も怪しいし…｣


｢わたしが普通じゃないってことですか？今までそんな事を言われたことないんですが…｣


そりゃあ自国なら言われないだろうがな…。


｢その事に関してはあたしが既に対策しているよ。｣

明日香が横から口を出す。何やら余裕のある面構えだ。


｢前にあった原手合戦で石見銀山の城主が討ち死にしたから新しい城主になったみたいなんだけど、今の城主は尼子に従属の姿勢を見せているんだよね…。だから賄賂を渡して大目に見てもらえると思う。｣


部屋がシーンと静かになった。

『賄賂』か。そういや明日香は商人の娘だったな。

恐らくこの手の汚い買収は今まで腐るほどやっているだろう。


小次郎は明日香に一目惚れしていたからか、少し明日香に幻滅をした。



まぁ一番好きなのは宗信なんだが…。





「まぁ商人は色んな大名家や武将に賄賂を普通にするッスよね。商いの人脈を作る為ッスから｣

シーンとしていた空気を消したのはケン坊だった。

ケン坊がそう言ったお陰で、また部屋の雰囲気が良くなった。







この日、俺達は酒を飲んで夜更かしをした。




そして次の日、眠いのに朝早くに起こされた。


｢小次郎さーん！起きてくださいですー。早く出発しなきゃなんです｣


宗信に叩き起こされた小次郎はアクビをして起き上がる。


｢まだ出るには早いだろ…つか眠い…寝させろ。｣

そしてまた布団に入り寝ようとする。


｢実はですね、明日香さんが商人仲間から聞いたらしいんですが大内輝弘が毛利の大軍に負けて敗走しているらしいです。｣


その言葉を聞き、小次郎は慌てて布団から出る。


｢ヤバイな…大内輝広が負けた。てこと下手したら自害する…。｣

｢そうです。早く用意して大内さんが自害する前に出会わなければなりません。｣



よく見たら、宗信以外は大急ぎで出発の準備をしていた。


特に明日香は関所を通る為に必要な金銭や商品をチェックしていた。


大内輝弘が死ぬと大内家遺臣の兵力を使って毛利と戦えなくなる。




５人みんな準備が済んだら、すぐに宿屋を出て関所に向かう。



険しい山道を早足で進み、ようやく関所に着くと門番が現れる。


｢ここを通りたいのならば城主に許可を貰わなければならないのを知っているか？｣


｢知っています。行商の明日香と言えばすぐに分かるはずです。｣


少し焦り気味に言った明日香。

明日香も鹿之介の約束を破るのが嫌な為、かなり焦っている。


｢わ、分かった。すぐに城主様と会っていただこう。｣

そういうと門番はすぐに屋敷の奥に引っ込んでいった。


しばらく…５分くらい経つと別の男が現れる。


まだ若い…小次郎と同い年くらいだろうか。


｢久しぶりだな、明日香。｣


その男は整った顔立ちで好青年という感じであった。

正直、小次郎とは性格は合いそうに無いタイプである。



｢では城主様にこちらをお渡しします。｣


明日香はそう言うと金銭と南蛮物のお菓子や書物を渡す。


それを受け取り、城主は｢行け｣と言った。


どうやらこの二人の間では何か賄賂を渡したら自由に関所を通らせてもらえるみたいである。


小次郎達は特に怪しい物を持っているかなんて聞かれなかった。


これが商人の強み。


俺達はこうしてラクに石見銀山の関所を通り、下関に向かう。