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不死鳥の如く
毛利の知将天野隆重の策
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城を包囲して10日目。
ここまで天野隆重も秋上宗信も積極的に戦闘をしておらず、どちらも持久戦に持ち込んでいる。
とは言え、月山富田城の兵糧はそろそろ尽きる。
それに月山富田城城代の天野隆重は毛利の援軍が遅いため苛立っている。
城を完全に包囲され、月山富田城には毛利元就からの連絡が来ないため、外の状況・情報が全く分からない為、兵の士気が低く、秋上宗信に投降している兵もいる。
その為、天野隆重は兵数が少ないこの圧倒的劣勢の中、勝利という道を作る為、城主毛利元秋と策を練っていた。
この毛利元秋とは毛利元就の五男で、元就の孫輝元の1歳年上である。
「若、そろそろ兵糧が尽きかけています。何処かで秋上隊に攻撃を仕掛けて、この包囲を解かなければ我々は飢え死にですぞ!」
「う、うむ…。だが兵がいくらなんでも少なすぎる…。まともに戦ったら全滅するだろう…。」
毛利元秋はいかにも弱々しく、自信無さげにいう。
その時、天野隆重はある作戦を閃いた…が、あまり良い作戦では無いのか表情が暗い。
「若、これはどうです?1つの賭けですが…。」
「言ってみろ…。」
「秋上宗信に嘘の降伏の書状を送るのです。毛利本隊が来る前に尼子も出雲平定をしたいはずですから、この話に乗ってくる思います。そして、無警戒で城に近付く秋上軍を指定の場所に誘き寄せ奇襲をする。」
良い策である。元秋は前から天野の事を知将だと思っていたが、改めて凄い武将と思った。
「良い案じゃないか!これで秋上を撃退すれば輝元の阿呆より優れた事になる!」
元秋は年の近い輝元をライバル視している。
同じ一門でお互いまだ若く戦功がほとんど無いため、輝元より少しでも戦功を挙げたいと思っている。
「ちなみに失敗したら全滅の恐れがあります…。ただ、私はリスクを承知でやるべきだと思います。」
「な…!全滅の可能性だと?ちなみに成功確率は?」
急に不安になる元秋は気分が一気に暗くなる。
「お人好し秋上宗信の人柄を考えれば作戦成功率は8割でしょう。奴に知略の長けた家臣がいなれば…ですが。」
宗信のお人好しな性格は敵国の武将に知られており、敵将からは戦いやすい相手と思われている。
「俺も奴の性格なら聞いたことあるぞ。なかなかの阿呆みたいじゃないか。…ならお前の作戦で秋上隊を粉砕しようか。」
元秋がそう言うと天野は紙と筆を用意して書状を書く。
そしてそれを兵士に尼子に届けるように言った。
天野隆重の降伏の書状はその日、すぐに尼子方に届いた。
だがその書状は宗信の部隊ではなく、横道秀綱の兵に渡っていた。
そして、その書状を秀綱は読んだ。
そこには確かに降伏すると書かれてあった。
今の尼子としては早く月山富田城を落として出雲平定に力を入れたい。
だが、この降伏の書状が胡散臭い。
天野隆重とは大内義興に仕えていた時代から反尼子の姿勢を崩していない。
そんな男が今さら降伏をするだろうか?
しかし、早く月山富田城を落としたい。…となるとこの書状の内容を信じるしかないのか?
秀綱は考えれば考える程相手の術中にハマっている気がしていけない。
取り敢えず宗信に見せる前に小次郎に見せてから改めて考えようと思い、秀綱は小次郎の陣に行く。
小次郎の陣に着いた秀綱は早速近くにいた優に声をかける。
「おい、小次郎はどこだ?大事な話があるんだが。」
いかにも真剣な表情の秀綱を見て優はただならぬ予感がした。
恐らく、戦況が大きく変わる…そんな予感がした。
「…あ、すぐ呼びまーす。」
しばらくすると小次郎が現れる。
寝不足なのか物凄く眠たそうな顔をしてやって来る。
「なんだ?俺眠いんだけど…。」
「重要な話があるんだ。ここで話するのはマズイから、この前の寺で話す。後で来てくれ。」
眠そうな顔をしながら寺に来る小次郎。恐らく、夜遅くまで起きてケン坊と話していたんだろう。
小次郎はボヘーとした顔で座る。
「んで重要な話って何よ?降伏か?」
「その通りだ。さっき私の部隊の兵が書状を受け取ってな。宗信に渡す前にまずお前に見せておきたかった。」
それを聞くなり、この展開を待っていたと言わんばかり顔に輝きを取り戻す小次郎。
さっきの睡眠不足な顔が嘘のように輝いて見える。
「俺はこの合戦の行く末を知っている。そして、天野隆重に偽の書状を送られて指定の場所に誘い出され奇襲を喰らう…。これが俺の知っているこの合戦の結末だ。」
「という事はその奇襲さえ防げば勝利に近付くんだな。」
秀綱の表情にも輝きが出てきた。
この合戦の終わりが見えてきたのだろうか。
少なくとも相手の奇襲を返り討ちにさえすれば相手の士気はドン底になる。
完全なる戦意喪失で勝ちは確定的となる。
だが、相手もこの奇襲が失敗したら負けることが分かっているはず。
間違いなく死に物狂いで攻めてくるだろう。
「取り敢えずこの事は宗信には伏せておこう。アイツが来たら簡単には敵の事を信じてしまい負けるぞ。」
相手の事を簡単に信じてしまうお人好しの宗信は武将としては優秀だが大将としては頼りない。
その為、この作戦は宗信に知らせずにやろうと考える。
「私の部隊とお前の部隊で400人いたら大丈夫だろう。」
「ところで敵はどこに来いと言っているんだ?」
秀綱は地図に印を付ける。
「この辺だな。」
秀綱が印を付けた場所は敵の懐であった。
指定された場所はまさに敵地のど真ん中である。
「こんなところに呼ぶのかよ…!」
指定された場所を見て少し動揺する小次郎。
「書状には兵糧が切れて空腹で動けないものがいるから出来るだけ城に近づいて兵糧もくださいと書いてあるが…どうみても嘘くさい。」
「どうしても誘い出して奇襲をしたいと見てとれるよな。恐らく連中も後がないと思ってなりふり構わず何としてでも奇襲を仕掛けたいみたいだな。ならお望み通り敵地に行こうじゃないか…!」
そう言うと立ち上がり、自分の陣地に戻ろうとする。
「おい、明日の昼に来いって掛かれているのに大丈夫なのか?普通は奇襲って夜がやり易いのに昼間に呼んでるだぞ?なんか怪しくないか?」
それを聞けば確かに怪しい。だが、そんな事は心配ない。
罠とかあるのは分かりきっている。
ここまで天野隆重も秋上宗信も積極的に戦闘をしておらず、どちらも持久戦に持ち込んでいる。
とは言え、月山富田城の兵糧はそろそろ尽きる。
それに月山富田城城代の天野隆重は毛利の援軍が遅いため苛立っている。
城を完全に包囲され、月山富田城には毛利元就からの連絡が来ないため、外の状況・情報が全く分からない為、兵の士気が低く、秋上宗信に投降している兵もいる。
その為、天野隆重は兵数が少ないこの圧倒的劣勢の中、勝利という道を作る為、城主毛利元秋と策を練っていた。
この毛利元秋とは毛利元就の五男で、元就の孫輝元の1歳年上である。
「若、そろそろ兵糧が尽きかけています。何処かで秋上隊に攻撃を仕掛けて、この包囲を解かなければ我々は飢え死にですぞ!」
「う、うむ…。だが兵がいくらなんでも少なすぎる…。まともに戦ったら全滅するだろう…。」
毛利元秋はいかにも弱々しく、自信無さげにいう。
その時、天野隆重はある作戦を閃いた…が、あまり良い作戦では無いのか表情が暗い。
「若、これはどうです?1つの賭けですが…。」
「言ってみろ…。」
「秋上宗信に嘘の降伏の書状を送るのです。毛利本隊が来る前に尼子も出雲平定をしたいはずですから、この話に乗ってくる思います。そして、無警戒で城に近付く秋上軍を指定の場所に誘き寄せ奇襲をする。」
良い策である。元秋は前から天野の事を知将だと思っていたが、改めて凄い武将と思った。
「良い案じゃないか!これで秋上を撃退すれば輝元の阿呆より優れた事になる!」
元秋は年の近い輝元をライバル視している。
同じ一門でお互いまだ若く戦功がほとんど無いため、輝元より少しでも戦功を挙げたいと思っている。
「ちなみに失敗したら全滅の恐れがあります…。ただ、私はリスクを承知でやるべきだと思います。」
「な…!全滅の可能性だと?ちなみに成功確率は?」
急に不安になる元秋は気分が一気に暗くなる。
「お人好し秋上宗信の人柄を考えれば作戦成功率は8割でしょう。奴に知略の長けた家臣がいなれば…ですが。」
宗信のお人好しな性格は敵国の武将に知られており、敵将からは戦いやすい相手と思われている。
「俺も奴の性格なら聞いたことあるぞ。なかなかの阿呆みたいじゃないか。…ならお前の作戦で秋上隊を粉砕しようか。」
元秋がそう言うと天野は紙と筆を用意して書状を書く。
そしてそれを兵士に尼子に届けるように言った。
天野隆重の降伏の書状はその日、すぐに尼子方に届いた。
だがその書状は宗信の部隊ではなく、横道秀綱の兵に渡っていた。
そして、その書状を秀綱は読んだ。
そこには確かに降伏すると書かれてあった。
今の尼子としては早く月山富田城を落として出雲平定に力を入れたい。
だが、この降伏の書状が胡散臭い。
天野隆重とは大内義興に仕えていた時代から反尼子の姿勢を崩していない。
そんな男が今さら降伏をするだろうか?
しかし、早く月山富田城を落としたい。…となるとこの書状の内容を信じるしかないのか?
秀綱は考えれば考える程相手の術中にハマっている気がしていけない。
取り敢えず宗信に見せる前に小次郎に見せてから改めて考えようと思い、秀綱は小次郎の陣に行く。
小次郎の陣に着いた秀綱は早速近くにいた優に声をかける。
「おい、小次郎はどこだ?大事な話があるんだが。」
いかにも真剣な表情の秀綱を見て優はただならぬ予感がした。
恐らく、戦況が大きく変わる…そんな予感がした。
「…あ、すぐ呼びまーす。」
しばらくすると小次郎が現れる。
寝不足なのか物凄く眠たそうな顔をしてやって来る。
「なんだ?俺眠いんだけど…。」
「重要な話があるんだ。ここで話するのはマズイから、この前の寺で話す。後で来てくれ。」
眠そうな顔をしながら寺に来る小次郎。恐らく、夜遅くまで起きてケン坊と話していたんだろう。
小次郎はボヘーとした顔で座る。
「んで重要な話って何よ?降伏か?」
「その通りだ。さっき私の部隊の兵が書状を受け取ってな。宗信に渡す前にまずお前に見せておきたかった。」
それを聞くなり、この展開を待っていたと言わんばかり顔に輝きを取り戻す小次郎。
さっきの睡眠不足な顔が嘘のように輝いて見える。
「俺はこの合戦の行く末を知っている。そして、天野隆重に偽の書状を送られて指定の場所に誘い出され奇襲を喰らう…。これが俺の知っているこの合戦の結末だ。」
「という事はその奇襲さえ防げば勝利に近付くんだな。」
秀綱の表情にも輝きが出てきた。
この合戦の終わりが見えてきたのだろうか。
少なくとも相手の奇襲を返り討ちにさえすれば相手の士気はドン底になる。
完全なる戦意喪失で勝ちは確定的となる。
だが、相手もこの奇襲が失敗したら負けることが分かっているはず。
間違いなく死に物狂いで攻めてくるだろう。
「取り敢えずこの事は宗信には伏せておこう。アイツが来たら簡単には敵の事を信じてしまい負けるぞ。」
相手の事を簡単に信じてしまうお人好しの宗信は武将としては優秀だが大将としては頼りない。
その為、この作戦は宗信に知らせずにやろうと考える。
「私の部隊とお前の部隊で400人いたら大丈夫だろう。」
「ところで敵はどこに来いと言っているんだ?」
秀綱は地図に印を付ける。
「この辺だな。」
秀綱が印を付けた場所は敵の懐であった。
指定された場所はまさに敵地のど真ん中である。
「こんなところに呼ぶのかよ…!」
指定された場所を見て少し動揺する小次郎。
「書状には兵糧が切れて空腹で動けないものがいるから出来るだけ城に近づいて兵糧もくださいと書いてあるが…どうみても嘘くさい。」
「どうしても誘い出して奇襲をしたいと見てとれるよな。恐らく連中も後がないと思ってなりふり構わず何としてでも奇襲を仕掛けたいみたいだな。ならお望み通り敵地に行こうじゃないか…!」
そう言うと立ち上がり、自分の陣地に戻ろうとする。
「おい、明日の昼に来いって掛かれているのに大丈夫なのか?普通は奇襲って夜がやり易いのに昼間に呼んでるだぞ?なんか怪しくないか?」
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