シカノスケ

ZERO

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尼子再興軍挙兵

遂に始まる

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雪も溶けて今は5月。大きな館で一人の女性が黙々と鍛練をしている。


名前は山中鹿之介幸盛と言う。

尼子再興軍の実質的な指導者であり、尼子の希望である。




【陰徳太平記】には鹿之介の事を次のように記している。


『尼子再興軍の大将は尼子勝久だが、軍事計略の全てが鹿之介の脳裏より出たものである。数ヵ年間、山陰山陽に武威を振るい、寡兵で大軍に勝つこと数えきれないほどであった』



この事から、人々から『楠木正成より勝る戦国乱世の麒麟』と言われていた。




その鹿之介はここ最近は1日の長い時間を使って鍛錬をしている。


鹿之介は感じているのだ。もうすぐ挙兵をする時期が来ると。



鹿之介が一心不乱で槍での鍛錬している時であった。


「山中様…!」


どうやら鹿之介の世話係の女の子が呼んでいるみたいだ。


「どうした?」

鹿之介は女の子の声に気付き、槍をを置いて女の子の元に行く。


「先ほど立原様から書状が届きました。至急呼んでくれとの事です。」

女の子はそう言い鹿之介に書状を渡した。



書状を受け取り鹿之介は自室に戻る。


鹿之介は大事な書状は自室で読むようにしている。

この書状を誰かに盗み読みされたら一大事だから誰もいない自室で読むのだ。





鹿之介は部屋に戻り、早速書状を読んだ。


書状を読むなり鹿之介は目を閉じて一人で呟く。

「いよいよか…。」

そう、遂に毛利が大友攻めの為に九州に出兵したのだ。


その為、石見・出雲・隠岐には僅かな兵しか残っておらず、挙兵するのは今しかないのだ。



書状を読み終えた鹿之介はすぐに戦略を練り始めた。


「この挙兵は尼子再興軍の命運が懸かっている…。私が頑張らねば。」


そう小声で言い、戦略を考え、そして秋上宗信・横道秀綱らに書状を書き始めた。



この書状には再興軍の挙兵時期を記しているのである。


だが、この挙兵時期はかなり重要である。



最高のタイミングで挙兵し、その後の毛利の行動がどれだけ速いかを考えねばならない。


挙兵時期が1日ズレるだけで結果に大きな差が出てくる。


鹿之介はその日、夜遅くまで起きて挙兵時期を考えるのであった。






次の日、鹿之介は立原久綱と横道秀綱を呼んで3人で軍議を始めた。


この軍議はこれから鹿之介が挙兵した後、各地に散っている尼子の残党や出雲に潜伏している小次郎や秋上宗信と上手く連携を取っていく為の打ち合わせみたいな物である。


鹿之介は昨日寝ずに考えて挙兵の日時と攻める場所を考えてきた。

そして出雲に潜伏している秋上宗信に攻めてもらう場所もしっかりと考えており、それを書状に記した。




「私は三日後に200の兵で隠岐から出雲に侵入して攻める。その後に宗信や川副殿に攻めて貰いたい場所があるから書状に書いた。これを届けて貰いたい。」


鹿之介から書状を渡された立原と横道は丁寧に書状を受け取る。




「良いか?叔父上は川副殿に。秀綱は宗信に届けるんだ。そして書状を渡したらすぐに自分の兵を率いて私に合流して欲しい。」


鹿之介の指示を受けた二人は早速書状を渡しに行く。


立原と横道も無駄な話をする暇が無いと分かっているのだ。

いつもとは全く雰囲気が違う。


ピリピリした雰囲気である。





二人が出発したのを見て鹿之介は珍しく化粧をして綺麗な着物に着替えた。


それを観た鹿之介のお世話係の女の子が言う。

「どうしたんですか?珍しく化粧なんてしちゃって…?」


鹿之介は少し照れながら言う。

「いや…その…。合戦をする前に女の子らしい格好をしておこうかなと思ってな…。合戦が始まると自分が女であることを忘れるから…。」


女の子は不思議そうに聞く。


「山中様にも女の子らしい格好をしたいと思うことあるんですね。山中様って、いつも男らしいですから。お洒落とかするイメージ全く無いです。」

クスクスと笑いながら言う女の子に鹿之介は軽く注意をする。


「私だって女なんだからあるさ。私だってお洒落してみんなと遊びたいさ。」

そう言うと鹿之介は何かを思い出したかのように言う。

「そうだ…、この事はみんなには内緒にしてもらいたい。これが秀綱や叔父上に知られたら恥ずかしいから言っちゃあダメだぞ。」

そう言い、女の子にお金を渡した。


いわゆる口止め料である。

女の子は笑いながら言う。

「分かりました。誰にも言いませんよ。私と山中様だけの秘密です…!」


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