シカノスケ

ZERO

文字の大きさ
上 下
44 / 131
戦国時代の冬

しおりを挟む
何はともあれ宴が始まった。


俺は並べられた料理を見て少しガッカリした声を出す。

「お節じゃない…?」


隣に座っている宗信が何の事か聞くと俺はビックリした声で言った。


「お節知らないの?正月に食べる料理だぞ。美味しいんだぞ」


俺が必死に言っても宗信は何の事か分からないみたいに言う。

「おせちって未来の料理ですか?聞いたことないですよ?」



宗信のこの言葉を聞き、昔観たテレビを思い出した。



確かお節が正月料理として食べる様になったのは江戸時代と言っていた。

どうやらこれは本当みたいだ。



お節が大好きな俺はガッカリしたが、目の前にある料理も十分旨そうに見える。


とりあえず俺は鹿の肉を食べる。


鹿の肉を口に入れて見たが味付けは良く美味しい。


戦国では肉料理は滅多に食べられないから十分ご馳走である。






料理を食べてしばらくした時に隣に眼鏡をかけた美人なお姉さんが来た。


川副久盛である。

顔を合わせるのは最初の顔合わせ以来である。


俺は少し緊張した顔で言う。

「川副さん、お久しぶりッスね…」


「うん、久しぶりね。それより聞いたわよ。犬猿の仲だった山名との同盟を成功させたのね。スゴいわぁ…」

エロい顔で俺の目を見つめて言う川副。

俺は緊張でガチガチである。


そんな状態を分かったのか川副は俺に酒を勧める。

「お姉さんとこのお酒飲まない?小次郎くんに興味持っちゃったの…。」


川副はそう言い俺に酒を注いだ。


俺は当初の目的の事を完全に忘れて流れに身を任せて酒を飲んだ。



川副と話ながら酒を飲むこと1時間。


俺はかなり酔っていた。


酒にそんなに弱いわけでは無いが、川副が注いだ酒はかなりアルコール度数がキツい酒だ。


川副は俺以上に飲んでいるのに全く酔っていない。


川副は楽しそうに話しているが酔い潰れた俺には何を話しているのか良く分からない。



その時である。

巨漢の男がやって来たのだ。


「川副の姐さん、ワシもその酒を飲んでみたいのう。」


「じゃあ飲んでみる?このお酒はキツいわよ」

妖しげな笑みをする川副の姐さんは飲んでいた酒を巨漢の男に渡す。


姐さんから渡された酒を男は酒を豪快に飲んだ。


「こりゃあ中々キツい酒じゃのう。そこの小僧はこれを何杯も飲まされたんか?」


俺は酔い潰れた状態で元気のない声で「はい」と言った。


「まだ若く酒に慣れてないのに凄いのう。小僧は酒好きか?」


男は大きな声で言う。

どうやらこの巨漢の男は元々声が大きいのだろう。

俺はとりあえず頷いた。

そうすると男はまた大きな声で言う。

「じゃあ今度ワシのお気に入り酒を飲ましてやる。」

男はそう言うと川副の姐さんと酒を飲み始めた。










俺は少し頭が痛くなってきたので少し横になった。

こんな時に女の子に膝枕をして貰えたら嬉しいんだが、誰も俺のこの状態に気付いてくれない。




そういえば酒宴が始まってから宗信に話し掛けられていない。



宗信は一体どこにいるのか周りを見てみると横道秀綱と鹿之助で酒を飲んでいた。



しかし、様子を見ると宗信も酔っているみたいで顔が赤く、変な言動が目立つ。



秀綱と鹿之助は酒に強いのか全然酔っている気配を感じない。




酔い潰れた俺を相手してくれる人がいなくて寂しがっていた時、俺と同じく酔い潰れた人に声を掛けられた。



「あなたも酔い潰れたんですか?」


男は俺より少し年上と見られる優男だ。

酔い潰れた割には声に元気がある。


「ああ、川副の姐さんの酒がキツくてな…。」


「そうですか…。私は兄に無理矢理飲まされて…。あ、兄はいま川副さんと飲んでいる人です」


さっきの巨漢の男がこの優男の兄貴か。


「ところで君は名前はなんて言うんだ?」


何となく気になったので俺は名前を聞いてみた。


「あ、申し遅れました。私の名は隠岐清家です。」

男は相変わらず酔い潰れているのに元気に言う。

俺は隠岐という名を聞いて目的を思い出す。


こいつの兄貴があの巨漢の男…隠岐為清か。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

その者は悪霊武者なり!

和蔵(わくら)
ファンタジー
その者は悪霊!戦国の世を生き、戦国の世で死んだ! そんな人物が、幕末まで悪霊のまま過ごしていたのだが、 悪さし過ぎて叙霊されちゃった...叙霊されても天界と現世の 狭間で足掻いている人物の元に、業を煮やした者が現れた! その後の展開は、読んで下さい。 この物語はフィクションです!史実とは関係ありません。

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

アンチ・ラプラス

朝田勝
SF
確率を操る力「アンチ・ラプラス」に目覚めた青年・反町蒼佑。普段は平凡な気象観測士として働く彼だが、ある日、極端に低い確率の奇跡や偶然を意図的に引き起こす力を得る。しかし、その力の代償は大きく、現実に「歪み」を生じさせる危険なものだった。暴走する力、迫る脅威、巻き込まれる仲間たち――。自分の力の重さに苦悩しながらも、蒼佑は「確率の奇跡」を操り、己の道を切り開こうとする。日常と非日常が交錯する、確率操作サスペンス・アクション開幕!

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

暗闇ロボ 暗黒鉄

ヱヰキング
SF
ここは地球、美しく平和な星。しかし2年前、暗闇星人と名乗る謎の宇宙人が宣戦布告をしてきた。暗闇星人は、大量の量産型ロボットで地球に攻めてきた。世界は国同士の争いを一度すべて中断し、暗闇星人の攻撃から耐え続けていた。ある者は犠牲になり、ある者は捕虜として捕らえられていた。そしてこの日、暗闇星人は自らの星の技術で生み出した暗闇獣を送ってきた。暗闇獣はこれまで通用していた兵器を使っても全く歯が立たない。一瞬にして崩壊する大都市。もうだめかと思われたその時、敵の量産型ロボットに似たロボットが現れた。実は、このロボットに乗っていたものは、かつて暗闇星人との争いの中で捕虜となった京極 明星だったのだ!彼は敵のロボットを奪い暗闇星から生還したのだ!地球に帰ってきた明星はロボットに暗黒鉄と名付け暗闇獣と戦っていくのだ。果たして明星の、そして地球運命は!?

処理中です...