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一章 飛空島

40 変化…?

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エディオとフェリクスさんが転移装置でエルナリアに行ってから、僕たちは本業の学園生活にも力を入れた。
ギーヴは、学年十位以内を…所謂、成績優秀者を目指して勉強を頑張ってるそうだ。
意外と、座学は上位なんだよね。
魔法は…まぁ、そこそこ?みたいだったけど、最近は違う。目に見えて上達しているんだ。
(魔法使いの才能があったなんて、すごいな!ビルチェ伯爵も、喜ぶだろうなぁ。)
僕には、魔法は使えない。
だから、素直にギーヴが凄いと思うし…いつか僕の魔道具を使ってほしいとも思ってる。
(シャルルは言うまでもなく優秀だし。)
ギーヴが、真面目に授業を聞くような性格じゃなかったんたけど、夏休みを前に、随分と授業態度が変わったみたいだった。
成績優秀者は一年目の夏休みの課題減るもんな。
…あ、そういうことか。
夏休みにめちゃくちゃ遊ぶつもりなのかも……?

「火球!!」
生徒の一人が、火の魔法を放つ。手のひらより大きな火の玉。狙う的は十メートル先。
パァン!
と、小気味よく音を鳴らし、的は弾ける。
《増幅》の魔道具を介さなければ、人の使う魔法って、この程度なんだよね。
だいたいの一般的な人は、全属性扱えるけれど、得意、不得意とかは多少あるものの、威力は得てして弱い。
だから、飛空島の学園では威力は必要なく、制御だったり、精度を上げることを大きな目的としている。
(…魔道具を使うことで、人の魔法は生きてくる。)
その唯一を作れるクライン血族の僕は、誇りを持って技師になろう。
こうして、クラスの皆が頑張って訓練してる様子を見るのは、僕が僕であることを再確認するためでもあって。
(……ヴォルカー様に渡す武器も…考えないとな。)
ヴォルカー様なら、やっぱり槍だよね。
それも身の丈以上の美しくて……黒い髪と合わせた漆黒の槍?ううん、対象的に純白も捨てがたい。
差し色には…僕の魔力を通わせて、回路を部分的に露出させて、その部分が青く光るんだ。
込める魔力によって彩度も濃度変わるから…。
ん。
やっぱり黒!黒に、輝く青の魔力光。これだ!

「ティルエリー?おーい。授業終わってるぞー!」
「んぁっ!?ギーヴ。…へ?もう終わり?」
槍のことを考えてたら、いつの間にか授業終わってた!
「これから昼飯、行こーぜ!」
「昼!!パルクの香草ロースト定食!!」
パルク、パルク~♫
「ティル様ぁ~。待って!私も行きます~!」
実技用の訓練着から制服に着替えを済ませたシャルルがとてとてと走ってくる。
子鼠みたいで可愛らしい。
「お、行くか?マルローズ。」
「お、モーヴくん!魔法、凄かったね!」
「モーブってなんだよ!ったく……。まぁな。実はヴォルカー先生にも、少し見てもらってたんだ。」
何ッ!?いつの間にそんなことを!
「羨ましい!僕も見てもらいたい!!」
「ティルエリー、お前は魔法使えないだろうが……。」
うぅっ。そのとおりだけど!悔しい……っ!
「まぁ、お前は安心して認定試験に向けて頑張れよ。」
「……?」
「…できれば、王宮には行かないでほしい、ってのがヴォルカー先生の願いでもある。」
「ぅ……。それは勿論!僕だってヴォルカー様と一緒に居られない方が辛い。工房を引き継がなくても、何処でだって当主はやっていけるもん。」
そう。それこそ、エンダタールの大地にさえ居れば、旅をしてても、何処でもいいのだ。
「だからな、お前の拠点を作る準備。前も言ったけどさ…お前さえよければ、ビルチェに来いよ。
卒業したら俺が領地継いで、安全な場所に……。クライン当主が工房開けるくらいに、盤石にするから。」
「……へ?」
「アールベル王子とも話したんだ。…ビルチェは元々中立派。それに王都から離れた辺境近くだから、国王も第一王子の目もあまり届かないんだ。
親父は、城勤めだから王都のほうが都合が良くて、そっちの邸宅に居るけど。俺は城に就職する気は無いし、親父もしばらくは王都で、働くし。
だから、お前は卒業したらすぐ認定試験受けて、ヴォルカー先生を血を護る者ブロディアにして、サクッとこっち来い。成績次第では、卒業後領地経営を任せてくれるって、親父から言質取った。お前が魔道具技師として工房を構えるのに、最ッ適な環境にしてやる!!」
何か、今スゴイことを言われた気がする。
王宮の外で、僕が安全に自由に生きられるように…?
あ。
なんだろ…。凄く……目の奥が熱くなる。ギーヴ、そんなことを考えてくれていたの……?

「あーっ!!!ズルいズルいズルい!私も行くわ!」
って、ええっ?男爵令嬢が何言ってるの!!?
「お前は第二王子妃だろーが!」
「はあぁ!?違いますけどぉ!?何勝手に決めてるんですかぁ!?」
わーんっ、この二人、最近いっつもこんな感じ…っ!
シャルルの怒り具合が、マジ怖いんだけどっ!

「ギーヴ君、それはとても嬉しい提案だね。シャルル嬢、私は本気だよ。さぁ、ティルエリー様も大好物の、パルクの香草ロースト定食を一緒に食べようじゃないか。」
「ティル様の大好物……はいっ!同じ味を堪能したいですわっ!」
いきなり現れた王子の姿。ギーヴも僕も驚いたけど、シャルルは普通にスルーしてる……。ひょっとして、いつも突然現れてるの?慣れたの?王子、ストーカーなの?
「はははっ。そうだろう。急がないと無くなってしまうよ。」
あぁ、さり気なくシャルルの腰に手を回してるし。
「ティル様も行きましょーう!」
ソレを気にしてる様子もないシャルル。
あれ?
この二人、意外と……いい感じなの?

だとしたらシャルル……ちょろいぞ。
っていうか、アールベル様が何で昼休みに学園に来てるんだよ……。
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