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一章 飛空島

14 週末の買い物

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通信の魔道具のデザインを、僕はシャルルにお願いしてみたんだ。
あの子、何だか不思議なセンスがあるっていうか、面白いから。
まぁ、女の子の感性って、どんなものだろう?って単純に思ったのもあるんだけど。
そしたら、翌日にはデザイン画を数枚持ってきてくれてビックリしちゃった!

「うん。…この二種類にしよう。シャルル、ありがとう!」
複数あるデザインの中からシンプルなものを2つ選んだ。
アクアマリンの魔核がよく映える、金細工の模様が美しい。
「はい!最推しのためたら何だってやります~!」
サイオ…シ?
まぁ、彼女が不思議な言葉を並べるのは今に始まったことではないし。何故かアールベル王子にはそれがツボみたいで、あれから頻繁にシャルルをデートに誘ってるって、ヴォルカー先生が楽しそうに言ってたんだよね。
あのものぐさ王子が、女性に興味を示すなんて珍しいって。

「ティルエリー様、もっとこちらの工房に居たいんですが…この後で王子殿下に呼ばれてるんです…なので、失礼します………。」
って、シャルルの意気消沈した顔でその言葉聞くのも慣れたなぁ。
シャルルが工房を後にして、一人になった。一人だと少し広く感じるこの部屋も、お披露目したあの日は応接セットに所狭しとみんなで座って、楽しかったな。
ギーヴも、シャルルもたまに工房に遊びに来てくれる。

でも、一番来てほしい人は、あれから一度も…。

いやいや、何考えてるんだ、僕は。
相手は保健室の、とはいえ学園の先生なんだぞ。
一介の生徒の部屋に(工房だけど!)来てほしい、なんて…それこそ横暴ッ!
………。
………………………。

、、、。

「………はぁ。何やってんだろ、僕。」

考えたところで、どうにもなんないや。
シャルル、週末はアールベル王子と出かけるのかな?
やっぱ飛空島の街を遊び歩きたいよね。
狭い飛空島どけど、普通は在学中の3年しか遊べないんだもん。
なんて、ふとシャルルとアールベル王子が街をデートしてる様子を想像して、あんなイケメンに振り回されてるシャルルとか。
かわいいなぁーなんて、思ったんだけど。

僕が行くなら、やっぱ雑貨屋か…宝飾品屋かなぁ。
アクセサリーのデザインの参考にもなるし、魔核以外の宝石も使って魔道具を飾り立てると、貴族の御婦人方にすっごく売れるんだ!


「週末、行ってみようかな…。」

本当は、先生と行きたい…けど、ここはギーヴを誘うか…。
いや、ギーヴに雑貨屋や宝飾品店に付き合わせるって。
僕は慣れてるから良いんだけどなぁ。…ギーヴにとっちゃ可哀想だろフツーに。


「……一人で行くか。」


◆◇


そんなこんなで、週末。

予定通り街に出てきた僕は、まずは本屋に立ち寄った。
あの事件の日に燃えてしまった魔道具の資料集のうち、どうしても必要なものが数冊あったんだ。
実家で探せばあると思うけど、家に帰らない父さんに送るよう頼んでも、きっと無駄だろうから。
「えーっと……。あ、これだ。…と、こっちも。」
飛空島の本屋は、研究所の職員も利用するから、結構専門的な図書が多い。
学生向けのコーナーより、僕は専門書の棚を中心に、つい見入ってしまう。

あっ、この本父さんの工房にあったヤツだ!譲って欲しいって頼み込んだけど駄目だったんだよね。

その本をじっくりと眺めていると、突然肩を軽く叩かれたから、ビックリ。
「わっ?」
「あぁっ、申し訳ありません、ティルエリー様。お邪魔…でしたか?」
えっ?
えぇっ!?
ちょ、待って、どうして!?
「ヴォルカ……さまっ?」
振り向くと、目の前には僕が会いたかった…ゴニョゴニョ……ヴォルカー先生の姿があった。


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