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一章 飛空島
8 夜色の魔核
しおりを挟む絶対こいつら、助けてやる!!
そう思って、僕は震える身体に気合を入れた。
保健室に、怪我をした子達が来た。
一人は頭からたくさん血を流していて、とても辛そう…。
もうひとりは、腕に壁の破片が飛んできてぶつかったんだって。骨折しているのか、とても腫れていてギーヴが氷を持ってきて冷やしてる。
シャルルは重症の子の止血を試みてるけど、うまくいかないみたいで。
ヴォルカー様なら、きっと神聖力で骨折や止血くらい、すぐにできちゃうんだ。
でも、ヴォルカー様は今はいないから…。
僕に、できることを。
「ギーヴ、お願い!魔石探して!」
処置を終えたギーヴに、お願いする。魔石を探してきてもらう間に、設計図を描こう。
僕のお願いは、ギーヴはすぐに理解してくれたみたい。
「ッ…!!分かった!!」
保健室から飛び出してった。
そして僕は、保健室の床に紙を無造作に並べ敷き詰める。
設計図を描くには、この部屋にある紙は一枚一枚が小さすぎるから、重ねて広げて並べるしかない。
歪んだり、紙がズレて設計図が壊れたりするかもしれないけど、やるしかないよね。
「ぇ…?お前、何やってるんだ…?」
付き添いで来ていたもう一人の生徒に、僕の行動は異様に見えたみたいだ。
「近づかないで。設計図が崩れる」
深呼吸して、ペンを走らせる。一文字、一文字。線の太さも、細さも魔力回路を滞りなく巡らせるために重要。
あぁ、こんなに緊張するなんて初めてだ。
失敗したら、あの重傷の子は多分ヤバい。
(ヴォルカー様っ、早く来て……っ。)
焦って、緊張して。
こんな精神状態で、良い魔核なんて、できるのかな…。
不安だけど、集中して描き上げたとき、ギーヴが戻ってきた。
「ティルエリー!魔石…!!!あった!」
相当探し回ってくれたんだろう。物凄く息切れしてて。
うぅっ、ありがとう、ギーヴ!
「あ、あ、ありがとう!!!」
ギーヴから魔石を受け取ると、すぐに僕に流れるクラインの魔力を設計図に込めていく。
青く光り、ペンで描いた線や模様、文字は全て魔力回路となり浮かび上がる。
瞬間、描いて役目を終えた紙たちは塵になって消えていく。そして、回路を繋げた設計図…魔力を帯びて、魔法陣になり、魔石の中に吸い込まれてくんだ。
「…よし、うまくいった…!」
真っ黒だった魔石が、透明度を増して、僕の魔力の色を映してく。
だいぶ繊細で緻密な設計にしたから、魔核の色は濃く、深い色。
夜空みたいな魔核ができた。
「すっ……げぇ……!魔核ができるところ、俺初めて見た……!」
ギーヴの目が輝いてる。
「あとは、これを使って治療…し、ないと」
あれ?
身体に、力が入らない。僕はそのまま、床に倒れてしまった。
ヤバい、魔力を吸われ過ぎた…。
「ティルエリー様っ!」
シャルルの声だ。
お前も頑張ったよな。
あんな酷い怪我人を前に、逃げないで…。
「シャル…ル、魔核…を、コップに…入れて、それに汲んだ水を使って。かけてもいいし、飲ませても…効くから。」
怪我人や病人が複数居たときのために、って、考えていた図案なんだよね。
父さんも知らない、僕だけの設計図。
「あぁっ!ティル様ぁ!しっかりしてぇ!!」
シャルルの声が、随分遠くで響いた。
ギーヴ、シャルル…あとは頼んだぞ。
そして、僕は意識を手放した。
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