虹色の子~神さま候補、世直しします!~

an

文字の大きさ
67 / 119

僕の小さな鳥②~sideラント~

しおりを挟む

それから、鞭で打たれながら荷物を運ばされる仕事を何日も何日も繰り返して、もう、どれだけの月日が経ったか。
僕の背中は鞭の傷でいっぱいだった。でも、治療はして貰えない。
もう、叩かれても、感覚も無くて笑ってしまう。
そうだ。感情も感覚も、忘れてしまえば楽になる。キースがあんな目をして淡々としていたのが、分かった。
文句も不平も口にしないで、ただ身体を動かしていればいい。機械みたいに。

仕事が終わって、いつものカビ臭い部屋に繋がれる。食事は固いパンと、野菜の切れ端だけ。それでも、毎日食べられるんだ。
感謝しないと。
中には、食事も与えて貰えずに餓死する奴隷も多くいるみたい。
それに比べたら、ここの貴族様は本当に有難い御方だ。

グズな僕なんかに、毎日ご飯をくれるんだから。

でも、一つだけ気がかりなのは、マリンのこと。

「マリン……。」

君はどこに買われたの?毎日ご飯を食べれてる?
鞭は飛んでこない?


神様、ここに来る前は世界を恨んだけれど、僕はまだ幸せな方なのかもしれない。

ごろん、と石の床に横になる。
背中の傷が膿んでしまうから、直に床に触れないように、背中を上にして寝そべる。
明かり取りの小窓から見える星空が、今日はとてもキラキラと金色に輝いて見えた。

「綺麗………。」

ぼうっと眺めていたら、なんだか様子がおかしいことに気づいた。

「あれは…星、じゃない…?蝶…?いや、鳥?」
小窓から見える範囲だけだけれど、物凄い数の金色の小鳥が、空を翔ている。
「キ、キース!!空が…!!」
「あん?何だよ…。って、えぇ!?なんだ、ありゃ?」

空が埋まるほどの、沢山の小鳥。何かの前触れ?
「あれ…何か、何羽か降りてきてないか?」
小窓から見える鳥が、屋敷の中に降りてきた。
鳥は、僕らの部屋の窓に二羽、停まったんだ。
「へ……?」

金色の小鳥は、小窓からぴょんと僕の膝に乗って来た。
キースの肩にも一羽止まっていて、毛繕いなんてしている。
(な、何…?凄く…か、かわいい…!)
可愛い小鳥を見た瞬間、僕は涙を流していた。
隣を見ると、キースも同じように泣いていたんだ。
「オレ、なんかわかんねぇけど…分かった。コイツは神様の遣いだ。オレらを救ってくれるんだ…。オレ、もうこんな生活……嫌だ…。逃げ出したい……!」
虚勢を張っていた、キースの心が緩んだ。
素直な心で、神に縋る。
町の教会では、ごく当たり前にしていたこと。
なんで、忘れていた?

あの日、檻に閉じ込められた日に、世界を呪った時から?

「かみさま……。」

僕も、縋るような気持ちで呟く。
すると、その声に反応したかのように、小鳥がパタパタ羽ばたいて頭に乗って、翼を目一杯広げた。
「え……?」
金の小鳥が、今度は虹色の光の粉を振り撒いた。

その二つの光の色を目にした瞬間、僕の頭の中に、物凄い量の映像と情報が入ってきたんだ。
これは、神のお使いになられる言葉の知識。
それから、ディーテ神様の金色の揺れる長髪に、美しい尊顔と、その脇に居られるのは…白金の髪を靡かせて微笑む、なんて可愛らしい御方。
(ディーテ神様の…御子様……?親子神様…。)
ただ、頭の中に映像が流れるだけではない。ディーテ神様が、どれだけこの美しい御方を愛しておられるか、そして、その御子様も、ディーテ神に全幅の信頼と愛を傾けていらっしゃることが分かる。
その映像が、ふわりと消えると共に、金色の小鳥は僕の胸のあたりに吸い込まれるように消えてしまった。
「あぁっ!小鳥が……!!」
いなくならないで!と強く願った。
すると、ぽわん!っ小鳥が目の前に現れる。
「わぁ!!!?」
「なっ!なんだ、ラント!びっくりするじゃねえか!」
「ご、ごめん!でも、小鳥が…消えたり、いきなり現れたり…!」
「鳥が…?」
キースの側にいた小鳥も、同じタイミングで消えていたんだろう。鳥、と呟いたとたん、キースの頭の上にぽふん!と小鳥が現れる。
「キースの頭にも、小鳥が!」
この不思議な小鳥は、僕やキースの胸の中に光の粒になって消えてしまうけど、小鳥を想うと、目の前に現れるんだ。
「あ…ぁ。神様が、いつもお側に居てくださる…。僕は…希望を持っても、いいの?神は僕を見捨てていない?」
「…オレも…、オレだって…!」

奴隷にされて、ただひたすら生きていかなきゃって思っていたけど、今、何だか救われた気がしたんだ。
この状況が、変わるんじゃないかって、希望を持っても、良いんじゃないかって…。


だけど、そのつぎの日も、結局は変わらなかった。ただ、鞭の数が随分減ったのが不思議だったけれど。

(これも、神様のお陰…?)

相変わらずお腹が痛くて、背中も腕も限界だったけれど、それでもあの部屋に帰って、心で願えば僕の鳥が…僕だけの小鳥が側に居る。
ただそれだけで、僕は心の支えを貰ったような気になれたんだ。

そして、夜に。

《迎えに行くから、待っていて……ラント。》

痛む身体を抱えて眠る僕は、夢を見た。

金色のディーテ神様の隣に居られた、あの美しい神様が、僕の名前をお呼びくださった。


迎えに、来てくださると。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...