虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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通常運転

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コルディウスの村に到着したのは、もう日が暮れた頃。
ヒースヴェルトは、赤く染まった空に、つい目を細める。
「ヒースヴェルト様、色替えの術は、したままでお願いしますね。コルディウスの者には、ヒースヴェルト様の本来のお色を見ると…おそらく、神に近い存在か、そうでなくとも神子でないかと思ってしまう。信仰の厚い集落には、良くあることなのです。」
「そうなの?」
馬車から降りる前、ルシオがそう伝える。
「教会で神子と認定される者は、金を纏う者。砡の色に近い者も高貴とされるのですが、金髪の者は平民ですら、神殿入りするのに歓迎されるくらいなのです。…」
ルシオの髪は銀髪だ。これは、白の砡の色に近いと、教会でも、持て囃される色になる。
そして、ディランも教会には歓迎される、鮮やかな赤の髪。そしてエンブルグ皇国の皇族特有の金色の瞳は、世界的にも認められる色なのだ。
フォレンの髪色と瞳も、世界的には人気のある色。
「……ふぅん…。ぼく、みんな素敵な色してると思うけどなぁ。人のルールは、分からないです…。あっ!でも金色が好きっていうのは、わかる~!」
金色はディーテ神の色。ヒースヴェルトも、常に金色の何かを身につけている。今日も華護りの髪留めを使い、ベルトの刺繍も金糸だった。
ヒースヴェルトは馬車の中でふわりと虹を纏う。一瞬で、黒髪と琥珀色の瞳に変化する。
「…やはり、リーナ色なのですね…。
あっ、あの。こ、今度、銀髪と青の瞳に…してください。」
耳の先まで赤くして、そんなお願いを必死でするルシオが、可愛らしかった。
「…?ぁい~。」
今度、と言わず、ルシオの言葉に反応するかのように、ぽんっ!と銀髪とアイスブルーの瞳のヒースヴェルトが目の前に現れた。

ブッ!!!

「うわっ!!!ルシオ様ッ!?どうしたんですかー!!」
突然勢い良く吹き飛ばす鮮血に、リアンは青ざめるものの。
「大丈夫です~、これはルシオさんの通常運転です~。」
「あああぁっ!尊い!!!尊いですヒースヴェルト様ぁあ!!もう、このままで、このまま私と共に二人だけで世界廻しましょう?ねっ?」
血まみれの顔で熱烈な告白を聞かされ、ヒースヴェルトはさすがに苦笑いで断った。
「ルシオさぁん…。やっぱりリーナのお色にしときまーす…。」

ぽふん。

「あぁっ!そんな…!」
ルシオ色バージョンのヒースヴェルトは、一瞬で消え、リアン的には見慣れた、黒と琥珀のヒースヴェルトが馬車から降りてくる。

「ヒー様、お疲れじゃないですか?悪路だったので…。」
リーナは腰をさすりながら、ヒースヴェルトのそばに寄る。
「大丈夫だよ。リーナ、痛そう。みんなも…。癒す?」
ヒースヴェルトは、ふよふよと虹の光の粒子を発生させる。
「いえっ、大丈夫です。今晩は、既に宿を手配しておりますから、そのまま休みますし。」
今、ここで神力を使用しては、余計に注目されてしまう。リーナは笑顔で平気なふりをした。
「そう?辛いなら、言ってね。」
「ありがとうございます、ヒー様。」
「えへへっ。」
リーナの腰にぴったりと張り付き、にこりと笑う。
「わぁ、まるで御姉弟のようです!リーナさんとヒースヴェルトさまっ。」
ジャンニが微笑む。
「!そうだ!リーナおねえちゃん、って呼ぶです」
きゃっきゃ、と楽しんでいると、コルディウスの村民が迎えに来た。
「ようこそ、コルディウス村へ。私は村長の息子のロジエと申します。悪路だったでしょう?お疲れさまでした。宿を御用意させていただいております。此方へどうぞ。」
ロジエは、暗くなる前に、と宿へ案内した。
宿には、山奥の村には珍しく他の客もいるようで、賑わっていた。
「申し訳ありません。突然の視察だったので貸しきりにできず…。騒がしいでしょうが、了承ください。」
「構いません。それより部屋は三部屋手配を頼んだが、案内を頼みたい。視察団の方もお疲れのご様子だからな。」
領主代行であるリアンが、緊張しながらも率先して対応する。
「はっ、はい、此方に。」
フォレンも、幼い頃に初めて領主代行として政務を行ったことを、思いだし微笑ましく眺めていた。
「ふふっ。リアン頑張ってる。ぼくも明日は頑張ろうっと!」
案内された部屋は、流石に風呂はついていなかった。ヒースヴェルトは一人部屋。両側の部屋をルシオとフォレン、そしてリーナとジャンニが泊まることにした。
リアンは、領主の子息ということで、特別に村長の家に招待されているらしい。
ジャンニについては、領主の次女ではあるものの、この度の視察団のメンバーという説明をしているので、宿にしてもらった。
村長の息子の子どもが、リアンと年近いということも理由らしいが。
「じゃあ、俺は村長の家にいるから、何かあればそっちに来れば良いからな。また明日な!」


夕食はヒースヴェルトの警護のため、数名ずつ交互に。
ヒースヴェルトは、部屋でジャンニと二人で食べていた。
ジャンニは、一応帯剣している。ルシオの作った、緋砡の欠片を内蔵した、ディランの大剣に似たデザインの機械導具。
アルクスに正式採用されたとき、「ヒースヴェルトの側で仕えるならば、その命を賭しても守らねばならない。武力は必須だ」と首領に言われた。
砡術士ではないけれど、機械導具を貸与される、異例の扱いを受けることができたのは、エンブルグ皇国の騎士として、それなりに実力を示してきたことも評価されたらしい。
怪我で引退したものの、その怪我もほぼ完治しているのだ。
皇国の騎士の小隊長レベルの実力はあるため、ディランが保証してくれたそうだ。
もちろん、それを証明すべく鍛練も欠かさない。
「ジャンニ、これ美味しいね!あまーくて、しょっぱーくて、串焼きのお肉みたいなお味♪」
フォークで刺した肉は、ヒースヴェルトの言う通り、ヒースヴェルトの大好物、屋台の肉の串焼きと同じソースを使っているもの。
「はいっ、きっと今日はお疲れになると思って、ヒースヴェルト様のお好みの料理にしたかったんです~。」
ヒースヴェルトの食の好みは、全て把握している。甘いもの、食感が柔らかいもの、甘辛いもの。でも、酸っぱいものは少し苦手。苦いものは、意外とイケる。とか。
このエンブルグ皇国だけではなく、いつか世界中の美味しいものを食べていただきたい。
いつか、国交が正常化すれば、それは叶うはず。
ジャンニはいつか来る未来を想像し、微笑んだ。




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