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労いは美味いものを。

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ホテルに残ったのは、リーナと、グロッキーアシュトそして、ジャンニ。
あとの二人はヒースヴェルトが目覚める前に神泉の水を手に入れるため、公園の散策路に来ていた。
「フォレン、ハクライの滞在中なら神泉は近いからいいが、城にはどうやってここの水を毎日運ぶつもりだ?」
「うん。この機械導具を使うのさ。」
ポケットから取り出したのは、《白》の機械導具で。
「それは、ルシオ様が商会ギルドに売りつけた大容量アイテムボックスじゃねぇか。同等の質の砡の欠片が見つかったのか?」
「いやー、アシュトは本当に優秀だよねぇー。アルクス辞めて、私のお抱えになってほしいくらいだよ。」
「こき使いすぎだろ。
まぁ、ハクライの手配だけなら手紙だけで足るところ、アイツを動かした時点で何かあるとは思ってたが。」
アシュトがヒースヴェルトと遊んでバテたのは、その前に超過酷な任務を任されていたからで。

まず、神泉の水の状態を確認、皇都で《白》の上質な砡の欠片の入手、ルシオにアイテムボックスの機械導具を超特急で制作依頼し、出来上がり次第ハクライに運ぶ。
それをヒースヴェルト御一行が到着するまでに完了させるのだ。

・・・特殊任務のため、一人で。

「一番キツかったのは、ルシオ様に豪速で作らせるために、彼の暴走に付き合わせたことかな?」
そして、極めつけはヒースヴェルトとの大浴場。体力的に限界だったため、あの場で神力にあてられ、耐えられなかった、というわけである。

さすがに酷使したかな、と反省しながら。

そんなことを話しながら、歩くこと数分。目の前に美しい泉が広がる。
神の泉とは、その言葉通りディーテ神の色である金色の霧が常時立ち込めている神聖な泉で、不思議なことにその水自体は透明なのだ。

「とりあえず、入るだけ入れていく。あとは、こないだヒー様から頂いた虹色の砡の欠片を一緒に入れる。
これでうちの城に持っていけるよ。」

導具を発動させ、水を吸い込ませる。
「うん、完璧だ。帰ったらアシュトに美味いものでも奢ってやろう。」
大容量のアイテムボックスには、1トン程度の水が手に入った。

「さぁて、うちのヒー様は目覚めているかな?」






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






「んー・・・ぅ~。」
むくり、と小さな身体を起こす。随分とぐっすり眠ったので、気持ちよかった。
「あ、ヒー様。お目覚めですか?」
いつもの、明るくて優しい声。
「リーナ!!」
ぴょこ、とベッドのレースから顔だけを出す。すると、そこには、リーナの他にもう一人。
「ぇ?だぁれ?」
「はっ、はじめまして!ヒースヴェルト様っ!わ、私はジャンニ・コールと申します。ヒースヴェルト様のお料理をお作りするよう、依頼を受けた者です!」
ぺこり!と、頭を勢い良く下げる。ヒースヴェルトは意味がわからなくて、固まってしまった。
「リーナ?この人、なに言ってゅの?」
何だか早口で、半分くらいしか理解できなかった。
「ジャンニさん、ヒースヴェルト様は言葉を習いたてで、ゆっくりとお話なされるように、お願いしますね。
ヒー様、この女性は、ジャンニ、と言います。ヒー様のご飯を、作ってくださるコックさんですよ。」
と、ジャンニを改めて紹介すると、頭だけ出てきていたカタツムリなヒー様は、すとん、とベッドから降りてニッコリと笑いかけた。
「ひーすべぅと、です!ごはん、作ってくぇうの?あり、がとー!」
まるで花が綻ぶような美しい笑みに、ジャンニは。
「ーー!!!(きゃああ!かわいい!かわいい!!)」
言葉にならない叫びを噛み締めた。

「ジャンニさん、ヒー様の食事の事情はとても特殊です。
詳しくは契約してからになりますが・・・契約が済むまで、ヒー様に何か食べるものや飲み物など提供しないでくださいね?」
「は、はい!」
(ものすごく偏食なのかしら?
だとしたら、しっかりと栄養のあるものをおいしく作ってさしあげないと!)
ジャンニは事情は分からなかったが、それでもこの可愛らしい依頼主を喜ばせることができるよう、改めて気持ちを引き締めたのだった。




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