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閑話~不思議な人たち~ side ヒースヴェルト

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ママと、ここで暮らして、かなりの年月が過ぎたと思う。

僕もね、背が伸びたし、ママとお話もできるようになったの。

ママは、よく仕事場のお話を聞かせてくれる。とっても美しいお花の絨毯があるんだって。

それに、ママの飴とおんなじ色をした泉?
いずみって何だろう?見たことないし、分からないけど、水溜まりがあるんだって。そのお水も甘いのかな?


ママがお仕事で出掛けてていない時は、階段の下の大きなお部屋で、ママの石のお人形の側で過ごす。

今日は、ママがお仕事だからって、昨日の夜からいないって知っていたから、木の葉を敷き詰めた石の箱の上で、のんびり眠っていたの。


そうしたら、聞き慣れない、音がして。


起き上がって、音がした方を向くと、誰かがいた。


その誰かは、四人いた。

一人は、ママと同じキラキラ金色の髪の毛のお兄さん。
もう一人のお兄さんは、真っ赤なお色の髪で、あとから、緑の髪のお兄さんも来た。
その緑のお兄さんと並んでるのは、夜の色のお姉さん。

「******?」

あれ?

なにか、音を出した。小鳥が鳴くみたいに、お口から音を出すけれど。


何だろう?


僕は、何か、忘れているような。

「**、****?」

あぁ、これは、話してるのか。僕の知らない言葉。

本当に?

本当に知らない言葉なのかな・・・。

お胸のあたりが、ぎゅうって、苦しくなる。何だろう?この感覚。

えっと。

ここからはちょっと遠いよね。大きな声でお話したほうがいいかな?

うー、ドキドキするっ!

『あなたたちは、誰なの?』

そう聞くと、金色の髪の毛のお兄さんは、両手を広げて、笑顔で何かを、しゃべった。

そう、喋ってる!知ってる!これは、人間の言葉だ。

僕も、すごーく昔に、使ってた・・・?

頭の中が、何だかモヤモヤする。何か、思い出せなくて歯がゆい感じ。こんな気持ち、いやだ。

ムズムズしていると、金色の髪の毛のお兄さん、びっくりしたんだけど、ママの空気と同じ光の粒を放つ「飴」を持ってたの!でも、ママのとは違う、青い飴。

この人も、ママから飴をもらっているの?
もっと近くで見てみたいな。

そう思って、お兄さんの指にある飴に触ったら、何でか知らないけどお兄さんがあわてて手を離したの。

どうして?

ママから貰った飴でしょう?

「ま、まっ!ままっ!!」

気がついたら、声がでてた。ここへ来てから使ってなかったから、忘れていたんだけれど。
ふいに、思い出した。
ずっとずっと前に、話していた言葉を。



それから、金色の髪の毛のお兄さんは、自分の名前を伝えてくれたけれど、何だか人間の使う言葉って、聞き取りにくくて。

「うぉれ?」

って、聞き返したと思う。そしたら、ニコって、ニコって!笑ってくれたの!ママと同じで、ほわほわって感じ。

嬉しい!嬉しい!!


ママに会わせてあげたいな。
そうだ、階段の下の大きなお部屋に連れていこう。

『ママにそっくりなお人形があるから、行こう?』
って、彼の手を引っ張ったの。
そうしたら、みんながついてきてくれて。

わぁ、なんだか楽しいな。
ずっとママとふたりぼっちだったから、こんなに楽しいの初めてだ!!


ふふーん、どう?大きいでしょ?僕のママはすっごくカッコいいんだよ!って気持ちで、いつもみたいにぎゅうーって抱きついて自慢したんだ。

それなのに、四人はママのお手々の《ご飯》にばっかり気を取られてて。


あれ?


何でだろう。ウォレと、緑のお兄さんが喧嘩始めちゃった。

えぇ?なんで?

すごく、嫌だな。ウォレも怖ーいお顔だし、緑のお兄さんもお顔のお色が白くなってるよ。



うーん。


ご飯、ほしかったのかなぁ?でも、あれは僕がここで生きていくために必要なの。大事なんだ。
だから、こっちの小さな飴なら、あげてもいいかなぁ。

えっと、こんなときは何て言うのだっけ?



「ど、どぅ、じょ!」

確か、こんな感じだった、ような気がするの。

そしたら、くれるの?って、言ったよ。
何だか、思い出してきた、かも。

でも、僕は人の言葉は、あんまり分かんない。


『美味しいから、食べてみてね!』

伝わったかなぁ?



しばらくしたら、ウォレ以外のみんなは、お部屋じゅうを歩いたり、見てたけど、ウォレは僕とお話をしてくれたの。優しいね!

「おなまえは?」

・・・。

・・・なまえ?って、なんだっけ。

確か、ずっと昔に、お父さんに、呼ばれていたのは。
「ひーたん、よ!」

そう。《ヒラム》って、あの女と村長が呼ぶのも、思い出した。

あれは、もう、忘れたい。

あぁ、そうだった。《ひぃちゃん》ってお父さんだけが、呼んでくれていたことを思い出したから。

なんでだろう、ウォレたちとお話をすると、ずーっとずーっと昔にあったこと、思い出して。


いい思い出も、嫌な思い出も。





それでね、ウォレたちとお話ししてたら、何となく分かったの。

ウォレ、なんと、「帰る」って、言ったの!!!



えぇ!?

帰ってしまうの?せっかく出会えたのに?


どうして?いやだ!すごくいやだ!!!!


僕のそばに、居てよ。


そう思ったら、僕の目は涙でいっぱいになった。


「か、ぇる、イヤぁ・・・うぉれ、カエ、ぃゃーの!ふわぁああん。」


帰ってほしくない。一緒にいたい。
こんなに楽しかったの、初めてだもの。
もっと、もっと、一緒にいたいよ。





さみしいよ。












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