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神聖陣が一層強く輝き、光の粒はフォレンたちの前で集まり、金色の何かが。現れた。
「あ、なた様は。」
いつも、身近にある。
いつも、それに向かって祈っている。そう、今も目の前に、美しい白い像を、崇拝している。
「創造神、ディーテ様?」
そう、口走った瞬間、4人はその場に両ひざを付き、頭を地面に擦り付けていた。
下界の人間風情が、その目に映して良い理由がない。4人は心臓を捕まれたような、息の仕方も忘れさせられたような、そんな感覚に襲われた。
『◇●&§―・・k◇◎※☆―◆◇◎※☆』
暖かいその声色に、鳥肌がたった。
それよりも、何よりも。
(あの子どもの言葉は、神のお使いになられる言葉だったのか?)
あり得ない。
これまで、ディーテ神教会の神官や司祭と仕事をすることも多かったが、ディーテ神そのものを見たことなどない。
あまつさえ、お言葉を聞けるなど。
4人はただ震え、怯えていたが。
ふと、頭上に暖かな熱を受けて、思わず顔を上げてしまった。
「・・・?」
すると、右手を翳し、穏やかな微笑みを向けている、ディーテ神の姿があった。
『・・・聞こえるか?今、そなた等に余の言語を理解できるよう加護を授けた。
―コレはそなた等について行きたいようだ。
しばらく、ここを出ることを赦すよ。
遊んでやれ。』
なんて美しい声。全身が沸騰するような感覚に襲われる。
「ッ!―ッハ!」
再び、頭を垂れる。
『ヒースヴェルト。初めて外に出られるな。
存分に楽しんでこい。』
『ママ、ありがとう。』
『ふふ。よいよい。』
少年のふにゃりとした笑顔を見て、アシュトは色々と思い悩む。突っ込みどころが多すぎる。
(おいおいおいっ!マジでディーテ神がこの子の母親なのかよ!
ってか、ディーテ様って女神?母親?違うよな?
性別ないって、昔読んだ教典に書いてたぞ?)
そして、ディランは二人の、まるで親子のような会話に心臓を抉られるような感覚を覚えた。だって、ということは。この子は。
『恐れながら、発言をさせていただいても?』
フォレンは、恐る恐る、頭を上げる。きっと、彼も同じ結論に至ったのだろう。思いきって、お声をかける。
『赦す』
『有り難き幸せ。―その、こちらの方は、人間の御子、とお見受け致します。
何故、この御神殿に?』
『ふむ。さてのぅ。何処から話せば良いか。
これの名はヒースヴェルト。今は余が育てておるよ。と言っても人の育て方など知らぬ故、所詮は真似事だがね。10年前、この遺跡に入り込んで来たのよ。
瞳は光を失い、両手は魔獣に喰い千切られた状態でね。』
(っ!!何て言う無惨な・・・。しかし、ここは大魔境・・・魔獣が人間の子どもなんて格好の餌を見逃すはずないんだ。
それでもこの遺跡に生きてたどり着いた。それだけでも、奇跡・・・っ。)
『まぁ、捨て置いても良かったがね。
・・・見えたのだ。』
『見えた・・・のですか?』
『うむ。余の加護を他よりもかなり多く授かり産まれ落ちた故、人どもは恐れをなして、これを捨てた。
失われた、これの瞳が見た光景が余にも見えてしまった。
余の所為だと、ふと思ったが最後。余はこれを癒しておったよ。』
人の、なんと身勝手なことか。
フォレンは怒りに震える拳を、固く握った。
『それから、これとここで暮らし始めたがね。
余は人の言葉など知らぬし、生み出せるのは砡しか無いからの。
砡を与えて育ててやったのよ。
可愛く育っただろう?余にかかれば子育ての真似事など容易い容易い。』
カラカラと笑うディーテ神だったが、気になる発言がいくつか。
『ヒースヴェルト、様は。
その、砡をその身に直接授かりながら、生き永らえた、と、いうことでしょうか。』
そういうことならば、あり得ない話ではない。砡の恩恵を多く受けた者は、少しの糧があれば生きていけるらしい。
西の国の高原に住むエルフなどが、それにあたる。
『・・・?一度下界で見たことがある。
親は子に、このように丸い物を口に入れて喜ばせる。確か、飴、とか。
のう?ヒースヴェルトよ。』
そう言うと、ディーテは手のひらに砡の欠片を生み出した。
それは、先程フォレンとアシュトが譲ってもらった、砡の欠片と同じもので。
『うん。ぼくは飴大好きだよ。
ママのくれる飴で、元気いっぱいになるもの。
ねぇ、ママの飴頂戴?さっき、ウォレたちに一つずつあげたの。
欲しそうだったから!ふふっ。可笑しいね、大人の人間なのに飴が欲しいなんて!』
(待て待て待て待てっ!何つった?今何つった!?え、この砡の欠片って食べれるの?え、何かのジョーク?神ジョーク?)
アシュトは必死に頭を回転させ、顔は真っ青になっていた。
『そっ、その、なかなか独創的で、ざっ、斬新な子育てで、感激致しましたっ!』
誉められた、と思ったのか、ディーテ神は得意そうにフフン、と鼻で笑う。
『そうであろう。だが、こうして外界のそなたらがここへ来たのも、ヒースヴェルトも外の世界を見るいい機会やもしれぬ。』
『それは、我らとこの大魔境を抜け、人里へ赴くと?』
『そなた等は余が産む砡を良く心得、上手く使うておる。
これを任せて、良いと判断したまで。これにも一度、人の世を体験させても良いかと思う。
そなたらの旅に連れて行け。下界で言うところの・・・2ヶ月。60の日の後の朝、ここへ連れて帰れ。良いな。』
『かっ、畏まりました!!!』
4人は声を揃えて答えると、ディーテ神が再び光の粒となって消えるまで、動けなかった。
「あ、なた様は。」
いつも、身近にある。
いつも、それに向かって祈っている。そう、今も目の前に、美しい白い像を、崇拝している。
「創造神、ディーテ様?」
そう、口走った瞬間、4人はその場に両ひざを付き、頭を地面に擦り付けていた。
下界の人間風情が、その目に映して良い理由がない。4人は心臓を捕まれたような、息の仕方も忘れさせられたような、そんな感覚に襲われた。
『◇●&§―・・k◇◎※☆―◆◇◎※☆』
暖かいその声色に、鳥肌がたった。
それよりも、何よりも。
(あの子どもの言葉は、神のお使いになられる言葉だったのか?)
あり得ない。
これまで、ディーテ神教会の神官や司祭と仕事をすることも多かったが、ディーテ神そのものを見たことなどない。
あまつさえ、お言葉を聞けるなど。
4人はただ震え、怯えていたが。
ふと、頭上に暖かな熱を受けて、思わず顔を上げてしまった。
「・・・?」
すると、右手を翳し、穏やかな微笑みを向けている、ディーテ神の姿があった。
『・・・聞こえるか?今、そなた等に余の言語を理解できるよう加護を授けた。
―コレはそなた等について行きたいようだ。
しばらく、ここを出ることを赦すよ。
遊んでやれ。』
なんて美しい声。全身が沸騰するような感覚に襲われる。
「ッ!―ッハ!」
再び、頭を垂れる。
『ヒースヴェルト。初めて外に出られるな。
存分に楽しんでこい。』
『ママ、ありがとう。』
『ふふ。よいよい。』
少年のふにゃりとした笑顔を見て、アシュトは色々と思い悩む。突っ込みどころが多すぎる。
(おいおいおいっ!マジでディーテ神がこの子の母親なのかよ!
ってか、ディーテ様って女神?母親?違うよな?
性別ないって、昔読んだ教典に書いてたぞ?)
そして、ディランは二人の、まるで親子のような会話に心臓を抉られるような感覚を覚えた。だって、ということは。この子は。
『恐れながら、発言をさせていただいても?』
フォレンは、恐る恐る、頭を上げる。きっと、彼も同じ結論に至ったのだろう。思いきって、お声をかける。
『赦す』
『有り難き幸せ。―その、こちらの方は、人間の御子、とお見受け致します。
何故、この御神殿に?』
『ふむ。さてのぅ。何処から話せば良いか。
これの名はヒースヴェルト。今は余が育てておるよ。と言っても人の育て方など知らぬ故、所詮は真似事だがね。10年前、この遺跡に入り込んで来たのよ。
瞳は光を失い、両手は魔獣に喰い千切られた状態でね。』
(っ!!何て言う無惨な・・・。しかし、ここは大魔境・・・魔獣が人間の子どもなんて格好の餌を見逃すはずないんだ。
それでもこの遺跡に生きてたどり着いた。それだけでも、奇跡・・・っ。)
『まぁ、捨て置いても良かったがね。
・・・見えたのだ。』
『見えた・・・のですか?』
『うむ。余の加護を他よりもかなり多く授かり産まれ落ちた故、人どもは恐れをなして、これを捨てた。
失われた、これの瞳が見た光景が余にも見えてしまった。
余の所為だと、ふと思ったが最後。余はこれを癒しておったよ。』
人の、なんと身勝手なことか。
フォレンは怒りに震える拳を、固く握った。
『それから、これとここで暮らし始めたがね。
余は人の言葉など知らぬし、生み出せるのは砡しか無いからの。
砡を与えて育ててやったのよ。
可愛く育っただろう?余にかかれば子育ての真似事など容易い容易い。』
カラカラと笑うディーテ神だったが、気になる発言がいくつか。
『ヒースヴェルト、様は。
その、砡をその身に直接授かりながら、生き永らえた、と、いうことでしょうか。』
そういうことならば、あり得ない話ではない。砡の恩恵を多く受けた者は、少しの糧があれば生きていけるらしい。
西の国の高原に住むエルフなどが、それにあたる。
『・・・?一度下界で見たことがある。
親は子に、このように丸い物を口に入れて喜ばせる。確か、飴、とか。
のう?ヒースヴェルトよ。』
そう言うと、ディーテは手のひらに砡の欠片を生み出した。
それは、先程フォレンとアシュトが譲ってもらった、砡の欠片と同じもので。
『うん。ぼくは飴大好きだよ。
ママのくれる飴で、元気いっぱいになるもの。
ねぇ、ママの飴頂戴?さっき、ウォレたちに一つずつあげたの。
欲しそうだったから!ふふっ。可笑しいね、大人の人間なのに飴が欲しいなんて!』
(待て待て待て待てっ!何つった?今何つった!?え、この砡の欠片って食べれるの?え、何かのジョーク?神ジョーク?)
アシュトは必死に頭を回転させ、顔は真っ青になっていた。
『そっ、その、なかなか独創的で、ざっ、斬新な子育てで、感激致しましたっ!』
誉められた、と思ったのか、ディーテ神は得意そうにフフン、と鼻で笑う。
『そうであろう。だが、こうして外界のそなたらがここへ来たのも、ヒースヴェルトも外の世界を見るいい機会やもしれぬ。』
『それは、我らとこの大魔境を抜け、人里へ赴くと?』
『そなた等は余が産む砡を良く心得、上手く使うておる。
これを任せて、良いと判断したまで。これにも一度、人の世を体験させても良いかと思う。
そなたらの旅に連れて行け。下界で言うところの・・・2ヶ月。60の日の後の朝、ここへ連れて帰れ。良いな。』
『かっ、畏まりました!!!』
4人は声を揃えて答えると、ディーテ神が再び光の粒となって消えるまで、動けなかった。
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