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18.兄2人(4)

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 「ルヴィ。俺とバルトロメオはこれから忙しくなる」

 いつもどおり、ソファーの上でシルヴィアを膝に抱きかかえながらカルロが言う。もう少年とは言いがたい風貌のカルロに、少し大人びてきたシルヴィアが抱きかかえられている姿は、兄妹とは言いがたい。
 この二人が恋仲でないなど、バルトロメオ以外の誰が信じるだろう。シルヴィアにもカルロにも、それとなく苦言を呈してはいるものの、二人は全く聞く耳を持たない。流石に今回はカルロのほうが自重するかと思ったが、全く普段と変わらない。この状態で公の場に出ることもないのであまり厳しくは言ってこなかったが、そろそろ本格的にまずい気がする。
 
 そんなバルトロメオの胸中を知らず、目の前の二人はその距離感で会話を続けている。

 「忙しくなる?領地のお仕事?お兄様も?」
 「いや、戦争に行く」
 「え?」

 カルロを見上げたまま、シルヴィアが固まる。その様子に気がついているだろうに、視線をあわさないままカルロが続ける。

 「帝国ここで、俺は上り詰める。そのために、バルトロメオが必要だ。しばらく俺に貸してくれ」
 「上り詰め……?」
 
 言葉は分かるのに、内容が理解できないシルヴィアが、呆然と問い返す。
 
 「誰よりも偉くなる、ってことだ。中々会いに来られなくなるけど、そう長くは待たせないつもりだ」

 そうじゃなくて、と言いたいが口がぱくぱくするばかりで言葉にならない。助けを求めるようにバルトロメオに視線を投げるが、シルヴィアの視線を受け止めたバルトロメオは、少し諦めたよう笑みを浮かべて頷くばかりで、シルヴィアの望む回答をくれない。

 「敵も多くなりそうだから、ルヴィ、あんまり外に出ないで。それから、貴族連中には出来るだけ姿を見せないようにしていて」

 シルヴィアの戸惑いに頓着せずに、カルロが更に続ける。
 今度こそ発言の意味が分からずシルヴィアの口から「兄様」と情けない声が漏れた。

 「ルヴィ、久しぶりだし、街に下りよう。暫く行けなくなるかもしれないから」

 今までより変装は厳重にしてもらうけど、と付け足す。
 流石にシルヴィアにもはぐらかされたのは分かったが、カルロがこれ以上この話を続けたくない、という意図ももちろん分かる。今日の初めのあの凍ったような空気を思い出して、シルヴィアは追求の言葉を飲み込んだ。

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