55 / 56
第三章
(2)-2
しおりを挟む
「真白。露珠様の話、隠していることはないんでしょうね」
高藤が、大根の皮をむいている真白に声をかける。高藤は高藤で、露珠があれだけ反応する狼の匂いに、真白が全く気付かないということがあるのか、という疑念があったのだ。
真白は、食事を作る前に、家令の用意した湯を使い、露珠が用意していた新しい着物に袖を通している。六花の模様のあしらわれたそれは、牙鬼への貢物の中から露珠が選んで仕立てた物だ。
「……気が付かなかったの。犬だって言うから、そうなんだって。匂いだって、そんなに、気にならなかったし。四郎はね――!」
「四郎」
思わず口にしてしまった友人の名前を、平坦な声音で繰り返されて、真白はぴたりと口を噤む。
「雄ですか、その半妖は」
「えっと、うん、男の子……」
何故か「お友達」が男だとは考えていなかった高藤が、衝撃から立ち直れないでいると、厨の戸がそっと開かれ、露珠が顔を出した。
「真白。さっきはごめんなさい。帰ってくるなりあんな……。別に、狼と交流があったって、あなたが無事ならなんの問題もないのに」
と、そこまで言って真白の顔を見た露珠が、その涙に気が付いて駆け寄る。真白を抱きしめて涙をぬぐってやりながら、ごめんね、と露珠が繰り返すと、真白がふるふる、と首を横に振って「ちがうの」と小さく呟いた。
屋敷を出てもちゃんと暮らせている、という自信と、久しぶりに凍牙や露珠に会えるという嬉しさで、意気揚々と帰ってきた。それが、想像とは違う流れになってしまったので単純に悲しくなってしまったのだ。そして、そうなった理由が自分の考えが甘かったせいだと気が付いて、さらに落ち込んでいた。
露珠を始めとして、妖狐が狼を好まないのは知っていた。自分自身も決して好きなわけではなかったが、それは折角仲良くなれた友達を突き放すほどのものではなかった。犬の半妖だと言われて、疑わなかったわけではなかったけれど、それを見てみぬ振りをすることに大きな戸惑いはなかったのだ。露珠のことが頭に浮かんだこともあったけれど、言わなければそれが知られるとも思わなかったし、黙っていればいい、とそう考えた。露珠がこうも簡単にそれに気が付き、こんなにも大きな反応をするなんて思いもよらなかったのだ。露珠の嫌がることをしてしまった、という後悔が押し寄せてきていたところに、高藤の想定外の反応が加わって、遂に涙を零してしまったのだった。
「嘘ついてごめんなさい。露珠様」
狼の半妖かもしれないって、思ってた。と、泣きながら言う真白を抱きしめたまま、露珠がもう一度「ごめんね」と囁く。
「狼だって、真白が嫌じゃなくて、仲良くできてるなら、何の問題もないの。嘘をつかせてごめんね」少し身体を離して、露珠が真白の涙を拭う。「その子との話を聞かせて。他にも、仲良くなった者はいるの?義明は、良くしてくれている?」
露珠の問いかけに頷きながら、短く答えているうちに、段々と真白に笑顔が戻る。その様子を見ていた高藤が、声をかける。
「続きは食事の時か、作りながらにしましょう。そうでないと今夜中に食事にありつけませんよ」
露珠が一緒に作る、と言うので、いつかのように真白と露珠が並んで厨に立つ。高藤もそこに混じって、三人で食事を作るのを見て、家令は厨をそっと出た。
真白が料理をし始めた頃はまだ幼かった。露珠はあまり料理が得意ではないし、料理を覚えようとする真白には高藤か家令が付きっ切りだった。屋敷を出る前には、一通り料理ができるようにはなっていたが、その頃に比べても手際も良くなり、作るものの種類も増えている。
高藤が、それを褒めると、真白は今でこそ社のある神域内で夜を過ごすことが多いが、始めの頃は義明の家やその縁者の家に世話になることが多く、その時に炊事場に出入りしてヒトに教えてもらったという。
「夜は一人で過ごしているの?」
てっきり、常に義明かその縁者の世話になっていると思っていた、と露珠が言う。
「ううん。一人のことはあんまりないかも。お社の傍で、皆で寝てる。義明さんも、皆良くしてくれるけど、お家帰れない友達もいるし、皆で一緒に居たほうがいいかなって。私がいれば、お社の傍で寝泊りできるし」
神域内には、露珠を祭る社の他に牙鬼を祭る社も建ててある。その他に、真白が生活できるように小さな家も建てられている。遷都して幾年、一度も姿を見せなかった守り神が姿を見せ、その妻の存在も明らかになったことは、帝を始めとして、都の者を安堵させた。それが帝の使者であった義明を助けたとあって、遷都の経緯から鬼神の機嫌を図りかねていた帝とその周囲は大いに喜んだ。露珠の約束どおり、露珠のためだけの社を建てつつ、牙鬼に対しても礼を尽くす形で新たに社を建てたのだ。
真白のための家は、小さいながらも快適に調えられていて、どうやらそこに、行き場のないヒトや半妖の子供が集まっているらしい。
一緒に生活しているのであれば、狼の匂いが付くのも納得がいく。狼の半妖とだけ特別に親しい訳ではないということに、高藤を始め皆ほっとする。露珠だけは、そこに少しだけ残念な気持ちがないわけではないが、やはり、相手は狼でないほうがいい。
「四郎がね、一番最後に来たんだよ。ぼろぼろで、神域の外で何日か寝泊りしてたみたいだったから、真白がおいでって声かけたの」
招き入れた真白の元で暫く過ごした後、怪我や疲労が癒えてから一度出て行き、その後また戻って今度は、真白と一緒に生活している子供たちの面倒を見るようになったらしい。
後に四郎が真白に話したところによると、ヒトであった母が亡くなった後行く当てもなく彷徨っていたところに、真白が声をかけたらしい。母親はどうやら住んでいた村で何か罪を犯したらしく、村人に追われる形で村をでて亡くなったらしい。その辺りは四郎が話したがらないので、真白も詳しく聞いてはいないという。
その後、作った食事を皆で囲みながら、真白は義明たちとのやり取りや、一緒に生活している子供たち、参拝に来る人々との話を楽しそうに話す。特に子供たちとの関係は、巫女と孤児、ヒトと半妖という立場や種類を超えて友情を育んでいるようだ。ヒトだけでなく他の半妖とも交流があるのは真白の寿命を考えても良いことだ。
真白が目を輝かせて話す様子を、露珠は目を細めて見つめる。想像以上に上手くやれているようで安心するが、寂しさがないといったら嘘になる。いずれ、真白は露珠の年齢を超える。生まれてからの経過年数という意味ではない。寿命の差は、そのまま成熟までの早さの差でもある。ずっと手元には置いておけない、と分かっていたけれど、やはり寂しい気持ちは拭えない。
真白を見ている露珠の様子を 凍牙はそっと眺めていた。
高藤が、大根の皮をむいている真白に声をかける。高藤は高藤で、露珠があれだけ反応する狼の匂いに、真白が全く気付かないということがあるのか、という疑念があったのだ。
真白は、食事を作る前に、家令の用意した湯を使い、露珠が用意していた新しい着物に袖を通している。六花の模様のあしらわれたそれは、牙鬼への貢物の中から露珠が選んで仕立てた物だ。
「……気が付かなかったの。犬だって言うから、そうなんだって。匂いだって、そんなに、気にならなかったし。四郎はね――!」
「四郎」
思わず口にしてしまった友人の名前を、平坦な声音で繰り返されて、真白はぴたりと口を噤む。
「雄ですか、その半妖は」
「えっと、うん、男の子……」
何故か「お友達」が男だとは考えていなかった高藤が、衝撃から立ち直れないでいると、厨の戸がそっと開かれ、露珠が顔を出した。
「真白。さっきはごめんなさい。帰ってくるなりあんな……。別に、狼と交流があったって、あなたが無事ならなんの問題もないのに」
と、そこまで言って真白の顔を見た露珠が、その涙に気が付いて駆け寄る。真白を抱きしめて涙をぬぐってやりながら、ごめんね、と露珠が繰り返すと、真白がふるふる、と首を横に振って「ちがうの」と小さく呟いた。
屋敷を出てもちゃんと暮らせている、という自信と、久しぶりに凍牙や露珠に会えるという嬉しさで、意気揚々と帰ってきた。それが、想像とは違う流れになってしまったので単純に悲しくなってしまったのだ。そして、そうなった理由が自分の考えが甘かったせいだと気が付いて、さらに落ち込んでいた。
露珠を始めとして、妖狐が狼を好まないのは知っていた。自分自身も決して好きなわけではなかったが、それは折角仲良くなれた友達を突き放すほどのものではなかった。犬の半妖だと言われて、疑わなかったわけではなかったけれど、それを見てみぬ振りをすることに大きな戸惑いはなかったのだ。露珠のことが頭に浮かんだこともあったけれど、言わなければそれが知られるとも思わなかったし、黙っていればいい、とそう考えた。露珠がこうも簡単にそれに気が付き、こんなにも大きな反応をするなんて思いもよらなかったのだ。露珠の嫌がることをしてしまった、という後悔が押し寄せてきていたところに、高藤の想定外の反応が加わって、遂に涙を零してしまったのだった。
「嘘ついてごめんなさい。露珠様」
狼の半妖かもしれないって、思ってた。と、泣きながら言う真白を抱きしめたまま、露珠がもう一度「ごめんね」と囁く。
「狼だって、真白が嫌じゃなくて、仲良くできてるなら、何の問題もないの。嘘をつかせてごめんね」少し身体を離して、露珠が真白の涙を拭う。「その子との話を聞かせて。他にも、仲良くなった者はいるの?義明は、良くしてくれている?」
露珠の問いかけに頷きながら、短く答えているうちに、段々と真白に笑顔が戻る。その様子を見ていた高藤が、声をかける。
「続きは食事の時か、作りながらにしましょう。そうでないと今夜中に食事にありつけませんよ」
露珠が一緒に作る、と言うので、いつかのように真白と露珠が並んで厨に立つ。高藤もそこに混じって、三人で食事を作るのを見て、家令は厨をそっと出た。
真白が料理をし始めた頃はまだ幼かった。露珠はあまり料理が得意ではないし、料理を覚えようとする真白には高藤か家令が付きっ切りだった。屋敷を出る前には、一通り料理ができるようにはなっていたが、その頃に比べても手際も良くなり、作るものの種類も増えている。
高藤が、それを褒めると、真白は今でこそ社のある神域内で夜を過ごすことが多いが、始めの頃は義明の家やその縁者の家に世話になることが多く、その時に炊事場に出入りしてヒトに教えてもらったという。
「夜は一人で過ごしているの?」
てっきり、常に義明かその縁者の世話になっていると思っていた、と露珠が言う。
「ううん。一人のことはあんまりないかも。お社の傍で、皆で寝てる。義明さんも、皆良くしてくれるけど、お家帰れない友達もいるし、皆で一緒に居たほうがいいかなって。私がいれば、お社の傍で寝泊りできるし」
神域内には、露珠を祭る社の他に牙鬼を祭る社も建ててある。その他に、真白が生活できるように小さな家も建てられている。遷都して幾年、一度も姿を見せなかった守り神が姿を見せ、その妻の存在も明らかになったことは、帝を始めとして、都の者を安堵させた。それが帝の使者であった義明を助けたとあって、遷都の経緯から鬼神の機嫌を図りかねていた帝とその周囲は大いに喜んだ。露珠の約束どおり、露珠のためだけの社を建てつつ、牙鬼に対しても礼を尽くす形で新たに社を建てたのだ。
真白のための家は、小さいながらも快適に調えられていて、どうやらそこに、行き場のないヒトや半妖の子供が集まっているらしい。
一緒に生活しているのであれば、狼の匂いが付くのも納得がいく。狼の半妖とだけ特別に親しい訳ではないということに、高藤を始め皆ほっとする。露珠だけは、そこに少しだけ残念な気持ちがないわけではないが、やはり、相手は狼でないほうがいい。
「四郎がね、一番最後に来たんだよ。ぼろぼろで、神域の外で何日か寝泊りしてたみたいだったから、真白がおいでって声かけたの」
招き入れた真白の元で暫く過ごした後、怪我や疲労が癒えてから一度出て行き、その後また戻って今度は、真白と一緒に生活している子供たちの面倒を見るようになったらしい。
後に四郎が真白に話したところによると、ヒトであった母が亡くなった後行く当てもなく彷徨っていたところに、真白が声をかけたらしい。母親はどうやら住んでいた村で何か罪を犯したらしく、村人に追われる形で村をでて亡くなったらしい。その辺りは四郎が話したがらないので、真白も詳しく聞いてはいないという。
その後、作った食事を皆で囲みながら、真白は義明たちとのやり取りや、一緒に生活している子供たち、参拝に来る人々との話を楽しそうに話す。特に子供たちとの関係は、巫女と孤児、ヒトと半妖という立場や種類を超えて友情を育んでいるようだ。ヒトだけでなく他の半妖とも交流があるのは真白の寿命を考えても良いことだ。
真白が目を輝かせて話す様子を、露珠は目を細めて見つめる。想像以上に上手くやれているようで安心するが、寂しさがないといったら嘘になる。いずれ、真白は露珠の年齢を超える。生まれてからの経過年数という意味ではない。寿命の差は、そのまま成熟までの早さの差でもある。ずっと手元には置いておけない、と分かっていたけれど、やはり寂しい気持ちは拭えない。
真白を見ている露珠の様子を 凍牙はそっと眺めていた。
0
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる