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第二章
(3)-2
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立ち止まった露珠の前に、高藤が飛び出して構える。すぐにでも攻撃に移りそうな高藤を通り越して、凍牙の偽者は露珠に声をかける。
高藤の問いを無視して話すその男は、再び、その姿を元に戻す。
相手を見たまま固まっていた露珠が一瞬目を見開いた後笑みを浮かべ、目の前の男に走り寄る。高藤が制止しようとするより先に、興奮で少し上擦った露珠の声が響く。
「お兄様!ご無事でいらっしゃったのですね!」
兄と呼んだその相手を見上げてその腕を取った露珠は、とても心配していたのだ、と伝えつつ、腕を引いて中へ入るよう促す。
来訪者を告げられたときとは打って変わって、不審に思う気持ちが欠片もない様子の露珠に、高藤は内心警戒を高める。
凍牙が不在のときにやってきたこの訪問者。兄妹どころか銀露一族にすら見えない見た目の――それも恐らくかなり強い――妖をあっさりと屋敷内に招き入れたことに、高藤は危機感を抱く。露珠があの様子だから、先手で攻撃をすることは出来ないが、目を離すわけにはいかない。高藤はいつでも攻撃できる間合いを保ちつつ、案内する露珠を追った。
心底嬉しそうに自分に話しかけながら前を歩く露珠に、露霞はここへ来るまでの経緯を思い出していた。
銀露がいる、という噂が、露珠が外に出たことで移動した先々に流れていた。それを耳にして、露霞が興味本位で調べてみたところ、どうやら妹が、望まぬ婚姻で大雪山を出され、鬼に囲われているらしいと知った。噂の銀露は瀕死で、逃げ出したものの鬼に連れ戻された、ということだったから、場合によっては助けてやろうとさえ思って、牙鬼の居所を訪れた。大雪山を出た頃ではどうしようもなかっただろうが、今なら鬼とも対等に渡り合える自信がある。
川原で露珠を見つけたときには、妖とヒトに挟まれて難儀しているようだったので、夫である凍牙に露珠が叱責されずに済むよう噂に聞く凍牙に変化して一芝居打ってやった。露珠には相当警戒されたが、首尾は上々だったと思う。
しかし、屋敷に来て、助けてやろうと思ったはずの妹の無事を見て、安堵よりも苛立ちが先にきた。少し皮肉な態度を取ってしまったし、川原でのやりとりから、否定的な対応が返ってくるかと思っていたが、露珠は少々驚いた様子だったもののすぐに笑みを浮かべ、自分に走り寄ってきた。嬉しく思う反面、初めは警戒していたはずの露霞をあっさりと兄と認めてしまう無用心さも、無性に腹立たしい。そもそも、露珠は兄についての記憶さえないはずだ。 攻撃の間合いを巧妙に維持しながら着いてくる高藤のほうが、まだ親しみを感じられるほどだ。
広間に露霞を通し、露珠が自ら菓子を用意し茶を振舞う。以前ほど使用人がいない今、通常であれば家令か高藤がそうするところだが、家令は真白に付き添わせているし、高藤は決して露珠を露霞と二人きりにするつもりがなく、結果そうなった。
「お兄様、今までどちらに?大雪山に顔を見せに戻られたりは……?」
矢継ぎ早に問いかける露珠を、露霞は苦笑しつつなだめる。
「そんなに質問攻めにしてくれるな。時間に限りがあるわけでもない……お前の夫の許可さえあればね。そういえば、夫君はどちらに?」
穏かな表情と声音を保って、露霞が問う。探られている、と警戒する高藤にちらりと視線を投げて挑発しつつ、露珠に答えを促す。その微妙なやり取りを気に留めない露珠は、兄との会話を喜んでいる様子だ。
「今は少し出ていて。牙鬼の縄張りは広いですし、最近は様子のおかしい妖が多いらしく、留守がちで」
「様子のおかしい妖、ね。ここに来るまでそれらしい物を見たかもしれない。基本的には避けて通ってきたから、詳しくはわからないけれど……そうだね、来歴が不明、という感じかな」
「来歴が不明?」
「そう。大抵の妖なら、見た目か、もしくは接触すればおおよそ何の妖か分かる。だがあいつらは何の妖か全くわからなかったな。草木か、動物か、物か……も見た目じゃ判別できなかった。しかも、気配は鬼に近い。鬼の出来損ない、が一番しっくりくるが、見た目がかけ離れていてとてもそうとは思えなかった」
「鬼の出来損ない……」
凍牙が日常的に相対しているのが鬼に準ずるものかもしれない、という情報は、露珠を不安にさせる。
表情の曇った露珠を見て、露霞が鼻を鳴らす。
「心配なのかい?凍牙が」
「もちろんです。お強い方ですが、それでも……」
「瀕死の銀露を鬼が連れ戻した、と噂に聞いたのだが、逃げ出したわけではなかったのかい?」
「いえ、あれは……私の早とちりで皆様にご迷惑を」
露珠が、事の次第をかいつまんで説明する。詳細を話すのは恥ずかしさが勝るので、ちょっとした誤解で家を出たけれど、大蛇との一戦で消耗して人里に匿われていたのを凍牙が見つけて助けてくれた、程度に留めた。
「ふうん。お前も急に思い切ったことをするものだね。普通、その手前で色々話し合ったりするものだけど」
「それは、はい。お恥ずかしい限りです」
「怠惰だよね、基本的に。銀露全体がそうだけど」
「え?」
「いや、なんでもない。それより、大蛇と戦ったといっていたけど、負けたの?」
「はい」
ふうん、と探るように目を細められて、露珠はそわそわと居心地の悪い思いをする。抵抗する気がそもそもなかった、とはいえないし、紅玉を失っていたことも伝えていない。
「大蛇相手にそこまで苦戦するかね?負けたのに無事というのも良くわからないな。血は?」
「恐らくほとんど大蛇が摂取したものと。ほとんど意識がない状態で連れまわされていて、気がついたときにはヒトに保護されていました」
「なるほどね。大蛇も牙鬼の動向を気にしてはいたってことか。それで?その大蛇は凍牙が殺したの?」
「いえ。凍牙様も、血を摂取した大蛇をそのままにはしておけないと仰っていたのですが、見つからなかったと」
露霞が難しい顔で考え込む。
「お兄様?」
「銀露の血を大量摂取したような妖を、凍牙が見逃すとは思えなくてね。まあいいや」
凍牙を呼び捨てにするたびに高藤がピリピリとした殺気を放つのを、露霞は受け流す。露珠にではなく、凍牙に忠誠を誓っているのであろう高藤が、口を挟んだり攻撃したりしてこないことに、露珠のこの屋敷での立場が垣間見える。
自分が家を出たときの話をこれ以上続けたくない露珠は、兄の話を強請る。
「お兄様のお話も聞かせてください。大雪山を出た後はどのように?」
色々あった。と濁しつつ、露霞は東の地で過ごしていたことと、最近までは友と暮らしていたことを掻い摘んで話す。その友が亡くなったため、特に目的を定めずふらふらしているところで、銀露の噂を聞いてここにたどり着いたという。親しくしていたという友を亡くしたと聞いた露珠が、沈痛な面持ちでお悔やみを告げると、露霞は「手を尽くしたが助けられなかった。まあ、おかげで力を得ることができたから、悪いことばかりではなかった」と言ったが、今まで完璧に制御していたであろう表情がほんの少し崩れたのを、露珠は複雑な思いで見ていた。
銀露であれば、「手を尽くして」相手を助けられない、と言うことは滅多におきない。白露か、血か、最悪紅玉を使えば「自分だけ生き残って相手が死んでしまう」と言う状況は起こりえない。亡くした友が、紅玉を使う程ではなかったか、そうでなかったのならば――。
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兄と呼んだその相手を見上げてその腕を取った露珠は、とても心配していたのだ、と伝えつつ、腕を引いて中へ入るよう促す。
来訪者を告げられたときとは打って変わって、不審に思う気持ちが欠片もない様子の露珠に、高藤は内心警戒を高める。
凍牙が不在のときにやってきたこの訪問者。兄妹どころか銀露一族にすら見えない見た目の――それも恐らくかなり強い――妖をあっさりと屋敷内に招き入れたことに、高藤は危機感を抱く。露珠があの様子だから、先手で攻撃をすることは出来ないが、目を離すわけにはいかない。高藤はいつでも攻撃できる間合いを保ちつつ、案内する露珠を追った。
心底嬉しそうに自分に話しかけながら前を歩く露珠に、露霞はここへ来るまでの経緯を思い出していた。
銀露がいる、という噂が、露珠が外に出たことで移動した先々に流れていた。それを耳にして、露霞が興味本位で調べてみたところ、どうやら妹が、望まぬ婚姻で大雪山を出され、鬼に囲われているらしいと知った。噂の銀露は瀕死で、逃げ出したものの鬼に連れ戻された、ということだったから、場合によっては助けてやろうとさえ思って、牙鬼の居所を訪れた。大雪山を出た頃ではどうしようもなかっただろうが、今なら鬼とも対等に渡り合える自信がある。
川原で露珠を見つけたときには、妖とヒトに挟まれて難儀しているようだったので、夫である凍牙に露珠が叱責されずに済むよう噂に聞く凍牙に変化して一芝居打ってやった。露珠には相当警戒されたが、首尾は上々だったと思う。
しかし、屋敷に来て、助けてやろうと思ったはずの妹の無事を見て、安堵よりも苛立ちが先にきた。少し皮肉な態度を取ってしまったし、川原でのやりとりから、否定的な対応が返ってくるかと思っていたが、露珠は少々驚いた様子だったもののすぐに笑みを浮かべ、自分に走り寄ってきた。嬉しく思う反面、初めは警戒していたはずの露霞をあっさりと兄と認めてしまう無用心さも、無性に腹立たしい。そもそも、露珠は兄についての記憶さえないはずだ。 攻撃の間合いを巧妙に維持しながら着いてくる高藤のほうが、まだ親しみを感じられるほどだ。
広間に露霞を通し、露珠が自ら菓子を用意し茶を振舞う。以前ほど使用人がいない今、通常であれば家令か高藤がそうするところだが、家令は真白に付き添わせているし、高藤は決して露珠を露霞と二人きりにするつもりがなく、結果そうなった。
「お兄様、今までどちらに?大雪山に顔を見せに戻られたりは……?」
矢継ぎ早に問いかける露珠を、露霞は苦笑しつつなだめる。
「そんなに質問攻めにしてくれるな。時間に限りがあるわけでもない……お前の夫の許可さえあればね。そういえば、夫君はどちらに?」
穏かな表情と声音を保って、露霞が問う。探られている、と警戒する高藤にちらりと視線を投げて挑発しつつ、露珠に答えを促す。その微妙なやり取りを気に留めない露珠は、兄との会話を喜んでいる様子だ。
「今は少し出ていて。牙鬼の縄張りは広いですし、最近は様子のおかしい妖が多いらしく、留守がちで」
「様子のおかしい妖、ね。ここに来るまでそれらしい物を見たかもしれない。基本的には避けて通ってきたから、詳しくはわからないけれど……そうだね、来歴が不明、という感じかな」
「来歴が不明?」
「そう。大抵の妖なら、見た目か、もしくは接触すればおおよそ何の妖か分かる。だがあいつらは何の妖か全くわからなかったな。草木か、動物か、物か……も見た目じゃ判別できなかった。しかも、気配は鬼に近い。鬼の出来損ない、が一番しっくりくるが、見た目がかけ離れていてとてもそうとは思えなかった」
「鬼の出来損ない……」
凍牙が日常的に相対しているのが鬼に準ずるものかもしれない、という情報は、露珠を不安にさせる。
表情の曇った露珠を見て、露霞が鼻を鳴らす。
「心配なのかい?凍牙が」
「もちろんです。お強い方ですが、それでも……」
「瀕死の銀露を鬼が連れ戻した、と噂に聞いたのだが、逃げ出したわけではなかったのかい?」
「いえ、あれは……私の早とちりで皆様にご迷惑を」
露珠が、事の次第をかいつまんで説明する。詳細を話すのは恥ずかしさが勝るので、ちょっとした誤解で家を出たけれど、大蛇との一戦で消耗して人里に匿われていたのを凍牙が見つけて助けてくれた、程度に留めた。
「ふうん。お前も急に思い切ったことをするものだね。普通、その手前で色々話し合ったりするものだけど」
「それは、はい。お恥ずかしい限りです」
「怠惰だよね、基本的に。銀露全体がそうだけど」
「え?」
「いや、なんでもない。それより、大蛇と戦ったといっていたけど、負けたの?」
「はい」
ふうん、と探るように目を細められて、露珠はそわそわと居心地の悪い思いをする。抵抗する気がそもそもなかった、とはいえないし、紅玉を失っていたことも伝えていない。
「大蛇相手にそこまで苦戦するかね?負けたのに無事というのも良くわからないな。血は?」
「恐らくほとんど大蛇が摂取したものと。ほとんど意識がない状態で連れまわされていて、気がついたときにはヒトに保護されていました」
「なるほどね。大蛇も牙鬼の動向を気にしてはいたってことか。それで?その大蛇は凍牙が殺したの?」
「いえ。凍牙様も、血を摂取した大蛇をそのままにはしておけないと仰っていたのですが、見つからなかったと」
露霞が難しい顔で考え込む。
「お兄様?」
「銀露の血を大量摂取したような妖を、凍牙が見逃すとは思えなくてね。まあいいや」
凍牙を呼び捨てにするたびに高藤がピリピリとした殺気を放つのを、露霞は受け流す。露珠にではなく、凍牙に忠誠を誓っているのであろう高藤が、口を挟んだり攻撃したりしてこないことに、露珠のこの屋敷での立場が垣間見える。
自分が家を出たときの話をこれ以上続けたくない露珠は、兄の話を強請る。
「お兄様のお話も聞かせてください。大雪山を出た後はどのように?」
色々あった。と濁しつつ、露霞は東の地で過ごしていたことと、最近までは友と暮らしていたことを掻い摘んで話す。その友が亡くなったため、特に目的を定めずふらふらしているところで、銀露の噂を聞いてここにたどり着いたという。親しくしていたという友を亡くしたと聞いた露珠が、沈痛な面持ちでお悔やみを告げると、露霞は「手を尽くしたが助けられなかった。まあ、おかげで力を得ることができたから、悪いことばかりではなかった」と言ったが、今まで完璧に制御していたであろう表情がほんの少し崩れたのを、露珠は複雑な思いで見ていた。
銀露であれば、「手を尽くして」相手を助けられない、と言うことは滅多におきない。白露か、血か、最悪紅玉を使えば「自分だけ生き残って相手が死んでしまう」と言う状況は起こりえない。亡くした友が、紅玉を使う程ではなかったか、そうでなかったのならば――。
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