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第一章
エピローグ
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庭で、子供のはしゃぐ声がする。
真っ白な狐が、草の上に仰向けに転んだ真白の腹を鼻でつついて、その度に真白がきゃはきゃはと笑い声を上げる。
そのまま転がっているのかと思えば、急に立ち上がって走り出し、傍に座っていた乱牙の体当たりを食らわす。「なにすんだよ!」と抗議した乱牙が真白を逆に転がしてくすぐると、そこに白狐も加わって真白と共に乱牙を追い回す。
障子を開け放った部屋から、庭で遊ぶ3人を、凍牙はまぶしいものかのように目を細めて見ている。
真白は大分ここでの暮らしにも慣れたようで、凍牙よりもむしろ乱牙に遠慮がない。露珠も真白に構いたがるので、大抵、露珠と乱牙が真白の相手をすることになる。
露珠は、真白と遊ぶために以前は何故か恥ずかしがってほとんどしたことのなかった変化も、このところ気にせずするようになっていた。
一際高い笑い声が響いて、凍牙は口元を緩ませ、視線を手元に落とした。
くるり、と白い狐が凍牙を振り返り、走り寄ってくる。
部屋の手前で変化を解いた露珠が、凍牙に手を差し出す。
意表をつかれた凍牙がゆっくりと顔をあげると、悪戯に成功した少女の様な笑顔の露珠と目が合う。差し出された手を取って立ち上がると、最後にわざと強く手を引き、胸に飛び込んできた露珠を抱きとめる。
抗議の意を込めた視線を笑顔で受け止めると、露珠も思わず顔をほころばせて笑う。
見つめ合う銀色の瞳は、陽光と出会った大雪山の雪のように穏やかにきらめいていた。
真っ白な狐が、草の上に仰向けに転んだ真白の腹を鼻でつついて、その度に真白がきゃはきゃはと笑い声を上げる。
そのまま転がっているのかと思えば、急に立ち上がって走り出し、傍に座っていた乱牙の体当たりを食らわす。「なにすんだよ!」と抗議した乱牙が真白を逆に転がしてくすぐると、そこに白狐も加わって真白と共に乱牙を追い回す。
障子を開け放った部屋から、庭で遊ぶ3人を、凍牙はまぶしいものかのように目を細めて見ている。
真白は大分ここでの暮らしにも慣れたようで、凍牙よりもむしろ乱牙に遠慮がない。露珠も真白に構いたがるので、大抵、露珠と乱牙が真白の相手をすることになる。
露珠は、真白と遊ぶために以前は何故か恥ずかしがってほとんどしたことのなかった変化も、このところ気にせずするようになっていた。
一際高い笑い声が響いて、凍牙は口元を緩ませ、視線を手元に落とした。
くるり、と白い狐が凍牙を振り返り、走り寄ってくる。
部屋の手前で変化を解いた露珠が、凍牙に手を差し出す。
意表をつかれた凍牙がゆっくりと顔をあげると、悪戯に成功した少女の様な笑顔の露珠と目が合う。差し出された手を取って立ち上がると、最後にわざと強く手を引き、胸に飛び込んできた露珠を抱きとめる。
抗議の意を込めた視線を笑顔で受け止めると、露珠も思わず顔をほころばせて笑う。
見つめ合う銀色の瞳は、陽光と出会った大雪山の雪のように穏やかにきらめいていた。
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