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エルフのダンジョン
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今日は誰にも布団に潜られること無く目が覚めた。珍しいような少し残念なような……と思いながら朝の支度を完了させ食事を終えようとすると、
「そういえば」
フルルがこちらを見ながら口火を切る。
「今日は良く眠れましたか?」
「ああ。久しぶりに一人で寝たけどそれはそれで良いな」
「それは良かった」
ん? 何かフルルがしたのだろうか。そういえばリアンが少しむくれていたようだが……まあ些末なことか。自室に戻り準備を終えティタの元に集まる。
「準備は良いわね。それでは行きましょうか」
「ってどこに連れて行く気だよ。女王が簡単に里から出るわけには行かないだろ? 場所だけ教えてくれれば何とかするさ」
「心配ご無用よ。この里の中にあるからね」
……なんだって?
そうして案内されたのは以前フルルに絶対入るな、と言われたエルフの墓場だった。何でこんなところに? リアンやフルルの顔を窺うがどうやら分からないようだ。
「ここはエルフの墓。死んだエルフを悼み弔う場所。なのだけど、過去のエルフが現代のエルフを試す場、でもあるわ」
「つまり先祖に今の自分を評価してもらう所ってワケ? あまり気が進まないわね」
「俺も評価されることはなにもない。というか人間だけど良いのか?」
評価されても肝心の情報が入らないと意味がないのだが……。そう思っているとティタが、
「安心して。ここでは人もエルフも関係ないわ。あの方達、暇なのよ」
何だそれ。つまり、暇つぶしに付き合う代わりに報酬が貰えるって事か? ある意味太っ腹のような、暇人のような……。
「まあそういう事ね。死んだ後もこの場所から私達エルフの発展を見守って下さっているのだけど、たまには刺激が欲しいみたいでね……女王の役目の一つでもあるのだけど」
「ええ!? 私、女王になったらそんな事もやらないといけないんですか!?」
「安心なさい。数十年に一度位で良いわよ」
「全然安心できませんよ~」
母娘漫才を繰り広げながらティタは何かの封印を解いていく。すると魔法陣が現れた。乗れ、と言うことなのだろう。
「さあ、お話は終わりよ。ここから先は何が起こるかわからないわ。それでも行くのね?」
「当たり前だ。呪いが解けるかもしれない、という可能性が1%でもあるのなら」
「行かないわけには無いってね」
「私もお手伝いします!」
ティタが俺たち一人一人の顔を見つめ頷くと、魔法陣へと促された。
「それではご武運を……解けると良いわね、呪い」
「ああ」
その言葉をかわした所で転移が起きた。見た感じ普通の地下ダンジョンのようだが……
「ここ、何か変です……。多分ですけど作られた空間です……」
「どういうこと?」
「と言ってもうまく説明ができないんですけど……つまり、実際に地下のダンジョンに飛ばされたのではなく、そんな感じの空間に飛ばしただけです。だから、ええと……」
「普通のダンジョンと思っていると痛い目を見るって事か?」
「そうです! 階段を降りると次は青空の下に出るってくらい突拍子もないことが起きるかもしれません!」
「まあ、出来るだけ気をつけましょうか」
そう言って俺たちは歩き始めた。土の壁と天井に囲まれた車二台分の通路を進んでいくと、何かの気配……!
「早速お出ましか!」
現れたのはスケルトンの集団。取るに足らない雑魚……と侮っていると、
「コイツら……! 連携が上手すぎるぞ!?」
「能力も普通のスケルトンより高いわ! 何なの一体!」
「詠唱が……間に合いません!」
まるで機械のようにお互いの行動が分かっている……! そしてこちらの行動も読まれている! つまり!
「一旦引くぞ!」
殿を務めつつ逃亡。だが向こうも当然追いかけてくる。俺とローズはともかく、リアンは体力も足の速さも無い。
「つまり最初から逃げられるとは思ってないんだよ、骨!」
「詠唱の時間は稼ぎました! アクアランス!」
一転攻勢! 連携能力が高くとも個々の能力には当然差異がある。つまり足が遅い骨、速い骨がいるということだ。そしてこの狭い通路で追いかけるとなると、列になる必要がある。ということは連携の余地が無いという事。
「加えてリアンの貫通魔法により隙だらけってな。オラオラ! さっきは良くもやってくれたな!」
「う~わ、隙を突いたとはいえ凄い勢いで蹴散らしていくわね勇者様。悪役口調も似合っているわ」
「……本当に凄いです。さっき手こずっていた相手なのに。チャンスを完全に自分のものにして……とと、アクアスピア!」
最初は驚いたが冷静に対処すれば取るに足らない相手だった。だが初めの敵にしてはかなりキツイ相手でもあった。先が思いやられる。
「とはいえ、第一関門クリアだな」
「お疲れ様。怪我はない勇者様?」
「お前らの援護のおかげでな」
そうして歩いていくとまた魔法陣があった。
「階段じゃありませんでしたね」
「まあその代わりだろう」
躊躇せずに魔法陣に乗ると再び転移。目を開けると……
「溶岩地帯? 熱いわね……」
「リアンの言う通り突拍子もない所に連れて行かれたな」
「はい……それにしてもあと何回戦えば良いんでしょう?」
確かに。あと百回とか言われたら心が折れそうになるが……やるけどさ。そう思っているとフヨフヨと光の玉が漂ってきて光った。眩しさに目を閉じ、再び開けると快活そうなエルフの青年が立っていた。
「やっほー!」
「……やっほー」
何処と無く馬鹿っぽいな……。それはともかく、コイツが暇人のエルフの先祖の一人か。
「あと何回戦えば良いか不安って言ったね? 全部で三回だからあと二回だよ!」
「わざわざありがとうございます! ええと……ご先祖様?」
「ははっ! 気にしなくていいよ! そんな事より……」
ジッとリアンを見る男。何だろう。慈しむ? 親愛? そんな表情に見えるが……と思っていると先程の馬鹿っぽい顔に戻った。疲れる。
「イヤ、何でも無い! ま、魔王を倒した勇者様に加えて優秀な仲間がいるんだ。多少難易度高めの試練にしても良い? 良いよね! じゃあね!」
「あ、ちょっと!」
ローズが止めようとしたが時既に遅し。再び光の玉となり何処かへ消えていった。
「呪いが本当に解けるかどうか聞きたかったのに……」
「ま、いいさ。無理ならなんか別のモノか知識を貰えばいい」
「それにしても何だか変なご先祖様でしたね~」
「……そうだな」
流石に、フルルに似て馬鹿っぽかった、とは言わなかった。ローズと目で頷きあったが。
「気を取り直して進もう。あの言い様、難易度更に上げてくるようだし」
溶岩地帯だと敵は何だろう? 岩石系か、それとも炎そのものか。悩んでも仕方がない、一歩また一歩と進みしか無いのだから。
「……それにしても熱い」
「足場も不安定ね。一歩間違えば足、無くなっちゃうわ」
「この場所だと私の得意な水魔法も効果が薄そうです……」
それは不味い。フルルの魔法は攻守に渡りパーティーの要だ。特に大人数や大型の敵に有効なのだが、それが無いとなると……
「一応聞くが水魔法以外はどうだ?」
「使えないことはないのですが二段階くらい威力が落ちちゃいます……」
まあ戦えないことはないが二段階はキツイか。敵に会うまでになんかいい方法を考えないと――
「ちょっと待って……何か気配が?」
ローズの声を合図に溶岩の中から何かが現れた。畜生まだ考えまとまってないのに!
溶岩の中から現れたのは――
「ギシャアア!」
「……おいおい」
ドラゴンだった。この世界において最強の種族と言われるモンスター、それがドラゴン。スペックだけなら魔王軍幹部クラスの奴もいるらしい。そんなやつが今俺らの前にいる。コイツはかなり大きいな……。
「……初めて見たわドラゴン。おとぎ話の中だけの存在じゃなかったのね……」
「これは、逃げましょう……! 無理ですこんなの!」
二人は戦意喪失気味のようだ。無理もない。だが、ここで引くわけにはいかない。なにか言って二人の目を覚まさせないと!
「安心しろ二人共。俺らなら勝てる」
「……根拠は?」
「勘」
不思議な事にため息が二つ聞こえてきた。
「もうちょいマシなハッパのかけ方があるでしょう?」
「まあフユ様ですから。でも、そうですね。弱気になってちゃダメですよね」
二人の目に光が灯る。何だよ、ちゃんとハッパになってんじゃねえか。俺才能あるんじゃないか?
「それはない」
「それはないです」
「ギシャアア!」
仲良いなお前ら。ま、とりあえずやってみるとしよう。ドラゴンには悪いが残念ながら、勝てると思ったのは嘘じゃないからな!
「そういえば」
フルルがこちらを見ながら口火を切る。
「今日は良く眠れましたか?」
「ああ。久しぶりに一人で寝たけどそれはそれで良いな」
「それは良かった」
ん? 何かフルルがしたのだろうか。そういえばリアンが少しむくれていたようだが……まあ些末なことか。自室に戻り準備を終えティタの元に集まる。
「準備は良いわね。それでは行きましょうか」
「ってどこに連れて行く気だよ。女王が簡単に里から出るわけには行かないだろ? 場所だけ教えてくれれば何とかするさ」
「心配ご無用よ。この里の中にあるからね」
……なんだって?
そうして案内されたのは以前フルルに絶対入るな、と言われたエルフの墓場だった。何でこんなところに? リアンやフルルの顔を窺うがどうやら分からないようだ。
「ここはエルフの墓。死んだエルフを悼み弔う場所。なのだけど、過去のエルフが現代のエルフを試す場、でもあるわ」
「つまり先祖に今の自分を評価してもらう所ってワケ? あまり気が進まないわね」
「俺も評価されることはなにもない。というか人間だけど良いのか?」
評価されても肝心の情報が入らないと意味がないのだが……。そう思っているとティタが、
「安心して。ここでは人もエルフも関係ないわ。あの方達、暇なのよ」
何だそれ。つまり、暇つぶしに付き合う代わりに報酬が貰えるって事か? ある意味太っ腹のような、暇人のような……。
「まあそういう事ね。死んだ後もこの場所から私達エルフの発展を見守って下さっているのだけど、たまには刺激が欲しいみたいでね……女王の役目の一つでもあるのだけど」
「ええ!? 私、女王になったらそんな事もやらないといけないんですか!?」
「安心なさい。数十年に一度位で良いわよ」
「全然安心できませんよ~」
母娘漫才を繰り広げながらティタは何かの封印を解いていく。すると魔法陣が現れた。乗れ、と言うことなのだろう。
「さあ、お話は終わりよ。ここから先は何が起こるかわからないわ。それでも行くのね?」
「当たり前だ。呪いが解けるかもしれない、という可能性が1%でもあるのなら」
「行かないわけには無いってね」
「私もお手伝いします!」
ティタが俺たち一人一人の顔を見つめ頷くと、魔法陣へと促された。
「それではご武運を……解けると良いわね、呪い」
「ああ」
その言葉をかわした所で転移が起きた。見た感じ普通の地下ダンジョンのようだが……
「ここ、何か変です……。多分ですけど作られた空間です……」
「どういうこと?」
「と言ってもうまく説明ができないんですけど……つまり、実際に地下のダンジョンに飛ばされたのではなく、そんな感じの空間に飛ばしただけです。だから、ええと……」
「普通のダンジョンと思っていると痛い目を見るって事か?」
「そうです! 階段を降りると次は青空の下に出るってくらい突拍子もないことが起きるかもしれません!」
「まあ、出来るだけ気をつけましょうか」
そう言って俺たちは歩き始めた。土の壁と天井に囲まれた車二台分の通路を進んでいくと、何かの気配……!
「早速お出ましか!」
現れたのはスケルトンの集団。取るに足らない雑魚……と侮っていると、
「コイツら……! 連携が上手すぎるぞ!?」
「能力も普通のスケルトンより高いわ! 何なの一体!」
「詠唱が……間に合いません!」
まるで機械のようにお互いの行動が分かっている……! そしてこちらの行動も読まれている! つまり!
「一旦引くぞ!」
殿を務めつつ逃亡。だが向こうも当然追いかけてくる。俺とローズはともかく、リアンは体力も足の速さも無い。
「つまり最初から逃げられるとは思ってないんだよ、骨!」
「詠唱の時間は稼ぎました! アクアランス!」
一転攻勢! 連携能力が高くとも個々の能力には当然差異がある。つまり足が遅い骨、速い骨がいるということだ。そしてこの狭い通路で追いかけるとなると、列になる必要がある。ということは連携の余地が無いという事。
「加えてリアンの貫通魔法により隙だらけってな。オラオラ! さっきは良くもやってくれたな!」
「う~わ、隙を突いたとはいえ凄い勢いで蹴散らしていくわね勇者様。悪役口調も似合っているわ」
「……本当に凄いです。さっき手こずっていた相手なのに。チャンスを完全に自分のものにして……とと、アクアスピア!」
最初は驚いたが冷静に対処すれば取るに足らない相手だった。だが初めの敵にしてはかなりキツイ相手でもあった。先が思いやられる。
「とはいえ、第一関門クリアだな」
「お疲れ様。怪我はない勇者様?」
「お前らの援護のおかげでな」
そうして歩いていくとまた魔法陣があった。
「階段じゃありませんでしたね」
「まあその代わりだろう」
躊躇せずに魔法陣に乗ると再び転移。目を開けると……
「溶岩地帯? 熱いわね……」
「リアンの言う通り突拍子もない所に連れて行かれたな」
「はい……それにしてもあと何回戦えば良いんでしょう?」
確かに。あと百回とか言われたら心が折れそうになるが……やるけどさ。そう思っているとフヨフヨと光の玉が漂ってきて光った。眩しさに目を閉じ、再び開けると快活そうなエルフの青年が立っていた。
「やっほー!」
「……やっほー」
何処と無く馬鹿っぽいな……。それはともかく、コイツが暇人のエルフの先祖の一人か。
「あと何回戦えば良いか不安って言ったね? 全部で三回だからあと二回だよ!」
「わざわざありがとうございます! ええと……ご先祖様?」
「ははっ! 気にしなくていいよ! そんな事より……」
ジッとリアンを見る男。何だろう。慈しむ? 親愛? そんな表情に見えるが……と思っていると先程の馬鹿っぽい顔に戻った。疲れる。
「イヤ、何でも無い! ま、魔王を倒した勇者様に加えて優秀な仲間がいるんだ。多少難易度高めの試練にしても良い? 良いよね! じゃあね!」
「あ、ちょっと!」
ローズが止めようとしたが時既に遅し。再び光の玉となり何処かへ消えていった。
「呪いが本当に解けるかどうか聞きたかったのに……」
「ま、いいさ。無理ならなんか別のモノか知識を貰えばいい」
「それにしても何だか変なご先祖様でしたね~」
「……そうだな」
流石に、フルルに似て馬鹿っぽかった、とは言わなかった。ローズと目で頷きあったが。
「気を取り直して進もう。あの言い様、難易度更に上げてくるようだし」
溶岩地帯だと敵は何だろう? 岩石系か、それとも炎そのものか。悩んでも仕方がない、一歩また一歩と進みしか無いのだから。
「……それにしても熱い」
「足場も不安定ね。一歩間違えば足、無くなっちゃうわ」
「この場所だと私の得意な水魔法も効果が薄そうです……」
それは不味い。フルルの魔法は攻守に渡りパーティーの要だ。特に大人数や大型の敵に有効なのだが、それが無いとなると……
「一応聞くが水魔法以外はどうだ?」
「使えないことはないのですが二段階くらい威力が落ちちゃいます……」
まあ戦えないことはないが二段階はキツイか。敵に会うまでになんかいい方法を考えないと――
「ちょっと待って……何か気配が?」
ローズの声を合図に溶岩の中から何かが現れた。畜生まだ考えまとまってないのに!
溶岩の中から現れたのは――
「ギシャアア!」
「……おいおい」
ドラゴンだった。この世界において最強の種族と言われるモンスター、それがドラゴン。スペックだけなら魔王軍幹部クラスの奴もいるらしい。そんなやつが今俺らの前にいる。コイツはかなり大きいな……。
「……初めて見たわドラゴン。おとぎ話の中だけの存在じゃなかったのね……」
「これは、逃げましょう……! 無理ですこんなの!」
二人は戦意喪失気味のようだ。無理もない。だが、ここで引くわけにはいかない。なにか言って二人の目を覚まさせないと!
「安心しろ二人共。俺らなら勝てる」
「……根拠は?」
「勘」
不思議な事にため息が二つ聞こえてきた。
「もうちょいマシなハッパのかけ方があるでしょう?」
「まあフユ様ですから。でも、そうですね。弱気になってちゃダメですよね」
二人の目に光が灯る。何だよ、ちゃんとハッパになってんじゃねえか。俺才能あるんじゃないか?
「それはない」
「それはないです」
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