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二、開花

二、開花 ②

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「なんでって。君も一昨日よりは顔色もいいよ」

 顔色がいい。そんなわけない。

「でもそうかもしれない。祖母の形見の事ばかりで寝てなかったし食欲もわかなかったから」

 気絶するように眠ったとはいえ久しぶりの睡眠と栄養のある食事だったか。

 そういえばそうなのかと腑に落ちた。

「ベランダを掃除したから、今日はそっちで食事をしないかい」
 カーテンを開けると白い大理石のベランダから太陽が反射され、眩しくて目を閉じる。

「動けません。もう少し寝たら、勝手に食べるんでテーブルに」

 置いておいてと言う前に、抱きかかえられた。数メートル歩いてベランダへ出ると、太陽の下で輝くテーブルと並べられた食事で溢れそうなテーブル。
 椅子に座らされると、さきほどのオムレツと、身体を冷やさないようにとひざ掛けを持って現れた。

「拒否権がないなら、いちいち聞かないでください」
「喜んでほしかったんですよ」

 分かりづらいです、と言う前にオムレツのほかほかの匂いが漂ってきて会話が途切れる。
 ホットサンドを半分に割ると、中からチーズが溢れてベーコンの香ばしい香りが鼻をかすめた。
 サラダとオムレツとホットサンド。オムレツの中身はキノコとじゃがいもと人参で、トマトソースと食べると美味しくて頬がとれるかと思った。

 身体が疲れているので、栄養を欲しているのか。
 普段よりも美味しそうに見えたし美味しく感じた。

「うん。食欲も出始めましたね。良かった」
「単に、こんなおいしい食事が初めてで好奇心が勝っただけです」
「それでもいいよ。花を食べるよりもずっといい。ホットサンドのお代りは」
「……一枚だけ」
 悔しいけれど、青臭い花びらを飲み込むよりも、竜仁さんが作ってくれた食事の方が何倍も美味しかった。
 
 けれど心を許したふりだ。
 僕は祖母の形見以外、この人には興味がないのだから。

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