26 / 55
二、開花
二、開花 ②
しおりを挟む
「なんでって。君も一昨日よりは顔色もいいよ」
顔色がいい。そんなわけない。
「でもそうかもしれない。祖母の形見の事ばかりで寝てなかったし食欲もわかなかったから」
気絶するように眠ったとはいえ久しぶりの睡眠と栄養のある食事だったか。
そういえばそうなのかと腑に落ちた。
「ベランダを掃除したから、今日はそっちで食事をしないかい」
カーテンを開けると白い大理石のベランダから太陽が反射され、眩しくて目を閉じる。
「動けません。もう少し寝たら、勝手に食べるんでテーブルに」
置いておいてと言う前に、抱きかかえられた。数メートル歩いてベランダへ出ると、太陽の下で輝くテーブルと並べられた食事で溢れそうなテーブル。
椅子に座らされると、さきほどのオムレツと、身体を冷やさないようにとひざ掛けを持って現れた。
「拒否権がないなら、いちいち聞かないでください」
「喜んでほしかったんですよ」
分かりづらいです、と言う前にオムレツのほかほかの匂いが漂ってきて会話が途切れる。
ホットサンドを半分に割ると、中からチーズが溢れてベーコンの香ばしい香りが鼻をかすめた。
サラダとオムレツとホットサンド。オムレツの中身はキノコとじゃがいもと人参で、トマトソースと食べると美味しくて頬がとれるかと思った。
身体が疲れているので、栄養を欲しているのか。
普段よりも美味しそうに見えたし美味しく感じた。
「うん。食欲も出始めましたね。良かった」
「単に、こんなおいしい食事が初めてで好奇心が勝っただけです」
「それでもいいよ。花を食べるよりもずっといい。ホットサンドのお代りは」
「……一枚だけ」
悔しいけれど、青臭い花びらを飲み込むよりも、竜仁さんが作ってくれた食事の方が何倍も美味しかった。
けれど心を許したふりだ。
僕は祖母の形見以外、この人には興味がないのだから。
顔色がいい。そんなわけない。
「でもそうかもしれない。祖母の形見の事ばかりで寝てなかったし食欲もわかなかったから」
気絶するように眠ったとはいえ久しぶりの睡眠と栄養のある食事だったか。
そういえばそうなのかと腑に落ちた。
「ベランダを掃除したから、今日はそっちで食事をしないかい」
カーテンを開けると白い大理石のベランダから太陽が反射され、眩しくて目を閉じる。
「動けません。もう少し寝たら、勝手に食べるんでテーブルに」
置いておいてと言う前に、抱きかかえられた。数メートル歩いてベランダへ出ると、太陽の下で輝くテーブルと並べられた食事で溢れそうなテーブル。
椅子に座らされると、さきほどのオムレツと、身体を冷やさないようにとひざ掛けを持って現れた。
「拒否権がないなら、いちいち聞かないでください」
「喜んでほしかったんですよ」
分かりづらいです、と言う前にオムレツのほかほかの匂いが漂ってきて会話が途切れる。
ホットサンドを半分に割ると、中からチーズが溢れてベーコンの香ばしい香りが鼻をかすめた。
サラダとオムレツとホットサンド。オムレツの中身はキノコとじゃがいもと人参で、トマトソースと食べると美味しくて頬がとれるかと思った。
身体が疲れているので、栄養を欲しているのか。
普段よりも美味しそうに見えたし美味しく感じた。
「うん。食欲も出始めましたね。良かった」
「単に、こんなおいしい食事が初めてで好奇心が勝っただけです」
「それでもいいよ。花を食べるよりもずっといい。ホットサンドのお代りは」
「……一枚だけ」
悔しいけれど、青臭い花びらを飲み込むよりも、竜仁さんが作ってくれた食事の方が何倍も美味しかった。
けれど心を許したふりだ。
僕は祖母の形見以外、この人には興味がないのだから。
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】
零れる
午後野つばな
BL
やさしく触れられて、泣きたくなったーー
あらすじ
十代の頃に両親を事故で亡くしたアオは、たったひとりで弟を育てていた。そんなある日、アオの前にひとりの男が現れてーー。
オメガに生まれたことを憎むアオと、“運命のつがい”の存在自体を否定するシオン。互いの存在を否定しながらも、惹かれ合うふたりは……。 運命とは、つがいとは何なのか。
★リバ描写があります。苦手なかたはご注意ください。
★オメガバースです。
★思わずハッと息を呑んでしまうほど美しいイラストはshivaさん(@kiringo69)に描いていただきました。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる