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第一章
お披露目パーティー
しおりを挟むその日は朝から晴天。
まさに絶好のお披露目日和だ。
「お嬢様は肌が陶器のように真っ白ですからね~。やっぱりピンクがすごいかわいいです!」
ピンク色のドレスは、子どもらしくリボンが散りばめられており、可愛らしいものだった。
「少し子どもっぽすぎやしないかしら」
「むしろ今着ないでいつ着るんです」
そう言われたら、確かに。大人になったらこんなリボンふりふりのピンクなドレスなんて着なくなるものね。
私は渋々そのドレスを見にまとい、ミディアムほどの長さの髪は綺麗に編み込んで、ひとつにまとめてもらう。
可愛らしいです!さすが私のお嬢様!なんて言ってるメルを尻目に、私は自分の部屋から一歩一歩踏み出した。
パーティーは私の家のパーティールームで催された。普段滅多なことでは入ることのないこの部屋に、私の顔を見にきた貴族たちがいるのだと思うと私はすごくげんなりとした気分になった。
メルが教えてくれたのだが、現国王の姪であり双子の王子のいとこである私は母の次に最も王に近い存在である。そんな私を取り入れたいと考える貴族は山ほどいるのだそうだ。日本人であった私にはあまり分からない概念だ。
ふと、気づくと隣にお父様とお母様が立っていた。
妖艶なまでに艶めかしく美しいお母様と、凛々しく彫りの深い整った顔をしたお父様、そんな二人に見惚れていた。
「マリア、緊張しているかい?」
「マリアなら大丈夫よ、私たちの娘ですもの」
ちゅ、と小さな音を立て、お父様とお母様が私のおでこに口付けをする。
「お守りだよ、いつものマリアらしく振る舞えばいいからね」
「お父様…、ええ、私普段通り行きますわ」
そうして私は扉をくぐる。扉をあけると、そこから螺旋階段になって、階段を降りると会場がある。そこには、たくさんの貴族がいて私たち三人が出てくるのを今か今かと待ちわびていたようだった。
「本日は我が娘のお披露の場に来場頂き誠にありがたい。さっそくだが、我が娘の紹介をさせていただきたい」
そう言われ、私は一歩前に出る。ほぅ…と何人かがため息をついた。
「ご紹介にあずかりました、私はヴェルゴール公爵家令嬢、マリア=イヴ=ヴェルゴールと申します。この度ようやく5歳になりまして、やっと外の世界を知ったばかりの若輩者ではありますがよろしくお願い致しますわ」
ふと、下をみると双子がこちらを見上げている姿を見つけた。久しぶりにみたカイラスは以前よりも顔つきが男らしくなったような気がした。相変わらず人見知りが激しいようでサーシェスの後ろにいるのは変わらないが…。
そんなふたりの元へ向かおうと、私は階段をゆっくり降り始めた。
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