37 / 51
第4章
第三の年 神歴第一の年 参
しおりを挟む
「私は、この世界の為に、私が成すべきを知りたい。その為の奇跡を起こす。
対価は、成すべきことを成す!つまり私のこれからを捧げよう!
叶えて貰おうか!」
そう高らかに叫んだーーー
その刹那、時が止まった。
無音と闇、星々の煌めきと、月の光が照らす空間。
時の流れなど、星の瞬きや月の光の強弱で僅かに分かるかどうか…といった様子であったが、それらの僅かな変化すらも完全に止まったのだ。
少女の鼓動も、呼吸すらも止まったような感覚に、思わず冷や汗が出るような気がした頃、
何もない暗い空間に真っ直ぐな光が縦に、果てしなく走った。
そうして、まるで扉が開くようにして、空間が広がり、光の溢れる異空間ともいうべき光景が目の前に現れた。
振り返ると、今しがたまでいた天上の景色が遠くに残っており、
横には夜の闇がまるで扉のように折りたたまれているのが見えた。
その闇はまるで次元そのものが閉じたかのようで、これまでの世界とは完全に切り離されていた。
そして、少女は静かに息を整え、決意を胸に、その光に満ちた空間へと一歩踏み出した。
その背後で、夜の闇が再び音もなく閉じた。
そうして少女は振り返る事なく、現れた遥か奥へと続く光の道を、一歩、また一歩と歩いて行った。
光の道がどこまでも続いていた。
両側には、色形を変えながら絶え間なく流れゆく光の帯。
世界は静かに、そして悠久に広がっていた。
少女は歩き続けていた。空を飛ぶこともできたが、不思議とその気にはならなかった。
ただ、この道を歩いて、何かを見つけるべきだと感じていた。
どれほどの時間が過ぎたのか、ようやく道の終点が見えてきた。
そこには、荘厳な大理石のような白い階段がそびえ立っていた。
階段の両脇には、空を突くかのように高くそびえる柱が並び、上方の闇へと消えていた。
神殿か、あるいは聖域か。
少女は足を止め、しばしその姿を見上げた。
「ここが…終点?」
そう呟きながら、彼女は一歩一歩、階段を昇っていく。
石の冷たさが靴越しにも、足元に伝わるが、なぜかそれが心地よく感じられた。
そして、ついにその頂にたどり着く。
そこには、白亜に輝く玉座があった。
まるで永遠の象徴のように凛として佇んでいる。
だが、その玉座に腰掛ける者はいなかった。
代わりに、玉座の上には小さな何かが光を放っていた。
それはかすかに明滅し、消え入りそうな弱い光だった。
「これは一体…?」
少女は声に出してしまった。
それは意識せずとも口をついた言葉だった。
そうして、彼女は自然とその光に手を伸ばし、触れた瞬間――。
――光が弾け、少女を包み込んだ。
まばゆい光の筋が彼女の身体に流れ込み、視界が一瞬にして変わった。
「えっ…?」
瞬きのうちに変化が起こった。視点が突然高くなったのだ。
驚いて足元を見ても、そこには変わらぬ白い床が広がっている。
けれど、何かが違う。彼女は自分の体を見下ろした。服が妙に短く感じられ、袖や裾が不自然に縮んでいた。
――背が伸びてる…?
この世界に来てから、ずっと変わることのなかった身体が、今、急に成長していたのだ。
少女の背丈は大人びたものへと変わり、その姿は十五歳ほどの年頃になっていた。
瞬く間に訪れたその変化に、彼女は言葉を失った。
しかし、それはただの始まりに過ぎなかった。彼女の内側で、さらなる変化がうごめき始めていた。
対価は、成すべきことを成す!つまり私のこれからを捧げよう!
叶えて貰おうか!」
そう高らかに叫んだーーー
その刹那、時が止まった。
無音と闇、星々の煌めきと、月の光が照らす空間。
時の流れなど、星の瞬きや月の光の強弱で僅かに分かるかどうか…といった様子であったが、それらの僅かな変化すらも完全に止まったのだ。
少女の鼓動も、呼吸すらも止まったような感覚に、思わず冷や汗が出るような気がした頃、
何もない暗い空間に真っ直ぐな光が縦に、果てしなく走った。
そうして、まるで扉が開くようにして、空間が広がり、光の溢れる異空間ともいうべき光景が目の前に現れた。
振り返ると、今しがたまでいた天上の景色が遠くに残っており、
横には夜の闇がまるで扉のように折りたたまれているのが見えた。
その闇はまるで次元そのものが閉じたかのようで、これまでの世界とは完全に切り離されていた。
そして、少女は静かに息を整え、決意を胸に、その光に満ちた空間へと一歩踏み出した。
その背後で、夜の闇が再び音もなく閉じた。
そうして少女は振り返る事なく、現れた遥か奥へと続く光の道を、一歩、また一歩と歩いて行った。
光の道がどこまでも続いていた。
両側には、色形を変えながら絶え間なく流れゆく光の帯。
世界は静かに、そして悠久に広がっていた。
少女は歩き続けていた。空を飛ぶこともできたが、不思議とその気にはならなかった。
ただ、この道を歩いて、何かを見つけるべきだと感じていた。
どれほどの時間が過ぎたのか、ようやく道の終点が見えてきた。
そこには、荘厳な大理石のような白い階段がそびえ立っていた。
階段の両脇には、空を突くかのように高くそびえる柱が並び、上方の闇へと消えていた。
神殿か、あるいは聖域か。
少女は足を止め、しばしその姿を見上げた。
「ここが…終点?」
そう呟きながら、彼女は一歩一歩、階段を昇っていく。
石の冷たさが靴越しにも、足元に伝わるが、なぜかそれが心地よく感じられた。
そして、ついにその頂にたどり着く。
そこには、白亜に輝く玉座があった。
まるで永遠の象徴のように凛として佇んでいる。
だが、その玉座に腰掛ける者はいなかった。
代わりに、玉座の上には小さな何かが光を放っていた。
それはかすかに明滅し、消え入りそうな弱い光だった。
「これは一体…?」
少女は声に出してしまった。
それは意識せずとも口をついた言葉だった。
そうして、彼女は自然とその光に手を伸ばし、触れた瞬間――。
――光が弾け、少女を包み込んだ。
まばゆい光の筋が彼女の身体に流れ込み、視界が一瞬にして変わった。
「えっ…?」
瞬きのうちに変化が起こった。視点が突然高くなったのだ。
驚いて足元を見ても、そこには変わらぬ白い床が広がっている。
けれど、何かが違う。彼女は自分の体を見下ろした。服が妙に短く感じられ、袖や裾が不自然に縮んでいた。
――背が伸びてる…?
この世界に来てから、ずっと変わることのなかった身体が、今、急に成長していたのだ。
少女の背丈は大人びたものへと変わり、その姿は十五歳ほどの年頃になっていた。
瞬く間に訪れたその変化に、彼女は言葉を失った。
しかし、それはただの始まりに過ぎなかった。彼女の内側で、さらなる変化がうごめき始めていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~
すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。
若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。
魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。
人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で
出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。
その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
暗澹のオールド・ワン
ふじさき
ファンタジー
中央大陸に位置するシエラ村で、少年・ジュド=ルーカスはいつもと変わらない平穏で退屈な日々を過ごしていた。
「…はやく僕も外の世界を冒険したいな」
祖父の冒険譚を読み耽る毎日。
いつもと同じように部屋の窓際、お気に入りの定位置に椅子を運び、外の景色を眺めている少年。
そんな彼もいつしか少年から青年へと成長し、とうとう旅立つ日がやって来る。
待ちに待った冒険を前に高鳴る気持ちを抑えきれない青年は、両親や生まれ育った村との別れを惜しみつつも外の世界へと遂に足を踏み出した…!
待ち受ける困難、たくさんの仲間との出会い、いくつもの別れを経験していく主人公。
そして、彼らは平穏な日々の裏に隠された世界の真実を知ることとなる。
冒険の果てに彼らが選択した未来とは―。
想定外の展開と衝撃の最期が待ち受ける異世界ダークファンタジー、開幕!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる