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レオとガゼリオ

レオの家

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 先程の居酒屋からあまり離れていない所にある、木造の集合住宅の一室がレオの家である。

 グラスの水で少しだけ酔いが覚めたらしいガゼリオの背を追って彼が転ばぬよう注意しながら階段を登り、レオは家の鍵を開ける。

 リビングに通されたガゼリオはソファに腰掛け、目だけを動かして部屋を見回す。

 無骨な部屋だとガゼリオは思った。

 機能面のみを重視した家具類に、恐らくフローリングは寒いからという理由だけで敷いているであろうシンプルなカーペット。

 一応片付けられてはいるのだが、トレーニング器具やら文房具やらが適当にまとめられているので散らかっているように見えてしまう。


「ジュースとかで良いか?」

 魔導冷蔵庫の中を見ながらレオがガゼリオに問うと、「うん」という簡単な返事が聞こえた。

(どーすっかな……調子に乗ってお持ち帰りしちまった)

 酒の勢いでガゼリオを家に連れ込んでしまった。

 レオも(皆には隠しているが)ガゼリオと同じく同性の方が好きであり、最近になってガゼリオが魅力的に見えてきた。

 いつも明るく元気で生徒と友達のように関わる彼の事を仕事仲間として良く思ってはいたが……最近、それ以上の感情を持ち始めているのを自覚し始めたのだ。

 彼の行動。その全てが己の目には性的に映る。

 溜息も、足を組み直す動作も、時折苦しそうに歪める顔も。

 恋愛対象としてというより、性的対象として魅力的なのだ。

(でもなぁ……酔っ払ってるガゼリオを無理やり犯すなんて……とりあえず今日はこのまま寝かせてやるか)


 少しして、狭い台所からオレンジ色の液体が注がれたコップを2つ持っているレオが現れ、ガゼリオに「ほい」とコップを1つ差し出した。

「ありがとう」

 早々にガゼリオはコップに口を付ける。

「ジュースなんて久しぶりに飲んだかもしれない」

 柑橘の甘さと酸味のバランスがちょうど良く、疲れた体に染み渡る。

「酒飲んだ後はビタミンを摂ると良いって田舎のばーちゃんが言ってた」


 適当に会話しながらも、レオはガゼリオの上半身をさりげなく観察する。

 普段はきっちり留められているシャツの第一ボタンが外されて、喉仏が顔を出している。

(……やっぱエロいんだよなぁ……抱きてぇ……いやいやいやだからダメなんだって!!)

 隣に腰掛け、時折邪念を振り払うように頭を振るレオを不思議に思いながらもガゼリオは渡されたジュースを飲み干した。

   ***

 それからレオはガゼリオと適当に話をして、風呂と寝巻きを彼に貸して、一緒に寝る事にした。

 1人用としてはやや大きめのベッド。密着すれば男2人でも寝れるだろう。

「あの……やっぱ俺、床で寝ようか?」

 寝巻き姿のガゼリオはレオに申し訳なさそうに問う。

「クッションとかも無いから痛くなるだろ」

「……そうなんだけどさ」


(この状態でこの男と一緒に寝ろとか拷問かよ)

 ガゼリオは小さな溜息を吐いた。

 長期間に渡る禁欲の為、ガゼリオの肉体はほんの少しの刺激にも反応するようになっていた。

 早朝の冷たい微風に首筋を撫でられただけで全身が震えた事もある。


(寝巻き姿のガゼリオ……なんか良いなぁ、なんか……グッとくる)

 ガゼリオにバレぬよう注意しながらチラチラと彼の様子を伺うレオ。

 寝巻きという緊張感の無い隙だらけな姿。本来心を許した相手にだけ見せられる姿。

 それにレオはときめいてしまう。


((ただ寝るだけ……ただ寝るだけだから))


 奇しくも同時に自己暗示をかけるレオとガゼリオは、同じベッドに背中合わせで横たわった。
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