魔導士カイラは許されない〜インキュバスの呪いで貞操帯をかけられた少年〜

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地獄の火クラブ

お迎え

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(疲れた……)

 ディックが入った鳥籠を手にしたダーティからしつこいほど礼を言われ、馬車で家まで送ってもらった。

 そして(勿体無いが)血で汚れた服をゴミ袋に詰めて風呂に入り、仮眠を取った。

 だが、まだやるべき事がある。まぁまぁ信頼できる人の家に預けたカイラを引き取りに行かねばならない。

 ヴェルトは重い体に鞭を打ちその人の家へ向かう。

 とんがり屋根が何とも魔法使いらしい屋敷……偉大なる魔法使いマティアス・マジェスティックの家だ。

 マティアスがカイラの呪いに理解を示し、性的な意味で襲う可能性が限りなく低い男だと思ったから、ヴェルトはこの家に頼んでカイラを預けたのだ。

 呼び鈴を鳴らすとすぐにアマネという白クマのぬいぐるみがヴェルトを出迎えた。

「来やがったか、このぉ、シラガ頭!」

 相変わらずアマネはヴェルトを嫌っており、刺繍の目をキュッと吊り上げる。

「君に構ってる余裕は無いんだよ。カイラ君呼んで来てくれるかい」

 アマネはヴェルトの態度が気に入らず「ふーん!」と鼻を鳴らしながらも、カイラを呼びに屋敷の奥に戻った。

 少しして、大きなカバンを手にした少年が現れた。

 いつか2人で服屋に行った時に買ってあげた服……白いシャツに紺のズボンを履いたカイラが「おはようございます、ヴェルトさん」とひまわりの如き笑みを浮かべた。

 死にかけの魚のような顔をしていたヴェルトは、天使カイラの元気そうな姿を見てニマッと笑う。

「きもちわる~」

 カイラの背後にいたアマネがヴェルトの顔を見てボソッと呟いた。

 遅れて家主が3人の前に現れた。

 純白の髪に灰の瞳を持つ高名な魔導士マティアスである。

 カイラよりほんの少しだけ背が低く華奢で顔立ちが幼いが、その割に口調が偉そうな男。

「おはようヴェルト殿。昨日貰ったクッキー旨かったぞ」

「おはようございます。昨日は何もありませんでしたか?」

「うむ。貴様が恐れていた夢魔も来なかったし、静かな夜であった」

「そうでしたか……」

 ヴェルトは安心すると同時に睡魔に襲われる。

「じゃあカイラ君、帰ろうか」

「はい」

 カイラは玄関から出てマティアスとアマネに向き直り、ペコリと頭を下げる。

「ありがとうございました!」

「うむ、また何かあったら来るが良い」

「いつでも来て良いんだよ? ……だがシラガ、てめーはだめだ」

「はいはい」

 最後まで悪態をつくヴェルトをアマネは睨んだ。

 ……この時、4人は気付いていなかった。

 マティアス邸の庭の木陰からカイラの様子を覗く小さな影がいる事に。
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