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地獄の火クラブ
オープニング
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廃れた教会の聖堂。ここが地獄の火クラブの会場だ。
祈る為の長椅子は全て撤去され、代わりにいくつかの長机が並べられている。その上には様々な料理やワインが並べられていた。
教会の名残として祭壇と古いピアノは残されており、居心地が悪そうにしている。
その他には高級そうなソファがいくつか置かれていたり、鮮血の如き紅花を生けられた花瓶が飾られていたり。
辺りを見回すと、服装の様々な人々が仮面を着けて酒を片手に談笑している。その中にはダーティと同じく夢魔を引き連れている者もいる。
モンスターのプライバシーなどはどうでも良いらしく、夢魔達は全員仮面を着けていない。
奥にある祭壇に座す神の像の頭上に、偉そうに胸を張っているサルのぬいぐるみが飾られている。
とっくの昔に神を見限ったヴェルトは侮辱的な装飾を気にも留めず、真っ赤な飲み物を嗜む。
退廃的な服装も相まって血を飲む吸血鬼のようだ。……実際ヴェルトが飲んでいるのは、赤い果物の果汁を水で割り、そこに砂糖を足したソフトドリンクなのだが。
壁に背を預けて待っていると、聖堂の出入り口である背高な扉が開かれ、そこからゾロゾロと演奏家達が入ってきた。
ディック以外全員人間であり、各々仮面で顔を隠している。
ダーティとディックを筆頭に黒づくめの3人が、既に楽器のセッティングを終えた場所へ向かう。
ダーティとディックが手に取ったのは弦楽器だ。私達の世界で言うエレキギターとペースに似ている。
簡単にチューニングを済ませると、魔道具であるマイクを手に取ったダーティが話し始めた。
「皆さん、ごきげんよう。地獄の火クラブの主催者であらせられるエデン様のご厚意で演奏させて頂く事となりました」
ダーティはディックの肩に手を置く。
「今宵は我が僕である夢魔が作詞、作曲した3曲を続けて演奏いたします」
とだけ言ってからマイクを置き、再び弦楽器を手に取る。
演奏者として大勢の人間に見られる事に慣れていないらしいディックは、息を吐き緊張を和らげた。
緊張感が漂う中、ダーティやディックよりも後ろにいるドラムの演奏者が、ドラムスティックを4回鳴らす。
その音でタイミングを合わせた5人が楽器を弾き始める。
その音楽は恐らく私達の世界ではハードロックと呼ばれるジャンルのものだ。
思わずヘッドバンキングをしてしまいたくなるような重厚かつ軽快な音楽が、まるでゴスペルのように教会に響く。
ダーティ含む数名の演奏者。そして、演奏家達を取り囲んでいる者のうち何人が曲に乗り頭を軽く上下に振り始めている。
前奏が終わりディックが歌い始めた。
彼らしい芯の通った力強い歌声だ。時折シャウトという歌い方を取り入れながら魔法の言語で歌い続ける。
腕を組みながら歌を聴いていたヴェルトは、魔法の言語に詳しい訳ではないので歌詞の意味がよく分からないのだが……
(え? (自主規制)? 今(自主規制)って言った?)
自分でさえ分かるレベルの猥褻な言葉が出てきたので、碌な歌ではないのだろうとヴェルトは決めつける。
それからゆったりとした耳に残るリズムが心地良い宗教的な曲を演奏し、最後に暗い……というよりむしろ退廃的な曲を演奏した。
歓声と拍手の嵐を受け、ダーティは恭しく礼をしてみせる。姫袖がフワリと揺れるのでいつも以上に優美な印象だ。
ディックもダーティに倣い見よう見まねで礼をした。
祈る為の長椅子は全て撤去され、代わりにいくつかの長机が並べられている。その上には様々な料理やワインが並べられていた。
教会の名残として祭壇と古いピアノは残されており、居心地が悪そうにしている。
その他には高級そうなソファがいくつか置かれていたり、鮮血の如き紅花を生けられた花瓶が飾られていたり。
辺りを見回すと、服装の様々な人々が仮面を着けて酒を片手に談笑している。その中にはダーティと同じく夢魔を引き連れている者もいる。
モンスターのプライバシーなどはどうでも良いらしく、夢魔達は全員仮面を着けていない。
奥にある祭壇に座す神の像の頭上に、偉そうに胸を張っているサルのぬいぐるみが飾られている。
とっくの昔に神を見限ったヴェルトは侮辱的な装飾を気にも留めず、真っ赤な飲み物を嗜む。
退廃的な服装も相まって血を飲む吸血鬼のようだ。……実際ヴェルトが飲んでいるのは、赤い果物の果汁を水で割り、そこに砂糖を足したソフトドリンクなのだが。
壁に背を預けて待っていると、聖堂の出入り口である背高な扉が開かれ、そこからゾロゾロと演奏家達が入ってきた。
ディック以外全員人間であり、各々仮面で顔を隠している。
ダーティとディックを筆頭に黒づくめの3人が、既に楽器のセッティングを終えた場所へ向かう。
ダーティとディックが手に取ったのは弦楽器だ。私達の世界で言うエレキギターとペースに似ている。
簡単にチューニングを済ませると、魔道具であるマイクを手に取ったダーティが話し始めた。
「皆さん、ごきげんよう。地獄の火クラブの主催者であらせられるエデン様のご厚意で演奏させて頂く事となりました」
ダーティはディックの肩に手を置く。
「今宵は我が僕である夢魔が作詞、作曲した3曲を続けて演奏いたします」
とだけ言ってからマイクを置き、再び弦楽器を手に取る。
演奏者として大勢の人間に見られる事に慣れていないらしいディックは、息を吐き緊張を和らげた。
緊張感が漂う中、ダーティやディックよりも後ろにいるドラムの演奏者が、ドラムスティックを4回鳴らす。
その音でタイミングを合わせた5人が楽器を弾き始める。
その音楽は恐らく私達の世界ではハードロックと呼ばれるジャンルのものだ。
思わずヘッドバンキングをしてしまいたくなるような重厚かつ軽快な音楽が、まるでゴスペルのように教会に響く。
ダーティ含む数名の演奏者。そして、演奏家達を取り囲んでいる者のうち何人が曲に乗り頭を軽く上下に振り始めている。
前奏が終わりディックが歌い始めた。
彼らしい芯の通った力強い歌声だ。時折シャウトという歌い方を取り入れながら魔法の言語で歌い続ける。
腕を組みながら歌を聴いていたヴェルトは、魔法の言語に詳しい訳ではないので歌詞の意味がよく分からないのだが……
(え? (自主規制)? 今(自主規制)って言った?)
自分でさえ分かるレベルの猥褻な言葉が出てきたので、碌な歌ではないのだろうとヴェルトは決めつける。
それからゆったりとした耳に残るリズムが心地良い宗教的な曲を演奏し、最後に暗い……というよりむしろ退廃的な曲を演奏した。
歓声と拍手の嵐を受け、ダーティは恭しく礼をしてみせる。姫袖がフワリと揺れるのでいつも以上に優美な印象だ。
ディックもダーティに倣い見よう見まねで礼をした。
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