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ダーティとラブ
インタビュー
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今回はメインのカイラとヴェルトではなく、別のカップルに焦点を当てています。
やや過激ですがよろしくお願いします!
***
ここは上流階級向けのカフェ。
ステンドグラスから差し込む光が柔らかい。
深い色合いのテーブルは木目が美しく、革張りのソファは腰が溶けるのではないかと思うほど座り心地が良い。
他の客の装いも洗練されており、彼らの裕福さがひしひしと伝わってくる。
ややくたびれた印象のジャケットを羽織っている記者は、緊張のあまり縮こまっていた。
「あまりこのような場所は来られないので?」
記者の対面に腰掛けている男……一言で言えば、「紅茶にバラの花びらを浮かべて飲むのが似合う」青年は、ややハスキーな声で記者に問う。
整えられたくすみの無い金髪に、サファイアを思わせる深い碧眼。顔立ちも中性的で整っており、陶器のように肌がきめ細かい。
服装も隙が無い。彼の職業……旅する演奏家としての燕尾服に身を包んでいる。
「ええ、お恥ずかしながら」
と記者ははにかんだ。
「ここの紅茶は実に旨いんです」
「そうなんですね。楽しみです」
それから少しして、2人のもとへ紅茶が運ばれた。
飲み口が薄く草花の模様が美しいティーカップの中で香り高い紅茶が揺らめく。
青年のティーカップには既にミルクが入れられている。
「ミルクを先に入れる方が好きなんです。その方が紅茶の香りが楽しめますから」
と青年はティーカップを右手に持ち口へ運んだ。
その動作ひとつひとつが丁寧で、この人と自分は何か決定的に違うのだと記者は思い知った。
「いただきます」
記者も青年に倣い紅茶を一口飲んだ。
爽やかな香りが鼻腔を突き抜け、食道をゆっくりと下ってゆく。
「美味しいです」
「でしょう? レザーの街に来た時には、必ずこのカフェに立ち寄るようにしているんです」
青年は笑顔を見せた。
「さて。それではそろそろ雑誌の記事にする為のインタビューを始めさせていただきます」
「えぇ、なんでも聞いてください」
しばらく2人は談笑し続けた。
(良かった……この人、変人だって噂があったけど、嘘みたいだ)
心の中でホッと溜息を吐き、記者はサラサラとメモを取りながら次の質問に移る。
「……では次に、作曲家でもあられる貴方様が、作曲をする上での意欲をかき立てるものなどはありますか?」
青年はうーんと唸った後、口を開いた。
「実はネコを1匹飼っておりまして」
「猫……ですか?」
「黒いネコです。普段は澄ましていますが、撫でてやるととても喜んで……他の人にもすぐ懐くので、いろんな人から可愛がられるんですよ」
「はぁ。きっととても可愛らしいんでしょうね」
「ネコとしては大きいんですけどね。それもまた愛おしくて……すみません、どうもネコの話をすると止まらなくなる」
「いえ。そのお話、もう少し伺いたいです」
「そうですか? ……私はネコを布団に連れ込むのが好きなのですが、文句ひとつ言わずに私にくっ付いて寝るんです」
「可愛らしいですね」
「下品な話ですが時折粗相もする。だけどその度に申し訳なさそうな顔をして、片付けようとする」
「猫が片付け? ……随分と賢い猫ちゃんですね」
「写真をお見せできないのが残念です」
「猫ちゃんのお名前は?」
「私は『ラブ』と呼んでいます」
「ラブちゃん」
記者の頭の中に、黒い毛並みが美しい大きめなメスの猫の姿がぼんやり浮かんだ。
「そんなラブが、創作意欲を高めてくれるんです」
「素敵なお話でした。では、次に____」
やや過激ですがよろしくお願いします!
***
ここは上流階級向けのカフェ。
ステンドグラスから差し込む光が柔らかい。
深い色合いのテーブルは木目が美しく、革張りのソファは腰が溶けるのではないかと思うほど座り心地が良い。
他の客の装いも洗練されており、彼らの裕福さがひしひしと伝わってくる。
ややくたびれた印象のジャケットを羽織っている記者は、緊張のあまり縮こまっていた。
「あまりこのような場所は来られないので?」
記者の対面に腰掛けている男……一言で言えば、「紅茶にバラの花びらを浮かべて飲むのが似合う」青年は、ややハスキーな声で記者に問う。
整えられたくすみの無い金髪に、サファイアを思わせる深い碧眼。顔立ちも中性的で整っており、陶器のように肌がきめ細かい。
服装も隙が無い。彼の職業……旅する演奏家としての燕尾服に身を包んでいる。
「ええ、お恥ずかしながら」
と記者ははにかんだ。
「ここの紅茶は実に旨いんです」
「そうなんですね。楽しみです」
それから少しして、2人のもとへ紅茶が運ばれた。
飲み口が薄く草花の模様が美しいティーカップの中で香り高い紅茶が揺らめく。
青年のティーカップには既にミルクが入れられている。
「ミルクを先に入れる方が好きなんです。その方が紅茶の香りが楽しめますから」
と青年はティーカップを右手に持ち口へ運んだ。
その動作ひとつひとつが丁寧で、この人と自分は何か決定的に違うのだと記者は思い知った。
「いただきます」
記者も青年に倣い紅茶を一口飲んだ。
爽やかな香りが鼻腔を突き抜け、食道をゆっくりと下ってゆく。
「美味しいです」
「でしょう? レザーの街に来た時には、必ずこのカフェに立ち寄るようにしているんです」
青年は笑顔を見せた。
「さて。それではそろそろ雑誌の記事にする為のインタビューを始めさせていただきます」
「えぇ、なんでも聞いてください」
しばらく2人は談笑し続けた。
(良かった……この人、変人だって噂があったけど、嘘みたいだ)
心の中でホッと溜息を吐き、記者はサラサラとメモを取りながら次の質問に移る。
「……では次に、作曲家でもあられる貴方様が、作曲をする上での意欲をかき立てるものなどはありますか?」
青年はうーんと唸った後、口を開いた。
「実はネコを1匹飼っておりまして」
「猫……ですか?」
「黒いネコです。普段は澄ましていますが、撫でてやるととても喜んで……他の人にもすぐ懐くので、いろんな人から可愛がられるんですよ」
「はぁ。きっととても可愛らしいんでしょうね」
「ネコとしては大きいんですけどね。それもまた愛おしくて……すみません、どうもネコの話をすると止まらなくなる」
「いえ。そのお話、もう少し伺いたいです」
「そうですか? ……私はネコを布団に連れ込むのが好きなのですが、文句ひとつ言わずに私にくっ付いて寝るんです」
「可愛らしいですね」
「下品な話ですが時折粗相もする。だけどその度に申し訳なさそうな顔をして、片付けようとする」
「猫が片付け? ……随分と賢い猫ちゃんですね」
「写真をお見せできないのが残念です」
「猫ちゃんのお名前は?」
「私は『ラブ』と呼んでいます」
「ラブちゃん」
記者の頭の中に、黒い毛並みが美しい大きめなメスの猫の姿がぼんやり浮かんだ。
「そんなラブが、創作意欲を高めてくれるんです」
「素敵なお話でした。では、次に____」
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