17 / 165
ハルキオン
対立
しおりを挟む
ここはハルキオン邸の応接室。
「____よって、ケーキとケースは親戚であると、モイは論ずるのです!」
唐突に始まったシロクマのモイによる発表を聞いたカイラは拍手を送った。
モイは照れたように頭を掻く。
「えへへ、ありがとね。明日ご主人に発表するつもりなんだ。ああ見えてお医者さんでもあるから、きっとお気に召すと思うよ」
(ケーキとケースの話って医学に関係あるのかな)
カイラが困惑していると。
____ガシャン!
何かが割れるような音が上の階から聞こえたので、カイラとモイは天井を見上げた。
「なんだろねぇ」
特に焦る様子もなく、モイは伸び伸びとした口調でカイラに訊ねる。
「……なんだろう。胸騒ぎがする」
とても、嫌な予感。
杖とハルキオンが座っていた場所に置かれていたナプキンを手に持ちながら、カイラは走る。
「『ルックフォー』!」
階段を駆け上り煙を追い、発生源である扉を勢い良く開く。
そこはハルキオンの部屋だった。
洗練された部屋なのだが……片付けが苦手なのだろう。医学書の類が床に放置されている。
そして、音の発生源であると思われる電気スタンドが見るも無惨な姿で転がっている。
ハルキオンの部屋のベッドの上にいる2つの人影。そのうち1つをカイラは怒りの籠った目で睨む。
「ミキ……!」
ミキは今、ハルキオンの上に跨り、ハルキオンの怒張の上へ腰を下ろそうとしている。
「来たか……おっと勘違いするな? そもそもこうなった原因はお前にあるんだぜ」
「は……? 原因?」
自分と愛の無い行為に及ぼうとする夢魔の体を押して抵抗し続けながらも、ハルキオンはミキの言葉に困惑する。
ハルキオンが忘れかけていた欲を取り戻した理由。それはカイラにかけられた呪いの為だ。
「だけど、元々の原因はお前にあるんだ!」
杖を構えて、最もハルキオンへのダメージが少ないであろう『アイス』の呪文を唱えた。
水色に輝く光の球が杖の先から現れ、ミキに向かって飛翔する。
そしてついにミキに命中するかと思った時。
魔法がフッと消滅してしまったのだ。
ミキは乾いた笑い声を浮かべる。
「やっぱ後輩に頼んで魔法吸収のバリアを貼る魔道具を作って貰って正解だったわ!」
魔法以外の攻撃手段を持たないカイラは落胆したが、「おい、カイラ!」と突然ミキに呼びかけられ身構えた。
「オマエがコイツの精気を出す手伝いをするんなら、オレはコイツを諦める……お前にやらせた方が面白そうだからな」
「……っ」
それは……例え、性行為に及ばないとしても。
(不貞行為になるんじゃ……いや、そもそもヴェルトさんと恋人同士になったとか、なってないとかよく分からないけれど)
「おい、どうすんだ?」
このままでは……ハルキオンが望まぬ事を強いられてしまう。
まだ知り合って間も無いのだが、カイラはハルキオンの事を嫌いになれさそうだと思った。
最初……木のステージで見かけた時は、冷血な死刑執行人という印象を受けた。
だが話してみると気さくで、個性的な人なのだと思ったのだ。
(彼を助ける事が、今1番大切なんだ)
「分かった! 僕がやる! だからハルキオンさんを離せ!」
「____よって、ケーキとケースは親戚であると、モイは論ずるのです!」
唐突に始まったシロクマのモイによる発表を聞いたカイラは拍手を送った。
モイは照れたように頭を掻く。
「えへへ、ありがとね。明日ご主人に発表するつもりなんだ。ああ見えてお医者さんでもあるから、きっとお気に召すと思うよ」
(ケーキとケースの話って医学に関係あるのかな)
カイラが困惑していると。
____ガシャン!
何かが割れるような音が上の階から聞こえたので、カイラとモイは天井を見上げた。
「なんだろねぇ」
特に焦る様子もなく、モイは伸び伸びとした口調でカイラに訊ねる。
「……なんだろう。胸騒ぎがする」
とても、嫌な予感。
杖とハルキオンが座っていた場所に置かれていたナプキンを手に持ちながら、カイラは走る。
「『ルックフォー』!」
階段を駆け上り煙を追い、発生源である扉を勢い良く開く。
そこはハルキオンの部屋だった。
洗練された部屋なのだが……片付けが苦手なのだろう。医学書の類が床に放置されている。
そして、音の発生源であると思われる電気スタンドが見るも無惨な姿で転がっている。
ハルキオンの部屋のベッドの上にいる2つの人影。そのうち1つをカイラは怒りの籠った目で睨む。
「ミキ……!」
ミキは今、ハルキオンの上に跨り、ハルキオンの怒張の上へ腰を下ろそうとしている。
「来たか……おっと勘違いするな? そもそもこうなった原因はお前にあるんだぜ」
「は……? 原因?」
自分と愛の無い行為に及ぼうとする夢魔の体を押して抵抗し続けながらも、ハルキオンはミキの言葉に困惑する。
ハルキオンが忘れかけていた欲を取り戻した理由。それはカイラにかけられた呪いの為だ。
「だけど、元々の原因はお前にあるんだ!」
杖を構えて、最もハルキオンへのダメージが少ないであろう『アイス』の呪文を唱えた。
水色に輝く光の球が杖の先から現れ、ミキに向かって飛翔する。
そしてついにミキに命中するかと思った時。
魔法がフッと消滅してしまったのだ。
ミキは乾いた笑い声を浮かべる。
「やっぱ後輩に頼んで魔法吸収のバリアを貼る魔道具を作って貰って正解だったわ!」
魔法以外の攻撃手段を持たないカイラは落胆したが、「おい、カイラ!」と突然ミキに呼びかけられ身構えた。
「オマエがコイツの精気を出す手伝いをするんなら、オレはコイツを諦める……お前にやらせた方が面白そうだからな」
「……っ」
それは……例え、性行為に及ばないとしても。
(不貞行為になるんじゃ……いや、そもそもヴェルトさんと恋人同士になったとか、なってないとかよく分からないけれど)
「おい、どうすんだ?」
このままでは……ハルキオンが望まぬ事を強いられてしまう。
まだ知り合って間も無いのだが、カイラはハルキオンの事を嫌いになれさそうだと思った。
最初……木のステージで見かけた時は、冷血な死刑執行人という印象を受けた。
だが話してみると気さくで、個性的な人なのだと思ったのだ。
(彼を助ける事が、今1番大切なんだ)
「分かった! 僕がやる! だからハルキオンさんを離せ!」
12
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる