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DAY 27.

ポンコツ

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「・・・あと1体・・」

 和泉がふぅ・・と息を吐いた。

 人間は一通り、変装を終えて、
 俺をコピーした人形の顔色を調整したところだ。
 ゴムっぽい違和感のある肌を少し汚して調整して、
 ぱっと見・・人間に見えるようになった。

 ・・マジマジと見たら、バレるだろうけど・・

 和泉は息を吐き切ると、
 あかりをコピーした人形に取り掛かった。

 青木と和泉はそれぞれ、
 今朝のオジさんの姿から大きく若返った。
 
 オジさん警備員三人組の中で
 俺が一番年上・・という設定らしい。
 俺だけちょっと中年っぽい見た目にされた。

 そしてあかりも金髪碧眼の女の子に化けた。
 ・・和泉が言うところによると・・
 「作りこめば美少女にもできるけど、
  今回は目立たない様にしたいから、
  標準的な外見を目指した」・・らしい。

 俺としては、普段で十分可愛いので、
 化粧はどうでも良い・・どうでも良いけど
 あの爆乳が一時的とはいえしぼんでしまったのは・・
 勿体ない・・と思う。

 ・・何はともあれ・・

 和泉が働いている間、
 俺達はいつでもここから出られる様に
 和泉の荷物で使わないものを取り急ぎまとめた。

 ・・・ッカ!!ッカ!!ッ・・・

 遠くから走る足音が聞こえてくる。

「・・和泉・・一旦隠れよう・・」

「・・あとちょっとなのに・・」

「隠れてください。」

 青木の言葉に和泉がイラっとしたように
 応じるが、ダマリさんの真剣な声が
 追い討ちをかけた。

 俺達4人は再びベッド裏にしゃがみ込む。

 ッカ!!ッカ!!ッカ!!ッカ!!!

 足音は段々と大きくなり、
 いよいよ・・至近距離というところで
 外を警戒して錫杖を構えていた
 ダマリさんが声を上げた。

「フィリップ!!」

 ・・やってきたのは何のことはない・・
 今朝ぶりのフィリップさんだった。

 ・・ふーーー・・

 息を吐いてベッド裏で
 立ち上がろうとした俺達を青木が手で制止した。

「サンドロ様はどうしたの?」

 ダマリさんが緊張した声が聞こえる。

「あぁ、罠に掛かった侵入者を対応中だ。」

 フィリップさんの声は今朝最後に聞いた時と
 何も変わらない。

 ・・青木とダマリさんの取り越し苦労だ。
 そんな事を考えていると・・

「・・そう。
 アンタは何しにここへ?」

 ダマリさんの冷たい・・
 ややドスの効いた声が響いた。

「・・道哉さんとあかりさんの警護に・・」

 バチィッ!!!!!

 電撃の音が響く。

 ガチャ・・ガン!!ガン!!

 続け様に金属を叩きつける様な音が響く。
 ベッドの下から覗き見ると、
 人影が倒れ込んでいて、
 それをダマリさんが抑えつけていた。

 よく分からんが、
 ダマリさんが勝っているらしい。

 ガンッ!!!

 一際大きい金属音が鳴り響いた後、
 ダマリさんがこちらに来て
 ヒソヒソと言った。

「移動しましょう。」

 青木が同じ様に小さい声で応じる。

「サンドロさんとフィリップさんは
 大丈夫ですか?」

 ダマリさんが首を横に振った。

「分かりません。」

「・・・あれは?」

 倒れた人影はぴくりともしていない。

「新型の人形です。
 量産品で緊急停止機能を使って
 停止させました。
 戦闘用の人形でないので、
 制圧は簡単でした。」

 ・・新型人形のフィリップさんは、
 どう見ても違和感なく昨日、
 お世話になったフィリップさんその人だ。

 青木は少し考え込んだ後、
 俺達に振り返って言った。

「行くぞ。」

「ちょ・・
 まだ田口の人形が終わってない。」

 和泉がヒソヒソと青木に言う。

 青木が少し考えた後、俺の顔を見て・・
 頷いた。

「ダマリさん・・」

 ダマリさんに何やらヒソヒソと話すと、
 ダマリさんは頷いた。

「人形の道哉さん、
 人形のあかりさんをベッドに押し倒して
 キスをしなさい。」

 そう言われて、俺(人形)が嬉しそうに
 あかり(人形)をベッドに押し倒した。

「・・・」

 あかり(人形)がゴムっぽいような
 シリコンっぽいような顔で固まったまま、
 キスされてる。

 目の前で俺そっくりな人形が、
 あかりそっくりな人形を押し倒している
 のを見るのは複雑な気分だ。

 隣を見ると、金髪の子供にしか見えない
 あかりが見ていられない・・
 というように、目を逸らしている。

「これで田口(人形)の顔は、調整不要だ。
 ここに2人きりで潜伏・・ってことなら、
 大橋が取りそうな行動だろ?」

 ・・・うん。
 ・・いやいや、キスで終わるとは、
 思えんが・・とは言えなかった。

 青木に、普通に頷いて最後に残った
 メイク用品を手早く片付け始めた和泉元カノと、
 少し目を泳がせた後、
 少しだけ心配そうに俺の顔を覗いたあかり今カノ・・

 どっちからも否定してもらえなくて、
 ちょっとだけ泣きそうだった。

 そんな俺の背中を青木がポンと叩いた。

「気にするな。
 そんな事より・・
 今は、集中しないといけない事がある。」

 あっさり、そんな事・・と流した青木は、
 俺に耳打ちを始めた。
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