上 下
82 / 95
DAY 27.

大忙しです 和泉さん

しおりを挟む
「・・さぁて・・こんなもんか・・」

 だいぶん疲れたようで、
 和泉がボロボロの地下牢の天井を仰いだ。

 髭剃りの跡が青みがかった
 中年男に変えられた自分の顔を
 鏡でまじまじ見る。
 目尻のしわは和泉が描いたものなのに、
 マジで皺に見える。
 取り付けた鷲鼻わしばなも、
 びっくりするほど、自然だ。

「顔はオッケーだから・・
 大橋、後は自分で腕と手の甲に
 ファンデ塗って・・」

 和泉がボトルを出して軽く振った。
 ちゃぷちゃぷ音がする。

 和泉はボトルから乳白色の液体を手に取ると、
 俺の手の甲に薄く延ばしていく。
 塗られたその一部が白っぽくなる。
 そんな不自然でもない白さだ。

「こんな感じ・・できるでしょ?」

「・・おぅ・・できると思う。」

 ・・ここまで30分。
 まだまだ仕事が残ってる和泉に俺は頷いた。

 和泉は休む間もなく青木に取り掛かった。

 おっさんの青木に深く刻まれた
 シワとシミを消して、
 鼻も和泉がこねると形が変わり、
 つんとした印象の鼻にする。
 垂れた眉をつり目気味に描き直していくと、
 見た目年齢が20歳は若返る。

 みるみる若返っていく感じが面白くて、
 俺は見入ってしまう。

 和泉は、真剣そのもので、
 眉間に皺が寄ってて、
 イライラしていて、近寄り難い。
 しかも未だに変な鼻をつけた
 オッさんのままで・・
 雰囲気は職人だ。

 でも、普段の和泉よりよっぽど
 生きてる感じで・・よく分からんけど、
 少なくとも、俺の彼女をやってた頃の
 ニコニコしていただけの作り物みたいな
 美少女よりよっぽど、
 こっちのがかっこイイ・・。

 ・・言ったら殴られそうだし、
 何も言わんけど・・。

「苦しくないですか?」

 後ろから、あかりの少し荒い息の音と、
 ダマリさんの冷静な声が聞こえてくる。

 あかりの人形も
 無事に出来上がったらしいけど、
 俺達、男はまだ見ちゃいけないらしい。

 裸のまま、あかりは少女になるために
 胸をサラシ?と、コルセットで締めて
 真っ平な身体に見せるための対応中だ。

 最初はあかり1人で頑張っていたんだけど、
 力が足りなくて、うまく胸を潰せず、
 ダマリさんが協力中だ。

「むぎぎ・・だいじょぶ・・です。」

 あかりのいかにも締め付けられてます
 ・・な感じの声に和泉が
 あかりの方に向かって言った。

「田口、我慢し過ぎないで!
 走んないといけなくなった時に、
 締め付け過ぎてると、動けなくなるから!」

「わ・・わかりました。
 すみません。
 ダマリさん、少しゆるめて欲しいです。」

「はい。了解。」

「ありがとうございます。」

 ダマリさんの威勢のいい声が響いて、
 あかりのお礼を言う声は、
 普段とそう変わらなくなる。

 和泉は、青木の対応を一旦中断して、
 あかりの方をチェックしてるようだ。
 ・・まだ、俺達は見ちゃいけないらしい。

「うん。・・子供体型!
 こっちの世界なら10歳前後いける!」

「10歳前後・・・」

 バッチリ!・・という感じの和泉の声と
 あかりのちょっとした落ち込み声が
 背中側から聞こえる。

「なるべく、幼い女の子で・・
 迷子のセンでいくから」

 青木が俺と同様に背中を向けたまま、
 和泉に言った。

「OK!
 田口、服着たらテーブルの方に来て!」

「わ・・分かりました!
 ダマリさん、ありがとうございました。」

 テキパキとした口調で和泉が言った。

沙羅サラさん、
 人形達に服を着る様に指示しますか?」

 ダマリさんが和泉に聞く。

「あーー・・まだ待ってて!
 メイクの後のがいい!」

 和泉がそう言って少し考える。

「青木、悪いんだけど、先に田口やるわ。
 青木は大橋の腕にファンデ塗るの
 手伝ってやって!」

「了解。」

 青木は言うが早いか、俺に向き直った。

「塗りづらいとこは俺がやるから、
 お前は塗りやすいとこを終わらせろ?」

 ・・青木、手際がいい。
 ついでに言うと・・、

「お前、和泉の言う事、
 素直に聞くのな?」

 ・・これは俺が
 ちょっとびっくりしたこと・・。

 青木とはゲームで一緒に動くんだけど、
 俺が「こーしたらいーんじゃね?」
 ・・と提案すると、
 「俺の言うとおりに動いた場合」の
 デメリットを指摘した上で、
 大概、もっといい案を提案してくる。

 誰と組んでも似た様なコトするから、
 知り合いの中には青木を
 面倒くさがるヤツも多い。

 ・・その青木が、
 和泉の言うとおり素直に動いてる。

 青木は、俺の顔を見て平然と答えた。

「そりゃ、この技術見たら、
 俺が口挟むトコないじゃん。

 この件に関しては、
 全面的に和泉に任せるだけだ。」

 ・・・青木の知らん一面だ。
 惚れたか?・・と思ったけど、
 今聞いたら、青木がウザがるだろうし・・

 ソワソワしながら、両手を白くする俺に、
 青木はため息を吐いた。

「・・急いで終わらせて、
 できることあったら和泉を手伝・・・?」

 俺は青木の口を押さえた。

 ・・カツン・・・カツン・・

 遠くから微かに、
 足音が聞こえた気がした。

「・・ダマリさん?」

 なるべく低い声で言うと、
 ダマリさんが神妙な顔をして頷いた。
 鉄格子の方に移動する。

「・・・みなさん、
 一旦照明を落とします。

 ベッドの後ろに隠れてください。」

 俺達4人は足音を立てない様に、
 ベッドの奥にしゃがみ込んだ。

 一応、手近にあった棒切れを手にして
 俺は小さく深呼吸した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...