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DAY 26.

お客様対応

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 田口あかり side.

「い・・いらっしゃいませ・・」

「あ・・うん。
 お邪魔してます。」

 青木君が乾いた笑いを浮かべていて・・
 和泉いずみさんは、ため息をいて、道哉君を睨んでいる。

 睨まれた道哉君は気がついてもいないみたいに、
 『座って~♪』と言う様に
 私のために椅子を引いてくれた。

 居た堪れなくて・・・

「あ・・あの!!
 オレンジジュース・・と、コーヒーと・・あと・・
 お手製のハチミツレモンも・・
 用意してあるんです。

 の・・飲みませんか?」

 テーブルの上には、
 ムサカというグラタンみたいな料理と
 この島では手に入りやすい山羊のミルク。

 他の飲み物を提案すると、
 和泉さんが席を立ち上がる。

「コーヒー飲みたい。
 私も手伝う。」

「いや、それなら俺が・・」

 そう言いかけた道哉君を
 和泉さんが、すごい形相で睨んだ。

「座ろうか・・大橋。」

 それに合わせるように、
 青木君も道哉君ににっこりと笑いかけて・・。

 道哉君も引きつり笑いを浮かべながら、
 席に着いた。

 ・・・

「マジ?!」

 鍋を取り出した私がコーヒー粉を
 鍋に入れたのを見て和泉さんが声を上げた。

 ギリシャコーヒーの淹れ方は、
 こっちの世界に来てコーヒー粉を売っていた
 お店の店主さんに教わった。

 鍋に入れてそのままコーヒー粉を入れると
 聞いた時、私も和泉さんと
 似たような反応をしたかもしれない。

 コーヒー粉と水とお砂糖を少し・・
 それを火にかけて・・

 店主さんに教わったレシピで作ったコーヒーは
 『甘すぎ!』・・と、道哉君に
 不評だったから、砂糖は少なめに・・

 そんな作業をしていたら、
 和泉さんがポツポツと
 私を慰めるように言った。

「とりあえずさ・・
 あんま気にしなくて大丈夫だよ?

 私も、青木も、
 道哉が無理言ったんだろって分かってるし・・

 青木は女の子に恥をかかせる奴じゃないから、
 田口に何か言ったりしないと思う。」

「・・あ、ありがとうございます。」

 きっと私を安心させる為に、
 私について来てくれたんだ・・。

 可愛いのに、優しくて・・
 こんな素敵な女の子が彼女だったのに・・
 道哉君がなんで私に告白してくれたのか・・
 さっぱり分からない。

 私の後ろで、
 私が出したコーヒー用の
 マグカップを軽く洗う和泉さんは・・
 何をしても絵になる。

 こっそりと見て・・見惚れてしまう。

 お2人がこの部屋に来てくれた時に
 私はお出迎えできなくて
 失礼にも、シャワーを浴びていた・・

 その理由は、
 青木君も和泉さんも分かっていると
 いうことだと思う。

 私は叫び声を上げて逃げ出したい衝動を
 なんとか堪えた。

「・・・本当に申し訳ないです。」

 和泉さんの顔が見れない。

 今、僅かに湯気が立ち始めたコーヒーを
 見つめながら、猛烈な後悔に襲われて・・

 「1回だけ・・」としつこく言っていた
 道哉君の熱っぽい顔を思い出す。

 1回して終わるのかを
 ちゃんと決めておかないといけなかった。

 ・・違う。

 どれだけ道哉君が言っても、
 今日はお客様が来る日だから・・
 ダメって言わないといけなかった。

 どんなに道哉君が悲しい目で見ても、
 身体が堪らなくジンジンしても・・
 止めないといけなかったのに、

 結局、私も止めなかった。

 身体がゾクゾクして、
 道哉君が私を見つめる熱っぽい目が愛しくて、
 頭が飛ぶような感覚に溺れて・・
 全然止められなかった。

 結局、【クンニリングス】を1回クリアして・・
 2回、道哉君が私のナカで絶頂した。

 ・・道哉君の荒い息の音を思い出して
 下着がまたじんわり濡れる。
 身体がまた熱くなってきた気がする。

「・・え・・と・・聞いてる?・・田口??」

 和泉さんの困った様な声に、
 慌てて鍋の火を止めた。

 危ない・・沸騰させると
 コーヒーの風味が飛んでしまう。

 少し冷まして・・・

「あ・・なんですか?」

 大急ぎで現実に意識を戻して、
 しどろもどろになってしまってる私に
 和泉さんは怪訝な顔をする。

「あいつ、自分勝手よね?」

 なぜか和泉さんが泣きそうに見えた。
 泣く理由なんてないのに・・

「あいつ??」

 一瞬、本気で分からなくて
 聞き返してしまった。。

「道哉に、決まってんでしょ??」

 和泉さんがイライラしたように言う。

 道哉君も人間なので欠点はたくさんある。

 たくさんあるけど・・

 "自分勝手"は、そのたくさんある欠点に
 含まれない気がする・・
 今朝だって、私が本当に嫌だと言ったら、
 多分やめてくれたはずだ。

「自分勝手・・?」

 私が首を捻ると、
 和泉さんは私の顔を見て大きな目を
 さらに大きく見開いた。

 今日の瞳の色はピンク色で、
 なんだか非現実的な可愛らしさで・・。
 動けなくなる。

 しばらく固まっていた和泉さんは、
 ひどく悲しそうに、俯いて言った。

「・・・ごめん。
 田口・・
 私、カップ持って先にテーブル行くよ。」

 ・・・もしかしたら、
 和泉さんはまだ、道哉君に
 なんらかの気持ちがあるのかもしれない。

 もし、そうなら私達が・・
 をしていたのかもと考えて、
 気分を悪くしたのかもしれない。

 ・・無神経だった・・
 そうだ。
 2人は付き合っていたのに、私ったら、
 なんでなんの気遣いもできなかったんだろ?

 ここでもらったレシピによると、
 コーヒーは複数回冷ましたり
 煮込んだりを繰り返す。

 2回目・・コーヒーを煮込みながら、
 私は自分の無神経さに気がついて、
 申し訳なさにしゃがみ込んだ。
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