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DAY 20.

テストプレイヤー

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「コレ・・どこで売れてん・・ですか?」

 素人のゲームレビューと変わらない
 レベルのチェックシートを受け取った
 エロースが内容を確認してるとこの横で、
 俺はソファにへたり込んだ。

 1回5分のミニゲームを15回やって・・
 計75分・・障害物競走やってた。

 ずっとバスケをしていたし、
 ほとんど毎日1時間ランニングしてるし、
 運動は結構してるのに、頭がクラクラする。
 結構な運動量だ。

「この世界で、
 シリーズ累計1000万本売った。」

 エロースは胸を張るけど・・
 これは正直言って
 ゲーマーを喜ばせるタイプのゲームに見えない。

「コレ・・トレーニング系とか・・
 そーいうやつ?」

 俺が聞くとエロースは首を横に振った。

「お前達の世界でいうところの
 eスポーツか・・」

「eスポーツ・・」

「ローマ公国で今から200年くらい前に
 コロッセオが廃止になってな?」

「コロッセオ?・・」

「お前・・その位知っておけ・・
 お前達の世界でも、
 遺跡で残ってるだろうが・・」

「・・・」

 エロースが言うには、闘技場の事らしい。
 俺達の世界では5世紀頃に
 キリスト教の普及と共に廃止されて
 今ではただの遺跡だけど・・

 この世界にはキリスト教もイスラム教も
 普及していないらしくて・・

 200年くらい前・・この世界では、
 キリスト教が普及してないから
 西暦カウントはないらしいけど・・

 俺達の世界で言うところの
 21世紀まで娯楽として
 奴隷同士の殺し合いをコロッセオで
 させてたらしい。

「刺激をなくした人々の為に、
 作ったのがこの『コロッセオ』
 24時間誰もが参加・観戦可能な対戦ゲームだ。

 お前にプレイさせたのは、
 そこに新規追加する
 サービスアイテム配布の為のミニゲームだ。
 今でもこうして、新要素追加や
 グラフィック・音楽改良など
 バージョンアップしつつ、
 現在でも、愛され続けている・・
 というわけだ。」

「・・・シリーズ累計って・・
 200年位、売り続けてるってこと?」

 俺がびっくりして聞くと
 エロースはニヤリと笑った。

「シリーズ通して軍神アレースの息子でも
 ある私が監修している。」

「・・監修っつーか・・
 全部エロースがやってる・・
 やっておられるんじゃ?」

「・・・・まぁ、私は万能だからな・・」

「・・・」

 何か言いたくない事があるらしい。
 エロースは珍しく口ごもった。

「ところで・・今日の仕事はここまで?」

 俺が聞くとエロースは頷いて、
 1アテネと30ミナを渡してくれた。

 60ミナで1アテネだから、
 1.5アテネといったところ・・

「ありがとうございまっす。
 ・・・じゃあ、俺はそろそろ・・・」

 窓の外を見ると、
 夕日で空が赤く染まっている。

 俺は、ソファから立ち上がった。

「まぁ、待つがいい。
 ここからは、私からのサービスタイムだ。」

 エロースはそう言って、
 クローゼット(?)を開いて、
 そこに収納されていたベッドを下ろして
 腰掛けた。

「ここで寝泊まりしてんの?」

 俺が驚いて聞くと、
 エロースは首を横に振った。

「普段はプシュケーが待つ宮殿に帰るぞ・・
 たまに気分が乗ったら、
 ここに泊まることもあるが・・」

「・・・えっと・・分かったけど・・
 俺、仕事終わったんなら・・
 帰っちゃダメなん?」

「うむ。
 私に付き合ってもらおうか・・」

「・・・俺、そっちのはないんだけど・・?」

 若干引いて聞くと、
 エロースはため息をついた。

「安心しろ。
 私もお前にエロースを感じることはない。
 ・・あるとしたらアガペー・・?
 いやフィリアか・・」

「えっと・・?」

 よく分からんけど、
 貞操ていそうの危機というわけではないらしい。

 ついでに言うと説明を聞き始めたら
 長くなりそうな気がして、
 『アガペーってナニ?』・・
 って言葉を飲み込んだ。

「何にしても、あかりに連絡を入れておけ。
 まぁ、夕飯前には帰してやるから、
 少し遅くなるとだけ伝えておけ。」

 コンコンッ

 あかりにメッセージを送信したところで、
 この部屋のボロい扉がノックされた。

「入れ。」

 ドアがギギっと開いた。

「・・・青木!!」

 顔を出したのは青木だった。
 よぉっと言うように片手を上げた。

「出歩いて平気なのか?」

 俺が聞くと、青木はうなずいて、
 俺の前のベッドに座るエロースの方を見やる。

「この件は、エロース様に感謝だ」

『ありがとうございます。
 エロース様』

 青木の肩に掛かった水槽で、
 サポートの魚・・クリスタがその場で
 くるっと回転した。

 エロースは、"この件は"という言葉に
 気がついているのかいないのか・・
 ヘラっと笑った。

 それを確認して、青木はソファの
 俺の隣に腰を下ろした。

ルールが追加されて
 日が沈んでる間、、
 追跡装置の反応がなくなって、
 和泉いずみが持ってる矢の効果が
 なくなることになった。」

「マジかーー!!」
「マジだ!!」

 青木がピースサインをして見せた。

「・・といっても和泉いずみ
 むっちゃ怒ってそうだな・・」

 俺が苦笑すると、
 エロースは首を横に振った。

「プレイ中のゲームのゲームルールを
 改変するのにあたって、
 攻略対象プレイヤーが
 攻略側プレイヤーに対して一方的に
 有利になるようにはしないぞ。」

「そういうこと。
 日没後の休憩時間の代わりに、
 和泉いずみの出した条件を飲んだ。」

 青木は力無く笑う。

「どういうことだ?」

 俺は、首を傾げた。

「1日30分、電話での会話。」

沙羅サラが会話で
 一也かずやを口説き落として、
 一也の方が矢で刺される事を同意すれば、
 日没後、つまり・・翌日の夜明けに
 ゲームは彼女の勝利する事になる。

 毎日30分の口説き落としタイムを
 条件にしたわけだ。」

 ああ、なるほど・・と思った。
 片思い中に好きな子に逃げ回られるのは、
 結構ツラい。

 毎日30分でも会話できるなら、
 それは魅力的だろう。

 それに、どっちみち、
 24時間追いかけ回し続けるなんて無理だ。

 そらなら、会話の時間30分が
 もらえる方がいい。

「新ルール適用が昨日からで、
 昨日は久しぶりにゆっくり寝られた。」

 青木は、ホッとした様に笑った。
 心なしか、前回会った時より
 顔色が良くなった。

「何、お前、口説かれてるってコト?」

「いや・・口説かれてる感じはなかったな・・」

 俺がニヤニヤして聞くと、
 青木は顔色一つ変えずに返した。

 和泉の奴、脈なしかもしれない。

「・・で、大橋、
 鈴木孝太郎こうたろうの件だけど・・」

 エロースがいる事は特に問題ないらしい。
 青木は、頼んでいた件について話し始めた。
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