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DAY 20.

暇つぶし

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 エロースは結構なゲーマーだ。
 アクション、RPG、シューティング・・

 好き嫌い無しという感じらしい。

 そんなエロースの作業場は・・
 エロースの神殿から徒歩15分。

 やかましい酒場の裏にある
 アパートの3階だった。

「“ロダキノ“は私の行きつけだ」

 これから時々働く事になる作業場に
 俺を連れてきたエロースが
 そのやかましい酒場を指差した。

「“ロダキノ“の店主には貿易商をやっている
 親戚がいてなぁ・・

 桃酒に・・桃三昧ももざんまいなんだ。」

「桃・・ですか・・」

 ここにくる時は『お忍び』とのことで・・
 トレードマークの翼を隠したエロースは、
 じゅるり・・・とよだれをすする。

「作業前に、桃酒を・・」

 "ロダキノ"に引き寄せられていく
 エロースの首根っこを押さえた。

「道哉よ・・
 お前、ホントに私を神としてうやまわないな・・」

 エロースは、そのちゃらけた性格の割に、
 時々変な迫力があったりする。

「ごめんなさい。」

 特に逆らう気もないし・・で、
 すんなり謝ると、エロースはにんまり笑った。

「では桃酒だな!
 お前はジュースにしておけ!」

 2人で店の片隅にあるテーブルに腰掛ける。

 こっちの世界全体なのか、
 この世界のこの国だけなのか・・
 はたまた、この地域だけなのかは
 分かんないけど・・
 昼間っから酒場が結構賑わってる。

「エリック!いらっしゃい!」

 店のお姉さん(?)が
 エロースに向かって笑いかけた。

 随分、年上のお姉さんだけど

『エリックは私の偽名ぎめいだ。
 合わせておけよ。』

 エロースは念話で俺にそう言うと、
 カウンターにいるお姉さんを呼んで
 酒とジュースを1つずつ頼む。

 暫く待つと、人形が頼んだものを持って
 やって来て、テーブルに置いた。

「道哉、どうだ?最高だろう?」

 エロースは、嬉しそうにピンク色の
 桃酒を呑んだ。

 頼んでもらった桃ジュースも
 同じ様にピンク色だけど・・

(だいぶ酸っぱい!)

 想像してたのよりはるかに酸っぱくて、
 顔をしかめると、エロースは豪快に笑った。

「お前達の世界の・・
 特に日本の桃は、品種改良が進んで
 砂糖みたいな甘さだからな・・

 この世界の桃はそんなに品種改良も
 されていなくてな・・

 味は原種に近い。」

「こんなん、喜んで食ってるの?」

 俺が聞くとエロースは桃酒をまた一口呑む。

「ああ、桃が嫌いな神など
 オリンポスにはいないな・・」

 信じられないけど・・
 これが好きな奴が多いらしい。

「ところで・・道哉・・
 恋愛ゲーム『エロース』はどうだ?」

 エロースは目を輝かせて身を乗り出した。

「・・どうって・・」

「そうだな・・
 ゲームの進捗とか・・
 どうだ?愛に進展はあったか?
 とぎはどうであったか?」

 矢継ぎ早に聞いてくるエロースに
 俺は、テーブルに突っ伏した。

「いや・・あんた、中高生男子ですか?」

 エロースは再び・・俺をギロリと睨んだ。

「はい・・ごめんなさい。」

「・・で?どうなんだ・・?」

「・・なんで
 そんな嬉しそうなんですか?・・」

 俺がジト目で聞くと、
 エロースは楽しそうに答えた。

「この世界ではエロース
 とぎから切り離されて久しい。」

「・・はぁ?」

とぎから切り離されても
 エロースがなくなるわけではないが・・
 人生にエロース
 必ずしも人生に必要でないと言う者すら現れる始末・・」

 よく分からんが、
 エロースにとっては由々ゆゆしき事態らしい。

「このゲームで私は、
 ゲームプレイヤー達がエロースを求め、
 翻弄ほんろうされ、悩み、己を高め、
 愛を成す姿を
 見るができる!」

 ・・・マジで何言ってんのか・・分からん奴だ。

「神様って結構暇だったりするんですか?」

 俺が聞くと、エロースは当たり前の様にうなずいた。

「暇だぞ?」

 てっきり『バカにするのか?!』とか
 お怒りになるかと思ったんだが・・

 エロースはあっさり頷いた。

「お前も不老不死になってみるといい。
 悠久ゆうきゅうの時を生きるのだぞ?」

「・・・できれば
 別の暇つぶしをしてほしかった・・」

 ・・割とマジで・・

 確かに、永久に生きるってなると
 退屈もするだろうけど・・

 別世界の人間を
 自分の世界に勝手に連れてきて、
 クソ悪趣味なゲームをプレイさせる必要って
 あるだろうか?

「・・・まぁ、そう言うな」

 ”暇つぶし”を全然、否定しないまま、
 エロースは意味ありげに、にっこり笑った。

「あまり、理解されないと思うが・・
 私にとっては価値あるゲームなのだ。」

「・・はぁ・・」

 俺はため息をいた。

「ところで・・・
 ・・で?
 お前のゲームの進捗度はどうなんだ??」

 エロースは再び身を乗り出した。
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