【R18】翼神のイタズラ PLAYER No.037 大橋道哉の場合

DAY 15.

チクチク

　田口あかり　side.

「あかり・・キスしていい？」

　隣で横になってる道哉君が言った。

「・・キスだけですよ？」

　道哉君は知らないかもしれないけど、
　こういう時、私が断らないのは、
　私が優しいからとか・・
　そういうのじゃない。

　私は、卑怯で臆病で・・
　嫌われてしまうのが怖いだけだ。

　元々、道哉君は
　とても人気のある男の子だった。

　今だって、
　私なんかと付き合う必要がない位に、
　誰でも選べる。

　今日、久し振りに会った
　道哉君の前の恋人は・・
　すごく綺麗で・・

　彼女達はただキラキラしているだけで、
　何も悪くないのに、
　私は勝手に惨めな気持ちになる。

　道哉君は、覚えていないのか・・
　気にしていないのか・・
　そんな事を考えると、
　ちょっと腹が立って・・
　ついでに胸がチクチク痛んだ。

　和泉さんは、高校時代、
　ずっと、可愛い綺麗な女の子で・・

　2人が付き合い始めた時は、
　すごくお似合いだと、噂になっていた。
　私も、お似合いだと思ってた。

　それなのに・・

　そんな噂を聞いて1週間もたたない頃、
　道哉君が教室の端っこの私の席にやって来た。

　クラスも違う有名人で・・
　殆ど話をした記憶もなくて・・

　何かあったのかと不思議に思っていた。

「田口さ・・俺と付き合って？」

　よく覚えてるのは、
　教室が割れるかと思うくらいに
　大騒ぎになったところまで・・

「え？・・・え？？」

　休み時間とはいえ、
　あまりの大騒ぎに、
　飛び込んできた生活指導の高山先生が、

　人垣ひとがきの真ん中に居た
　私と道哉君の手を引っ張って
　生活指導室に連れて行った。

　引っ張っていかれている中で、
　和泉さんと目が合った。

　すごく綺麗な和泉さんの
　大きな黒いパッチリした瞳が
　私を見つめていた。

　今日、久し振りに会った和泉さんは・・

（やっぱり、綺麗・・・だったなぁ）

　道哉君にキスされながら・・思う。

　段々とキスが激しくなって・・
　怒りはおさまっていくけど、
　代わりに変な安心感と優越感が湧いて、
　胸のチクチクと惨めさは増していく。

　こんな風に、道哉君の昔の恋人達に
　優越感を感じてしまう自分が
　すごく浅ましくて、嫌だ。

　こんな気持ちで道哉君とえっちしたら、
　世迷言を言ってしまって、全部終わりそうで・・

「・・道哉君・・
　そろそろ・・寝ましょう？」

　早く寝てしまった方が良いと思った。
　明日の朝になれば、惨めさも
　幾分落ち着くだろうから・・

「・・・ソノ気になったりしない？」

　道哉君が、おねだりする様に言う。
　ズルい自分が顔をもたげる。
　多分、えっちしたら、
　胸のチクチクも惨めさも
　一旦忘れられる・・でも、

　きっと、
　惨めな気持ちを口にしてしまったら、
　どんどん卑屈な自分が出てくるだろう。

　えっちしたら、
　自分がコントロールできなくなる。

　・・・

　怖くてやんわり、断った私に、
　道哉君はしょんぼり言った。

「・・あかりがマジでシたくないなら、
　1人で処理できるから・・」

　・・・

　道哉君と私が付き合う様になった時に、
　和泉さんに言われたのを覚えてる。

『イイ事教えてあげる。
　道哉って超ヘタだし・・
　えっちさえ、頑張ってれば続くかもね。』

　最初は、そんなことでダメになるなら
　別にイイと思って付き合ってたから、
　私もこんな、浅ましいことを考えなかった。

　今も、それは浅ましいと思うけど・・
　浅ましいけど、思ってしまう・・
　えっち・・上手にならないと・・

「で・・でも、私が道哉君を
　手伝うのはどうですか？」


　・・・えっちさえ、頑張ってれば・・


　ああ言った時、和泉さんは、
　どんな顔をしていたっけ？

　和泉さんの表情までは思い出せないけど・・

　私のことを蔑さげすんでいたんじゃないかな・・

　久し振りに思い出した自分の気持ちに
　ちょっとだけ気持ちが沈んだ。